2016年06月07日
悲しみから生まれるのは 憎む心 「1789 -バスティーユの恋人たち-」 Act Ⅱ
昨日から何だか切ないメロディが脳内をグルグルしていて、
この曲 何だったかな何だったかなと考えていたら、
♪ 愛する人を 亡くした時 叫ぶ声を 嘆きが消す~
悲しみから生まれるのは 憎む心~
「1789」でソニンさん扮するソレーヌが、父を亡くした時、そして兄が逝ってしまった時に歌う
「叫ぶ声」でした。
ほんとに、心に残る名曲揃いだったな、「1789」
ミュージカル 「1789 -バスティーユの恋人たち-」
Produced by Dove Attia and Albert Cohen
脚本: Dove Attia François Chouquet
潤色・演出: 小池修一郎
音楽監督: 太田 健
振付: 桜木涼介 KAORIalive Twiggz
美術: 松井るみ
出演: 小池徹平 夢咲ねね 凰稀かなめ 古川雄大 上原理生 渡辺大輔
ソニン 吉野圭吾 坂元健児 広瀬友祐 岡幸二郎 ほか
2016年6月4日(土) 12:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階7列(4列目)下手
1回目の感想はこちら
1回目観た時もとてもいいと思ったのですが、千穐楽前日ということもあってか、役者さん個々にも舞台からも放たれる熱量がハンパなく、フランス革命に向かってうねるようなエネルギーを感じました。
1回目は花總まりさんラストデイということもあって、アントワネットの場面でウルウルしてしまったのですが、今回はそこここの場面でくっと涙がこみ上げること多々。
恋人たちの物語であり、若者たちの物語であり、名もなき民衆の物語。
革命に倒れるブルボン王朝の物語であり、双方の心を知る下級貴族の物語。
それそれの思いがひたひたと押し寄せるように、1789年7月14日という一つの結末に向かって収束していくエネルギーたるや。
1回目は「花總さんラストデイ」に狙いを定めてチケットを取りましたので、2回目はWキャストが被らない日を選んだら、こんなふうにルイ・ジョセフ以外はWキャストコンプリートしました。
ロナン: 加藤和樹/小池徹平
国王の名のもとに理不尽に父を銃殺され、パリに出て革命思想に触れて賛同しながらも、彼らと自分との違いに複雑な思いを抱き一旦は離れるも、最後には誰もが持つ自由という「自分の権利を行使する」ロナン。
2人とも等身大のロナンを描出していて好感。
加藤和樹くんの男っぽくてワイルドなロナンを先に観たので、小池徹平くんどうかな?とも思ったのですが、熱演でした。
小柄なことを含めてビジュアルがカワイイのは否めないとしても、野良犬感もあるし、歌も力強かったです。
小池くんが田舎から出てきた普通の青年なのに対して、加藤くんはちょっと世間をナナメに見ていて、その分、孤独感も強い印象でした。
オランプを好きになっている感じは加藤ロナンの方が強かったかな(笑)。
オランプ: 神田沙也加/夢咲ねね
賢くてしっかり者で、アントワネットを敬愛しているオランプ。
その王妃を守るために心ならずも陥れることになってしまったロナンを、危険を承知で救出するオランプは「貴族の良心」の象徴でしょうか。
「人の命は誰もが同じ重さのはず」とソレーヌが歌ったことが、そのまま貴族にもあてはまることをロナンに知らしめる存在。
神田沙也加ちゃんはいかにもハマり役で、芯が強くてちょっと勝気そうなところもイメージするオランプにぴったり。
オランプはソロで歌う楽曲はそれほど多くありませんが、さすがに聴かせてくれました。
沙也加ちゃんが「いかにも」なら、ねねちゃんは「意外にも」。
どちらかといえばアントワネットタイプかなと思っていたのですが、意外にもオランプがお似合いでした。
宝塚退団後、ねねちゃんの舞台を観るのは今回が初めてで、楽しみであり不安でもあったのですが、すっかり周りに溶け込んでいて安心。
元より細やかな感情表現のできる人なのでお芝居は高度安定、歌も、「ねねちゃんは歌がね~」と言われていた昔が嘘のようです。立ち姿やお辞儀をしたりの所作が相変わらず綺麗。そしてタタタッと走る後ろ姿があまりにも「ねねちゃん」でちょっと笑ってしまいました。
マリー・アントワネット: 花總まり/凰稀かなめ
登場はギャンブルに興じるヴェルサイユ宮の仮装パーティ。
フランス国王を夫に持ち、豪華なドレスを纏い、♪ハズレても構わないわ 私 フランスの王妃よ 失うものなど何もない
と歌う享楽的な姿から、王太子 ルイ・ジョセフの死を経て、革命の波が迫る中、王妃としての誇りと矜持を示すマリー・アントワネット。
フランス革命を民衆の側から描いた作品であるにもかかわらず、革命に倒れる側のアントワネットにも公正な目を注いでその変化を見せる脚本と演出が好きです。
和央ようかさん時代の宙組を観ていないので、花總まりさんがアントワネットを演じた「ベルサイユのばら」をナマで観たことがありませんが、「ベルサイユのばら展」だったか会場で流されていた映像がチラリと目に入っただけで二度見した経験があります。
これほどマリー・アントワネットが似合う人が他に思い浮かびません、花總まりさん。
美しく華やかで、気品があって優雅。
立ち居振る舞いやドレスの裾さばき、一つひとつがとても綺麗。
可愛らしさも、傲慢も、孤独も、覚悟も、威厳も見せることのできる稀有な女優さんです。
「エリザベート」のWキャストを例に挙げるまでもなく、花總さんを相手にしてはどんな人をもってしても分が悪い・・・と思っていたのですが、凰稀かなめさん、大健闘だと思います。
美貌の男役で名を馳せた人なので美しさ、華やかさは申し分ありませんが、退団後1作目?でこんなにも鮮やかに大輪の花を咲かせるなんて。
ねねちゃん同様、宝塚の現役時代、「かなめさん、歌が・・」と言われていたのが信じられないくらい高音もよく伸びて。
2人の役のアプローチで一番違うと思ったのは、オランプを送り出す時。
自分か愛する人かどちらかを「選ばなくては」とオランプに告げる言葉、かなめさんは毅然とした強い口調で放っていたのが印象的でした。
ここ、花總さんの時はそのやさしさとこれから彼女に降りかかるもののを思って泣いてしまった場面ですが、かなめさんのアントワネットには覚悟と強さを感じました。
助けたいと迎えに来たフェルゼンを返し、国王とともに残る決意を語るアントワネット。
その先に待ち受けるものは過酷ですが、フェルゼンが去って2人きりになった時、「狩りの準備ができました」と言われて、「着替えねば」と言ったルイ十六世の声が何だかうれしそうで、それを聞くだけでアントワネットの選択は間違いではなかったと、少しほっとしました。
シングルキャストについても少し。
際立って印象的だったのは岡幸二郎さんのペイロール。
冒頭、客席から登場してペイロールの歌で物語は始まります。
いや~、何というか、悪役フェチの血が騒ぐペイロールでしたね。
ミュージカルそんなに観ない私でも岡さんのことは存じあげていて、優男のイメージだったのですが、濃い悪役がお似合いでした。
鞭さばきうま過ぎだし(笑)、役に合わせたと思われる野太い歌声もステキでした。
そして古川雄大くんのロベスピエール。
美しい
1回目観た時、客席通路から登場シーンでほぼ真横に立ち止まったのですが、あまりの美しさにちょっと口開けて見惚れたもんね(笑)。
お顔はもちろん、等身バランスでいえば花總さんと双璧ではないかしら。
渡辺くんデムーランも上原くんダントンもよかったですが、古川くんロベスピエールには美しさばかりでなくカリスマ性のようなものも感じて、つい彼ばかり観てしまいます。
2幕冒頭の群舞で、舞台上手奥に集まった民衆の中からスックと立ち上がる姿、本当にカッコよかったです。
以前、「古川雄大に足らないのは声量だけ」と毒吐いた(ごめんなさ~い)ことありましたが、それも全然気にならなくなっていました。
というか、今回梅芸 音響良かったのか皆さんの歌唱がすばらしかったのか、歌はみんなよかったな。
ロナンも混じえて、デムーランやダントンとも
俺たちは兄弟だ 革命が産み落とした いつか時代が変わったら 肩を組みパリの街を歩こう夜通し 朝までと本当に肩を組んで歌う姿はまぶしいくらいでしたが、仲良くしながらもどこかで仲間達と距離を置く独自の存在感は、ダントン達と袂を分かつことになる未来を暗示しているようにも感じられました。
吉野圭吾さんの妖しげなアルトワ伯とか、秘密警察としてはダメダメだけど四季仕込みの歌声響かせてくれる坂元健児さんのラマールとか、1回目の感想でも書いた演技も歌も力強いソニンちゃんのソレーヌとか、シャルロットの子役ちゃんたちののびやかな歌声とか、本当に適材適所。
ロナンとオランプは組み合わせが違ったらまた印象も変わるのかしら、とか、何度も観たくなる作品でした。
「ロミオ&ジュリエット」のように、少しずつキャストを変えて再演を重ねる予感。
そしてなぜか今モーレツに月組版を観たい のごくらく地獄度 (total 1574 vs 1580 )
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