
宝塚歌劇でも1987年に月組の剣幸、こだま愛主演が大ヒットして以来、再演を重ねてきた作品ですが、2013年の月組 梅田芸術劇場公演から3年ぶり、大劇場では8年ぶりの上演だそうです。
宝塚歌劇 花組公演
UCCミュージカル 「ME AND MY GIRL」
作詞・脚本: L・アーサー・ローズ&ダグラス・ファーバー
作曲: ノエル・ゲイ
改訂: スティーブン・フライ
改訂協力: マイク・オクレント
脚色: 小原弘稔
脚色・演出: 三木章雄
2016年5月1日(日) 3:00pm 宝塚大劇場 1階2列センター/
5月14日(土) 11:00am 1階12列センター
配役は、主役カップル以外はこの作品恒例となったダブルキャスト祭り。
初日開いて間もない5月1日にAパターン、2週間おいてBパターンを観ました。
ウイリアム・スナイブスン(ビル): 明日海りお
サリー・スミス: 花乃まりあ
A B
ジョン・トレメイン卿; 芹香斗亜 瀬戸かずや
ジャッキー: 柚香 光 鳳月 杏
ジェラルド: 水美舞斗 芹香斗亜
バーチェスター: 鳳 真由 柚香 光
ディーン・マリア公爵夫人: 桜咲彩花 仙名彩世
物語の舞台は1930年代のイギリス。
ロンドンの名門貴族 ヘアフォード家の御曹司ということがわかった下町育ちの青年 ビル(明日海りお)がその屋敷に引き取られ、教育を受けて一人前の紳士となり当主の跡継ぎとなるまでを恋人=My Girl のサリー(花乃まりあ)との恋やまわりの貴族たちとの人間模様をからめて描いたロマンチックコメディ。男性版「マイフェアレディ」とも言われている作品。
2013年5月の月組公演を1度観たきりの私でも、♪ミー アン マイガ~ル 離れられない~ や ♪いつだってランベス・スタイル 昼でも夜でも~ なんて一緒に歌えるくらいキャッチーな楽曲の数々。
クラシカルな衣装や髪型、いかにもイギリスの古きよき時代を思わせるミュージカル。
立場の違いはあっても、悪人は一人も出て来なくて、笑いもたくさん、ちょっとしんみりしながら明るいハッピーエンド。ほんとによくできたミュージカルだなぁと思います。
役が少ない(特に娘役)ことを除けば・・・だからこその役替り祭なのかもしれませんが。

5/1に観た時、2列センターブロック上手通路側という神席で、目の前の階段から明日海さん筆頭に次々と降りてくるスターさんたちに目がクラクラしました。
行きは観るだけ精一杯でしたが、皆さんがまたステージに戻る時、ランベスクィーンの鳳月杏さんを見つめながら控えめに手を出していたら、走りながらちゃんと気づいてくれて、タッチしてくれました。
5/14は下手側の通路近くの席だったのですが、なーんと鳳月さんジャッキーが目の前で踊る席。
いや~、今回はちなつちゃんにヤラレましたね。
明日海りおさんは整った王子様タイプで、下町で育ったビルはどうか・・と思っていて、最初は無理して粗野な雰囲気をつくっている感じがしないでもなかったですが、すぐに気にならなくなりました。
そんな中、ヘアフォード家やその周りの人々からは「自分たちとは違う人種」のように見られ、昔の仲間からは「俺たちとは違う階級の人間」と思われて、どちらにも自分の居場所がないという孤独感が漂うビル。
とはいうものの、教育を受け、自分でも本を読み学ぶ中で生来の血筋のよさや賢さが現れてくるところがとても自然で、やはりこれが明日海さんの本来の資質だと思いました。
歌はいい声で安定。美しさも申し分なし。
帽子やりんごを操ったり、小道具扱いいろいろ大変そうですが、ソファにでんぐり返しして帽子かぶるのは2度とも成功して、ドヤ顔していました。
5/14 図書室のシーンでは、マリア叔母様が話している横で剣を片手にバスティーユのオスカルを片足上げるダンスまできっちり・・・これ 5/1 にはやっていませんでしたので、こなれてアドリブは増えていきそう。
ビルが洗練されていく変化が顕著なので、その変化を感じ取り、ビルのため身を引こうというサリーの思いがとても説得力がありました。
花乃まりあさんのサリーがとてもよくて、彼女が明日海さんの相手役なってから演じた役の中でベストアクトなのではないかと思います。
元より歌も演技も上手いですが、この作品の楽曲は彼女の声質にもよく合っていました。
ラストで高貴なレディに変身してからはビジュアルも台詞も、わざとつくっているとはいえ何だかマダムみたいでしたが・・。

ここからは役替り。
ヘアフォード家の遺言執行人 ジョン卿は芹香斗亜さんと瀬戸かずやさん。
芹香さんは若いしどちらかといえばベイビーフェイスなので大人の男・瀬戸さんの圧勝かなと思っていたのですが、芹香さん大健闘ではないかしら。
もちろん若いのですが、髭がよく似合っていて、貴族らしい雰囲気も、遊び人で洒落がわかるっぽいところもマル。声の出し方にも工夫が見られてちゃんと「ジョン卿」でした。
一方の瀬戸さんはもう予想通りというか、安定の大人なジョン卿でした。
ビルの従兄弟で財産目当てに婚約者のジェラルドを振ってビルをモノにしようとする勝気なジャッキーは柚香光さんと鳳月杏さん。
柚香さんの華やかな美貌 vs 鳳月さんの脚線美対決(笑)。
私はこのジャッキーという役がとても好きなこともあって、どちらのジャッキーもよかったですが、意外性という意味で鳳月さんを取りたい。
歌声や仕草が男役とは思えないくらい自然で、思い切りよく綺麗な脚を見せてお色気たっぷりなのに決して下品にはならず、サリー相手にぶんすかしてもとてもチャーミングなジャッキー。
それにしても鳳月さん、脚が長くて綺麗なばかりでなく、ウエストが細いことにもオドロキ。ドレスの上からでもくびれているのが見て取れましたもの。
柚香さんはジャッキーもよかったですが、Bパターンで演じた弁護士バーチェスターが傑作。
動きがいちいちコミカルで、台詞にも何ともいえない味があって、とても笑いを取っていました。シャープで現代的な美形の柚香さんが髭をつけ、眼鏡をかけてきちんとしたトラッドスーツ着ているのも新鮮。
Aパターンでは鳳真由さん。これが退団公演です。生真面目が先に立つ印象でしたが、余裕が出ると楽しくなりそう。
ビルの従兄弟でジャッキーのことが大好きなジェラルドは水美舞斗さんと芹香斗亜さん。
育ちのよい貴族のおぼっちゃまで、ちょっと頼りないけどのんびり育って人柄もよい好青年。
これはどちらもよかったですが、水美さんが本来の持ち味とは違うところでしっかり役づくりをしているように感じられのに対して、芹香さんは地のままやっているように見えました。
実際がどうかは別として、受けた印象として、ですが。
芹香さんはジョン卿もよかったですが、本来はやはりこちらかな、と。
ヘアフォード家の前当主(ビルのお父上)の妹マリア公爵夫人。
ジョン卿とともに遺言執行人でもあり、いかにも貴族の夫人らしい気位の高さがありながら、伯爵家の血が流れるビルのことを信じて立派な跡継ぎにすべく紳士教育を施すこの役に挑むのは、花組の誇る2人の美人歌姫 桜咲彩花さんと仙名彩世さん。
どちらかといえばベテランの娘役さんが充てられることの多い役ですが、桜咲さんも仙名さんも若いながらお見事でした。
2人とも美しく、公爵夫人らしい品のある落ち着いた佇まい。厳格さも傲慢さもあってサリーにも厳しいことを言うけれどそればすべてヘアフォード家とビルを思ってのことと感じられます。
2人揃って台詞は明晰、歌ものびやかに聴かせてくれて甲乙つけ難いです。
シングルキャストでは、執事ヘザーセットの天真みちるさんが印象に残りました。
無表情で慇懃無礼。ビルやサリーのどんな要求にも淡々と応じて、いかにもイギリス貴族の家に古くから仕えていそうな執事をつくり込んでいてさすがでした。
フイナーレは何といっても、芹香、鳳月、柚香の3人が大階段でポーズ決めて始まる男役黒燕尾ダンスがカッコイイ!
3人でしばらく踊った後、四方八方から続々登場する花男たち、何ですか、という感じ。目が足りないし。
そしてパレードの最後はまたランベスウォークの曲で、ビル&サリー、ジョン卿&マリア叔母様、ジェラルド&ジャッキーの3カップルがそれぞれグレーのモーニングとウェデイングドレスで登場。
ハッピー感この上ない。
柚香さん、鳳月さんのウェディングドレス姿が見られるなんて、この先ないのでは?

花組公演スペシャルメニュー フイッシュ&チップスwith ギネスビア
時間なくてギネス一気飲みしたから赤い顔して二幕観たよね~ のごくらく地獄度



