2016年06月22日
六月大歌舞伎 「義経千本桜」 第三部 狐忠信
第三部は猿之助さんが2013年の歌舞伎座新開場以来、初の宙乗りに臨む四の切。
4月の博多座「ワンピース」初日に宙乗り800回を達成された猿之助さん。新しい歌舞伎座でも、宙乗り回数を重ねていかれることでしょう。
歌舞伎座 六月大歌舞伎 「義経千本桜」 第三部
狐忠信
道行初音旅
三代猿之助四十八撰の内 川連法眼館
市川猿之助宙乗り狐六法相勤め申し候
出演: 市川猿之助 市川染五郎 市川猿弥 尾上松也 坂東巳之助 市川寿猿 上村吉弥 市川笑也 市川門之助 ほか
2016年6月12日(日) 6:15pm 歌舞伎座 1階4列センター
道行初音旅
桜花満開の吉野山。
義経の後を追う静御前と家来の佐藤忠信の道行の旅を描きます。
一部の知盛に続いて初役で静御前を勤める染五郎さん。
染五郎さんの女方が美しいのはこれまでにも実証済みですが、この静御前、本当に綺麗でした。
ご本人曰く、「実は鬼女、とか正体は蜘蛛の精、ではなく純粋な女方は久しぶり」なのだとか。
染五郎さんにとっては加役といえるのですが、並の女方には全く負けていません。
元より踊りも所作も美しく。
一部二部と女方を見せてくれた猿之助さんは三部ではキリリと佐藤忠信。
指先、足の先まで神経の行き届いたキビキビとした踊り。
猿弥さん逸見藤太率いる追手も難なく蹴散らします。
初音の鼓を愛おしそうに見たり触ったりして、狐の本性を覗かせるところもいじらしい。
静を先に行かせ、花道付け際で蝶と戯れた後、白地に火炎の狐火の衣装にぶっ返り。
跳びはねるような狐六方で引っ込み・・・あー、澤瀉屋さんの「吉野山」ってこうだったよなぁ、と思い出しました。
猿弥さんの逸見藤太も軽妙なのに大きさもあって楽しかった。
役者づくしの最初には、「一部二部に引き続き またもコンビのご両人」とおっしゃっていました。
染五郎さんも猿之助さんもおすまし顔で聞き流していらっしゃいましたが(笑)。
三代猿之助四十八撰の内 川連法眼館
猿之助さんが初めて本興行で「四の切」を演じたのは亀治郎さん時代の2011年5月 明治座。
あれから5年経って、新しい歌舞伎座に初登場の猿之助狐。
宙乗りの回数とともに、これから狐の時を刻んでいくことでしょう。
その両方の目撃者となれたことは幸せでした。
歌舞伎座では初でも狐忠信は猿之助さんにとっては手に入ったお役。
イキイキのびのび、実に気持ちよさそうに演じていらっしゃいました。
宙乗り、早替わり、アクロバティックな動きや仕掛け、とケレンたっぷりでどうしてもそちらに目を奪われがちですが、それを可能にしているのは、猿之助さんの確かな技量と高い身体能力、そして芝居心。
ホンモノの忠信との演じ分け。
狐の正体を表わしてからの様々な動きの鮮やかさ。
美しい弧を描く海老反り、音も立てない軽く高いジャンプ、敏捷な欄干渡り、高速百回り、そして宙乗り。
・・・これでもか、と繰り出されるワザ、ケレンの一つひとつがとても楽しくハイクオリティで飽きさせません。
台詞は歯切れよく言葉も情も立ちあがり、鼓を親と慕う想いにあふれ、哀切に満ちています。
義経から鼓をもらった時、喜びを爆発させる可愛らしさ。
鼓を手に天空で、あんなに揺れて大丈夫?というくらい心も体も弾ませた宙乗り。
猿之助さん狐忠信、真骨頂です。
門之助さんの義経、笑也さんの静ともに安定。
亀井六郎の巳之助くんが相変わらずいい声を響かせていました。
三部通し、最後まで観られるかしら、と思っていましたが、終わってみればあっという間でした。
一部に一人ずつ、という主題が鮮明で、それでいて全体としての繋がりもあって、この「義経千本桜」を三部制の試み初の演目(納涼を除いて)に選んだのは正解だったと思います。
それにしても「義経千本桜」 やはり名作です。
とは言いながら、お名残惜しかるまいか のごくらく度 (total 1582 vs 1585 )
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