2016年05月20日

永遠の命なんていらない  宙組 「ヴァンパイア・サクセション」


vanpire.jpg今や押しも押されもしない宙組二番手スター 真風涼帆さん。星組時代から数えて3度目の主演です。
演じるのは長い間生き過ぎて、ヴァンパイアでいることにちょっと疲れたヴァンパイア。

宝塚歌劇 宙組公演
ミュージカル・プレイ 「ヴァンパイア・サクセション」
作・演出: 石田昌也
出演: 真風涼帆  愛月ひかる  星風まどか  
伶美うらら  和希そら/京三紗  華形ひかる ほか

2016年5月4日(水) 12:00pm シアター・ドラマシテイ 12列センター


現代のニューヨークに甦ったヴァンパイア アルカード(真風涼帆)。
700年以上生きてきて、人の生き血を吸うことも十字架を恐れることもなくなりましたが、太陽の光だけは苦手。ある日、歯科医を目指す大学生ルーシー(星風まどか)と出会い、恋に落ちます。彼女は2001年の9.11事件で炎の中からアルカードが救出した少女でした。
彼女のために人間になりたいと思うようになるアルカード。それは、ヴァンパイアにとって自殺に等しいことでした・・・。


オープニングはレモンツリーの前で語り合う年老いたアルカードとルーシー。
「あの時選ばなかった道のほうが良かったと思ってない?」とルーシー。
「選んだもののほうが、捨ててしまったものよりずっと大切だ」とアルカード。

この姿、この会話で2人の間に何が起こったか、ヴァンパイアのアルカードはどうなったのか、
大体の流れはわかってしまいます。

ヴァンパイアという素材を扱っていますが、基本は愛の物語。
「人は永遠に生きることよりも、愛に包まれて死ぬことを願うのよ」というマーサ(京三紗)の言葉がテーマでしょうか。


そしてラブコメで少女マンガのようにロマンティック(笑)。
ちょっとヘタレなところのあるヴァンパイアは全然コワくなくて、男同士の友情があったり。
そこにヴァンパイアを利用とする軍や政府、CIAの陰謀がからみ・・というあたりが石田先生らしいといえばらしい。
細かく投入されるビミョーな笑いや時事ネタなどもらしかったですが。

時事ネタといえば、軍の会議でヴァンパイアの目撃証拠写真をスクリーンに映し出す場面。
様々な場面で一人まじる真風くんが合成すぎておもしろくて、客席にも大ウケでしたが、よく考えたら実際に起こった戦争やテロ現場なので、本当はかなりセンシティブなのではないかな。その中に9.11もあって。
「十字架が弱点だからイスラム教に改宗する」あたりも一歩間違えば問題発言と捉えられそう

・・・なんてことは考えず、気楽に楽しむものなのでしょうけれど。タカラヅカだし。


真風涼帆さんは無造作にまとめた黒髪もマントも似合って、超イケメンヴァンパイア。
黙って立っていても目を惹きつけるような輝きを放っていて、ほんと、マカゼ、立派になって(←これ言うの何度目か
眠っているルーシーを前にして突然ヴァンパイアの本能が覚醒して、それまでの柔らかな微笑みから豹変して首筋にかぶりつきそうになった時のブラックアルカードがどえらくカッコよかったので、こういう軽いコメディではなく、真風さんのシリアスなヴァンパイアも観てみたいと思いました。

星風まどかちゃんはバウホールの「相続人の肖像」に続いてのヒロイン。
まだ研3なのに歌もお芝居も上手いし舞台度胸はあるし可愛いし、推されっぷりもわかるというものです。
でも何だろ? 「相続人の肖像」のイザベルでも感じたのですが、何だかあざとい感じがする・・・ハキハキしすぎてるからかな?

それから、真風さんとはまだ雰囲気が合っていないような印象でした。
トップと相手役でこれくらいの学年差は珍しいことではないけれど、それ以上の隔たりを感じました。
この2人ならいっそ、井上芳雄くんと坂本真綾さんがやった「ダディ・ロング・レッグズ」なんていいのではないかしら・・・・2人しか出てこないからタカラヅカでは無理だけど。

それとは逆に、伶美うららさんとはしっくり。
前作で組んでいたこともありますが、見た目もゴージャスで美しい大人のカップル。フィナーレの2人のダンス、とてもよかったです。
伶美さんの役は「正社員になれない派遣の死神」カーミラ。
華やかな美貌で、派手な衣装も上から目線のもの言いも魅力的。「黄泉の帝王が・・」なんてエリザネタもぶっ込みつつ。
実は事故で3年ぶりにやっと目覚めた人で、ヘルシングの前ではおしとやかにしていて、アルカードにはいつものしゃべり方、またヘルシングに呼ばれるとパッと切り替わって弱々しく優雅に・・って上手いっ!客席ウケてました。
うららちゃん、歌ガンバレ!・・・もしかしたらもう遅過ぎるのかもしれないけど、歌ガンバレ。

ヘルシングは愛月ひかるさん。
アルカードのことを調べていた新聞記者で、今はゴーストライターをやってもらっている代わりに何かとアルカードの面倒を見ています。ホモと誤解されるくらいに(笑)。
2人とも長身脚長イケメンで、観ていて並びがほんと楽しい。バディ感もよく伝わってきます。
トップの朝夏さんを加えて、宙組の1・2・3は本当に夢を見られる綺麗な並びだなぁと改めて思いました。

他に印象に残ったのはサザーランドの華形ひかるさんとランデイの和希そらさん。
華形さんは元妻で大統領補佐官のグレンダに未練たっぷりのES細胞研究家。
ヴァンパイアの謎を追っていますが、最後にはいいとこ見せて死んでいく役。
スーツの着こなしも素敵で、専科に異動してクリーンヒット連発です。

和希そらさんと聞くと「おぅ・・・96期か・・」と思ってしまうのですが、今回のランディ役はとてもよかったです。ルーシーの幼なじみで元カレ。ルーシーのことが大好きだけどお育ちがよくてあまりしつこくつきまとったりしない。
ツンツン立てた金髪もよく似合っていて、KAT-TUNの上田竜也くんにちょっと似てると思っちゃいました。歌も上手いし、群舞踊ってても目立つのね。


ヴァンパイアが人間になるための条件は、「誰かを真剣に愛して愛されること」。

拳銃で自殺を図り、瀕死のサザーランドに永遠の命を与えようと首筋に噛みつくものの、「痛いじゃないか!」とツッコまれて、もうヴァンパイアとしての力がない=人間になった ことが証明されたアルカード。
ヴァンパイアとしての永遠の命なんていらない、寿命がある人間として生きていくことを選んだアルカード。ルーシーよりは少し先に死んじゃったみたいでしたが、きっと、「愛に包まれて」死ぬことができたのでしょう。


この日は万里組長、美稀副組長以下星組の皆さんがご観劇。
8列目の上手客席通路側に座っていた礼真琴くん。
客席への出入りの時は超クールな男役さんだったのに、真風くんアルカードが客席から登場してその通路を歩く間、振り返ってめちゃうれしそうな少女のようなキラキラ笑顔でずーっと観てました。カワイイ



それにしてもルーシー誘拐しておきながらアルカードたちにまんまと出し抜かるれ軍事会社の人たち・・バカなの? の地獄度 (total 1563 vs 1572 )

posted by スキップ at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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