
ミュージカル 「グランドホテル」
原作: ヴィッキー・バウム
脚本: ルーサー・ディヴィス
作詞・作曲: ロバート・ライト&ジョージ・フォレスト
追加作詞・作曲: モーリー・イェストン
演出: トム・サザーランド
さて、キャストについて。
とはいうものの、私はミュージカルスターはほとんど知りませんので、あくまで今回の役に対するイメージと個人的な主観(というか好み)の感想です。
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グランドホテル 主なキャストはこんな感じ。
GREEN RED
オットー・クリンゲライン: 中川晃教 成河
フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵: 宮原浩暢 伊礼彼方
ヘルマン・プライジング: 戸井勝海 吉原光夫
フレムシェン: 昆夏美 真野恵里菜
エリック: 藤岡正明 藤岡正明
スペシャルダンサー: 湖月わたる 湖月わたる
ラファエラ: 樹里咲穂 土居裕子
オッテンシュラッグ医師: 光枝明彦 佐山陽規
エリザヴェータ・グルシンスカヤ: 安寿ミラ 草刈民代
GREEN RED を通じてマイ・ベスト・キャストは
エリザヴェータ・グルシンスカヤを演じた安寿ミラさん。
誇り高く美しく、身勝手でわがままなのだれど、周りの誰もがそんな彼女を許して尽くしてしまうカリスマ性を持ったプリマバレリーナ。
でも自分がもう過去の華やかな自分ではないことを誰よりもわかっていて、憂いを胸にいろんなことを諦めているグルシンスカヤ。
電話を片手に通報する素振りを見せながら男爵の言い訳を聞いて、「まあまあね」と言う安寿さんの声や言い方がとても好きでした。
男爵の不法侵入を許し、恋へと繋がっていく「まあまあね」。
そして、「Love Can’t Happen」で一気に燃え上がる恋。
灰色の翳りをたたえた大きな瞳が、恋に輝いてまるで少女のよう。
気品あるドレスの着こなしや、佇まい、ダンスで鍛えた所作も美しく、本当にステキなグルシンスカヤでした。
諦観の安寿グルシンスカヤに対して、草刈民代さんのグルシンスカヤは、老いと衰退という現実を受け入れ切れなくて、いつも何かに苛立っているよう。
「まあまあね」も高飛車で冷たく聞こえました。
美しさや品は遜色なく、トウシューズを履いたバレエシーンはさすがに見とれる美しさ。
歌も、周りが歌うま揃いなのでアレですが、普通に聞けるレベルなのではないかしら。
歌より台詞の声や言い回しの方が苦手かなぁ、私は。
グルシンスカヤの恋のお相手 フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵。
いかにもノーブルで貴族っぽい宮原浩暢さん(GREEN)と、洗練されていていかにも放蕩息子な伊礼彼方さん(RED)。
どちらもよかったです。ビジュアルも歌も。
燃え上がった後は別として、グルシンスカヤへの一目惚れ度というか、恋の瞬発力の高さは宮原さんかなぁ。
その印象が私に「GREENの方がより2人の恋にフォーカス」と感じさせたのかもしれません。
いかにも女に手慣れた色男ぶりというか、色っぽさは伊礼さん。
グランドホテルへの滞在を断られそうになったところを助けてもらったことがきっかけ男爵と心通わせるようになるオットーは中川晃教さん(GREEN) と 成河さん(RED)。
GREENを先に観たので、REDで成河さんオットーを観たら元気そうでびっくり(笑)。
人物としてGREENとREDの演出の違いを最も表していたのはオットーだったのではないでしょうか。
「恐怖からの渇望」 中川くんオットーは、ユダヤ人である自分自身を卑屈に感じているようなところが垣間見え、グランドホテルに滞在することでそこにいる人々と自分との違いをより強く意識しているようにも感じられ、「人生賛歌」 成河くんオットーは純粋に自分に残された時間を楽しもうとしているように見えました。だから、男爵ともより積極的に自分から関わっているように思えて、2人の友情がとても温かく感じられたのです。
ただ、ラストでフレムシェンをパリに誘った時、彼女が妊娠していることを告げたのに対する「すばらしい!」は圧倒的に中川くんがよかった。「命にあふれたこの世界はすばらしい!」と全身全霊で新しい命へ自分の希望を託す喜びに満ちていました。
そのフレムシェンは昆夏美さん(GREEN)と真野恵里菜さん(RED)。
ハリウッドでスターになることを夢見ていて、したたかでもありながら、妊娠していて切羽詰まっているタイピスト。
昆夏美さんの歌唱力、演技力には定評があって、今回初めてみたかも?なダンスもステキにこなしていましたが、こう言っては失礼ながら真野恵里菜さんもこれほどできるとは思っていませんでした。大健闘だと思います。
フレムシェンの雇い主 ヘルマン・プライジングは戸井勝海さん(GREEN)と吉原光夫さん(RED)。
会社を何とかしたい一心のビジネスマンが豹変する戸井さんと、ちょっと狂気入っているような迫力の吉原さん。全 く違う個性ですが、これもどちらも説得力あって素敵でした。
しっかし吉原ブライジングがフレムシェンに迫る場面、コワイってば!
そんな彼らのあれこれをじっと見つめ続けているスペシャルダンサー 湖月わたるさん。
「愛と死を象徴する」ということですが、どちらといえば死のイメージがより濃い。歌わないトートみたいな・・。
グランドホテルのどこかにいつもこのダンサーがいるということが、このホテルが常に死と向き合った場所であることを象徴しているのかもしれません。
冒頭の「The Grand Parade」で、登場人物を見渡しながら男爵を見つけて「みぃ~つけた」みたいに指差すところ、こちらまで魅入られたような気がしてゾクッとしました。
あの時、彼女に魅入られて、男爵が死へと向かう運命は決まってしまったのでしょう。
その男爵とのダンスはすばらしかったな。GREENとREDの違いも鮮明で。
GREEN 宮原さんは、死から逃れようと懸命に抗いながらも取り込まれていき、RED 伊礼さんは最初から死に怖れ慄いて翻弄されているようで、2人の表情はとても違っていました。
歌はなく、ダンスだけで見せるシーン。
これもミュージカルの醍醐味であり、2人の男爵はもちろん、湖月わたるという稀代のダンサーを得てこそ可能な場面だと思います。
「GREEN と RED は2つでひとつ」と前回書きましたが、どちらもそれぞれに良さがある中でどちらか1本を選ぶとしたら、キャスト、エンディング含めて私はGREENが好み。最初に観た印象が強いせいかもしれません。
わたるさんといい、安寿ミラさんといい、ラファエロを春野寿美礼さんの代役で演じた樹里咲穂さんといい、宝塚のOGさん大活躍でうれしい公演でもありましたが、2公演とも客席で、愛希れいかさんや美弥るりかさんはじめ月組の生徒さんをたくさんお見かけしました。
来年1月 新トップスター 珠城りょうさんお披露目公演として上演されることが決まっている「グランドホテル」(トミー・チューン版)。こちらも楽しみです。
マチネ GREEN カーテンコール。
「大阪のみなさーん!」と盛大に切り出し、今夜REDチーム千秋楽だからシングルキャストにひと言ずつ挨拶を・・と言って、夜があると周りに止められ、じゃダブルキャストに、と言って私たちは明日あるからと言われて結局挨拶ナシになった中川あっきーのワチャワチャ 可愛すぎw
ソワレ RED はこの日が大楽で、ダブルキャストの皆さんとシングルキャストの湖月さん、藤岡くんのご挨拶があったのですが、2度目のカーテンコールで湖月わたるさんが真野恵里菜ちゃんをお姫様抱っこして現れたのを見てすべて吹き飛んでしまいました。
涼しい顔して恵里菜ちゃん抱えるわたるさん、舞台上の誰よりもオトコマエでした。
こんなことなら最初から2公演ともチケット買っておけばよかった のごくらく地獄度



