2016年05月27日

感じる舞台 「夢の劇」


dreamplay.jpgモビールのように天井からゆらゆらと揺れるオブジェ
大きなリボンのようにゆったりと広がる布
いろんなものが散らばる床
ぶら下がったロープに絡みつくように踊るダンサー
アコーデオンやコントラバスの生演奏の温かい響き

まるでおもちゃ箱をひっくり返したような
サーカスの小屋に迷い込んだような
そんな世界で繰り広げられる一夜の夢のような幻想的な物語。


「夢の劇 -ドリーム・プレイ-」
原作: ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ
構成・演出: 白井晃
台本: 長塚圭史
振付: 森山開次
作曲・編曲・演奏: 阿部海太郎  生駒祐子  清水恒輔  トウヤマタケオ
出演: 早見あかり  田中圭  江口のりこ  玉置玲央  那須佐代子  
森山開次  山崎一  長塚圭史  白井晃 ほか

2016年5月14日(土) 6:30pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階F列上手



「地上に降りて人々の不満や嘆きを見聞きしてこい」と父である神インドラ(白井晃)に言われたアグネス(早見あかり)は降り立った地上で、
プリマドンナ・ヴィクトリアに恋して待ち続ける士官(玉置玲央)
劇場の入口に座り続ける楽屋番の女(江口のりこ)
苦悶に満ちた中でアグネスに希望を見出して結婚する弁護士(長塚圭史)
夢を見ることのできる作家(田中圭)
など様々な人に出会い、経験し、感じてまた元の世界へ帰って行きます。


ストリンドベリのこの戯曲は、 もともと上演を目的として書かれたものではなく、
精神世界の迷宮のような混沌とした内容のため、上演機会が少なかったのだとか。

ストリンドベリが描いた"夢"の世界を、白井晃×長塚圭史のタッグで舞台化
この人生は悪夢なのか? 万華鏡のように繰り広げられる夢の数々。 はたして夢から覚めた後に見る夢は?
・・・というコピーを見た時に感じた予感というか、想像通り、私のような凡人の理解力とは遠いところにある舞台でした。

とはいえ、おもしろくないとか退屈するというのでは決してなくて(早く終わらないかなぁと時計ばかり観ていた某作品とは違うところ)、寄木細工のように組み立てられた物語は何だかどれも切なくて、森山開次さん筆頭にダンサーたちの動きは瞬きするのも惜しいくらいすばらしくて。

アグネスが地上で見聞きした人間たちは愛に破れたり、差別されたり貧困だったり、惨めで哀しい生き物だけど、そんなことも含めて人間って、生きることって、愛おしい、というあたりがテーマかな。
アグネスが再び天上へ戻った時に咲く大きな白い花はそんな思いの象徴のよう。
理解しようとするより、感じる、その感覚に身を委ねる舞台だと思いました。


空間を活かした美術とともに印象的だったのは生演奏で多彩な音を紡ぎ出す音楽。
後で調べたら阿部海太郎さんで、「あー!」と思いました。
どの場面だったか、「100万回生きたねこ」が脳裏をよぎったシーンがあったのです。
阿部さんといえば、蜷川さんの一連のシェイクスピア作品や、大好きだった「わたしを離さないで」の音楽も担当された方・・・と思うとまたしんみりしてしまったり。


主演の早見あかりさんはこれが初舞台。
白井さんがテレビで見てオファーされたそうですが、華はあるし度胸はあるし、声もよく出ていました。
演技的にはまだ硬い面もありますが、化ければ宮沢りえさんのようになれるかも。
もっともご本人は、アフタートークで「すごく楽しかったけど今はおなかいっぱい」とおっしゃっていたように、舞台のおもしろさも怖さも、まだこれから知ることになるようでしたが。

早見さん以外の役者さんは何役か兼ねていらっしゃいましたが、中では山崎一さんが印象的でした。
玉置玲央さん演じる士官が手に持っていた薔薇の花。
山崎さんが花弁が落ちて茎のみになったものを持っているのを見て、あの士官が年老いたのかなと思ったのですが、年齢も正気も狂気も変幻自在。


この日は白井晃さん・田中圭くん・早見あかりちゃんのアフタートークがありました。
結構暗めに沈んJだ白井さんをイジる明るい若者2人の構図。

白井さんのお話で印象的だったのは、この舞台はKAATと松本でやった時は三方囲み客席だったのが、兵芸では劇場の構造上プロセニアムで上演したということ。
なるほど、ポールやロープにまとわりつくダンサーが対角線上になっているところとか、三面客席の空間で観てみたかったなと思いました。
これ、確か同じ白井さん演出の「オセロ」でも同様のことがあって(客席が舞台と同じ高さだったのが構造上できなかった、とかだったかしら)、やはり地方公演っていろいろ制約があって、本当に演出家の意図したものをそのまま観ることができていいる訳じゃないのね、と改めて感じました。

この作品がKAAT芸術監督就任第1作だった白井さん。
「今後はKAATの作品もどんどん兵庫に持って来たいと思います」とうれしいお言葉。
「散々KAATのこと言っといて何ですが、でも次に上演するのは世田谷パブリックシアターの作品なんです」と(笑)・・・「Radiant Vermin」ですな。



「難しいお芝居終わって皆さんふぅ~ってなってるとこに白井さん暗いんですよ」 by 早見あかり(怖いもの知らず ) の地獄度 (total 1568 vs 1577 )


posted by スキップ at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック