2016年06月03日
いつか時代が変わったら 肩を組み 「1789 -バスティーユの恋人たち-」
2012年 フランスで初演されて大ヒットしたフレンチ・ロック・ミュージカル。
昨年 宝塚歌劇団月組 龍真咲さん主演で日本初演。
演出は宝塚版同様 小池修一郎先生。
(「ロミオ&ジュリエット」と同じパターンですね)。
東京公演の評判も上々のようで、大阪にやってくるのをとても楽しみにしていました。
ミュージカル 「1789 -バスティーユの恋人たち-」
Produced by Dove Attia and Albert Cohen
脚本: Dove Attia François Chouquet
潤色・演出: 小池修一郎
音楽監督: 太田 健
振付: 桜木涼介 KAORIalive Twiggz
美術: 松井るみ
出演: 加藤和樹 神田沙也加 花總まり 古川雄大 上原理生 渡辺大輔
ソニン 吉野圭吾 坂元健児 広瀬友祐 岡幸二郎 ほか
2016年5月25日(水) 6:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階6列(3列目)センター
宝塚歌劇月組の感想はこちら
民衆は貧困にあえぎ、貴族は贅沢に溺れる18世紀末のフランス。
貴族の官憲に理不尽に父親を銃殺された農家の青年ロナン(加藤和樹/小池徹平)は妹ソレーヌ(ソニン)を残しパリに出て、デムーラン(渡辺大輔)、ロベスピエール(古川雄大)、ダントン(上原理生)たち革命家と知り合い共感して活動に協力するようになります。
一方、ヴェルサイユ宮殿では王妃マリー・アントワネット(花總まり/凰稀かなめ)をはじめ取り巻きの貴族たちが華美な生活を続けていました。病弱な王太子の養育係オランプ(神田沙也加/夢咲ねね)は、ある夜王妃のお供でお忍びでパレ・ロワイヤルに出かけ、ロナンと出会います・・・。
見応えありました。
宝塚版もお気に入りだったのですが、よりエネルギッシュで骨太の作品になった印象。
スターシステムに合わた配役でショーアップされた宝塚版よりこちらがよりオリジナルに近いのではないかしら。
音楽も、フランス版演出に基づいたオリジナル音源が用いられているそうです。生演奏でないのは少し残念ですが。
貴族社会の不条理への怒りから革命に身を投じるロナン
革命に倒れる側の象徴 アントワネット
その間に立って2人を結ぶオランプ
この3人の関係性がより鮮明になって、そこにロナンの成長譚が加わった感じ。
「群集劇」という印象は変わらないのですが、ロベスピエールやデムーランの「平民だけど高等教育も受けていて裕福」感とロナンの「同じ平民なのに無学で極貧」感がより際立っています。
何となく怒りと勢いで革命派に加わったけれど、ここは本当に自分の居場所なのかというロナンの葛藤や孤独感、ロベスピエールたちへの屈折した思いがとても現実的で、だから、身分とか立場とか主義主張とかとは別のところ・・「不器用な生き方しかできない」という根本の部分で共感したオランプに惹かれるというのもとても腑に落ちました。
それと同時に、ロナンとオランプが互いの気持ちを確かめ合っていても「今は一緒にいることができない」という「身分の違い」をリアリテイを持って感じることができたのです。
そんなロナンが、「俺の権利を行使するっ!」と今度は本当に心から革命に加わる姿は感動的です。
アントワネットにより職務を解かれたオランプが駆けつけることも、それこそがこの革命の象徴的なことのように思えました。
ロナンの妹 ソレーヌの比重が大きくなっているのも印象的。
身分とジェンダー、二重に差別されることへ燃えるような怒り。そしてそこから立ち上がる強さ。
演じるソニンさんもすばらしかったです。
そのソレーヌが女性ばかりを引き連れえて歌い踊るシーンをはじめ、ダンスシーンが多いのも今回の演出の特徴だと思います。
民衆も、若者も、強いステップで激しく踊るダンス。
アクロバティックでストリートダンス風な振り付けもあって、躍動するような群舞はどれも迫力満点でした。
2幕冒頭のロベスピエールを中心とした群舞は、かなりテクニカルな振付ですごくカッコよかったですが、ここ、宝塚版ではKAORIaliveさん振付の、ステップと手拍子だけの超クールなボデイパーカッションだったダンスで、あれが大好きだったのでもう1度観たかったな。
アントワネットの変化もこの作品の中では重要なポイント。
フランス革命に限らず、革命やドラスティックに変わる時代を表現する時、倒す側、倒される側、どちらか一方からの視点で描かれる場合が多いのですが、革命を起こす側を中心に据えながら、革命に倒れる側の傲慢や愚かさ、彼らなりの成長、国王、王妃としての矜持も示されていて、物語に深みを加えていると思います。
音楽も変わらずとてもよかったです。
宝塚版では何度も出てきた(気がする)♪サイラモナムール がクライマックスに1回だけ出てくるという「待ってたよぉ」感ね(笑)。
その代わり、♪俺たちは兄弟だ 革命が産み落とした いつか時代が変わったら 肩を組み パリの街を歩こう 夜通し朝まで・・ とロナンたちが繰り返し歌っていましたが、これは「革命の兄弟」という、今公演のための新曲だとか。
宝塚版でアントワネットがフェルゼンとの密会の時に歌った ♪ああ~この恋を~葬り去れというの~ という「許されぬ愛」がオリジナル通りオランプの歌になっていました。
大好きな曲で、沙也加ちゃんももちろんよかったですが、これは花總さんの歌唱で聴いてみたかったな。
ロナンの死によって終焉を迎える物語。
「自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうることにある」
・・・革命に参加した一人ひとりが読み上げていく人権宣言。
そこにアントワネットもフェルゼンもルイ十六世もペイロールも、まるでそこに希望を託すように加わって、生きている者、亡くなった者、全員の合唱となります。
それを見下ろすロナンは、友だちも恋人も、闘った者たちも、身分の差などなく肩を組み、パリの街を歩ける時代・・・彼が願った時代がそこに来ていることを信じていたに違いありません。
近々別キャストでもう一度観る予定なので、キャストの感想はその後でまとめるとして、この日は花總まりさんの千穐楽で、終演後にトークショーがありました。(ま、その日を狙ってチケット取ったのですが。)
フィナーレで花總さん登場すると、まわりのキャストから「ヒュー ヒュー」と歓声が。
カーテンコールでは加藤和樹くんが、「今日は花總まりさんが千穐楽でいろいろお話も伺いたいのですが、この後トークショーがありますので、そちらで・・」ということで、
アフタートークはラマールの部下 ロワゼル役の加藤潤一さんとトゥルヌマン役の岡田亮輔さんの進行で、加藤和樹くん、神田沙也加ちゃん、花總まりさんがご登壇。役のお衣装のままでした。
まず最初に加藤くんからひと言、と言われて、加藤くんと同時に話し始める花總さん。
あ、と気づいて、「もう今日は何が何だかわかんなくなっちゃってるのよ~」と(笑)。
加藤潤一さんが「花ちゃんはヴェルサイユ宮殿に住んでる感じがする」とおっしゃっていましたが、ほんと、何とも言えない浮世離れした感じがあります。カワイイ。
もし男(女)だったらやりたい役は?という質問に
「アルトワかフェルゼン。悪役がやってみたいのと、フェルゼンだったら花ちゃんと恋できるから」と沙也加ちゃん。
沙也加ちゃんの花總さんLoveぶりがかなりで、花總さんが「オランプは射撃の他にもいろんなことをお父さんから習っている」と。
パレロワイヤルの密会の場面で花總アントワネットの守り方が凄まじいらしい(笑)。
言われた沙也加ちゃん、その場でやってみせてくれて、どっと笑いと拍手を受けていました。
ちなみに、加藤和樹くんは女だったらポリニャックをもっとイヤな感じにやりたいそうです。
「自分だけ先に終わっちゃうのは寂しいけれど、1789大好きなのでずっと見守っている」とおっしゃっていた花總さん。
トーク終わりにはフェルゼン伯爵(広瀬友祐)とルイ16世陛下(増澤ノゾム)が登場して花總マリー樣の両側に立ってそれぞれ手を差し出します。
「こんな時どうしたらいいのぉ~」と困りながらも結局両手に花状態でエスコートされてにこやかにはけて行かれました。最後まで姫でした。
パレ・ロワイヤル 世の中さえ変わったら 幸せになれる いつか のごくらく度 (total 1573 vs 1577 )
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