
全62公演完走 おめでとうございます。
ということで、まだ書いていなかったこの作品の感想を。
当初 新橋演舞場の初日近くに観に行く予定でチケットも取っていたのですが諸般の事情で上京できないこととなり、大阪の初日と千穐楽を観劇しました。
劇団☆新感線 2016年春興行
いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK 「乱鶯」
作: 倉持裕
演出: いのうえひでのり
照明: 原田保 衣裳: 小峰リリー 音楽: 岡崎司
出演: 古田新太 稲森いずみ 粟根まこと 山本亨 大東駿介 高田聖子
清水くるみ 橋本じゅん 大谷亮介 右近健一 河野まさと 逆水圭一郎
村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル
中谷さとみ 保坂エマ 村木仁 川原正嗣 ほか
2016年4月13日(水) 6:30pm 梅田芸術劇場 1階5列(4列目)センター/
4月30日(土) 1:00pm 2階5列センター
物語: 「盗みはすれども非道はせず」な義賊の首領・鶯の十三郎(古田新太)は、仲間の裏切りにより瀕死の重傷を負ったところを小橋貞右衛門(山本亨)に助けられ、勘助・お加代夫婦(粟根まこと・稲森いずみ)が営む居酒屋 鶴田屋に預けられます。
小橋の戒めを聞き入れ、改心して名も源三郎と改め、鶴田屋の板前となって7年が過ぎたころ、十三郎の前に小橋の息子勝之助(大東駿介)が現れます。御先手組組頭である勝之助は押し入った先の女子供も殺す「畜生働き」も厭わない盗賊・火縄の砂吉(橋本じゅん)を追っていました。十三郎は小橋への恩返しのために、勝之助に手柄をたてさせようとします・・・。
劇団☆新感線が初めて挑戦した「本格派時代劇」なのだとか。
かなり徹底したリアル時代劇。
衣装も装置も美術も、丁寧に時代考証された印象で、それがかえって新鮮でした。
衣装といえば、小峰リリーさん、こんなオーソドックスな時代劇の衣装もつくるんだ、と(笑)。
奇をてらっていないお加代さんの普通の着物とか、十三郎の着物が鶯色なんていう遊び心も洒落てたな。
回向院境内の場面では勧進相撲や屋台や飴細工、往来する江戸の市井の人々の風情に「鬼平犯科帳」のエンディングを思い浮かべたりもしました。
幕間のBGMも「木枯し紋次郎」とか「水戸黄門」とか昭和な時代劇テーマソングメドレー。
物語については、初日に観た直後の印象は「非常に直球の時代劇」。
この人にはウラがあるはず、と思った人は誰も裏切らず、いい人は最後までいい人で悪い奴は一貫してワルでした。
おりつちゃん(清水くるみ)は親の借金のカタに砂吉に脅されて無理やり引込み役をやらされていて、そこに勝之助との悲恋が・・・とか
小橋貞右衛門こそが悪の根源で、すべては十三郎を仲間に引き入れるための計略で、正義感に燃える勝之助と親子の葛藤があり、間に入った十三郎は・・・とか
観ながらあれこれ考えたことは全部ハズレたよね(考えすぎ^^;)。
権謀術数好きとしては些か物足らないかなぁという感じでしたが、2回目はそういう邪念も生じず、そのストレートぶりを心地よく楽しみ、物語にも引き込まれてとてもおもしろく観ました。
十三郎の恩返しの物語なのですが、いかにも現代的で非道な砂吉という悪を置くことで、恩ある人への義理を通そうとする十三郎の愚直なまでの生き様が浮き彫りになります。
その「愚直」ゆえか、十三郎、ちょっとワキが甘いよ、と思わないでもありません。
砂吉が黒部と繋がっていることを気づかないことしかり、押し込みの日が漏れていることを知られていることしかり。
キレ者の盗賊だったはずなのに。
そんな十三郎の隙を嘲笑うかのように、1日早く丹下屋に押し込みに入る砂吉一味。
そこにいたというだけで皆殺しになる丹下屋の人々。
ただ一人、彼らを守ろうとして力尽きる勝之助。
そこにやっと現れて悪人たちをバッタバッタと斬り倒す十三郎の大立ち回りはもちろんカッコいいのですが、爽快感より虚しさが先に立ちます。
が
花火が空を染める夜。
十三郎が用意した着物を着て楽しげに花火見物に出かける加代。
西瓜を下げて戸口に立つ黒部。
その黒部を一瞥することもなく刀を片手に前を見据えてスックと立つ十三郎。
シビレる。
観るもののイマジネーションを掻き立てるラストシーンですが、
夏になっても鳴き続ける鶯のように、
時代遅れとも思える義理に殉ずる十三郎の運命が暗示されているよう。
鶯はいつまで鳴きつづけなければならないのか。
とても切なく余韻が残る幕切れでした。
古田新太さんは文句なくカッコいい。
光と闇。
笑いとシリアス。
激しさと虚無感。
緩急自在の演技に、あの重厚な殺陣。
丹下屋ですべてが終わった後、自身もボロボロになりながら去って行く時の、体全体から立ち昇る怒りと慟哭。
最後に鶴田屋でスックと立った時の眼光。
やっぱりフルタカッコイイ❤フルタ色っぽい❤フルタ好き~❤を再認識した舞台。
初日は通路側だったのでフルタさんのナマ脚も堪能いたしました。
大阪公演前にオンエアされた特番で、いのうえひでのりさんは「『蛮幽鬼』で彼女が女優として覚醒する瞬間を見てゾクゾクとしたから、もう一度いずみちゃんとやりたかった」とおっしゃっていましたが、このお加代さんという役どころ、稲森いずみさんである必然性ある?というのが正直なところ。
もちろん稲森さんは綺麗だし華はあるし演技も上手くて何の破綻もありませんが、作品のタイプが違うとはいえ、「蛮幽鬼」の美古都とはスケール感もゾクゾク感も及びもつかないのではなかったかしら。
新感線の舞台は「港町純情オセロ」以来5年ぶりの大東駿介くん。
「カッコーの巣の上で」や「もっと泣いてよフラッパー」での好演も記憶に新しい気なる役者さんの一人です。
いつも背筋にものさし入れているような、一本気で真面目だけどどこか空気読めない可笑しみを醸し出す青年をのびのびと演じていました。
いろんな因果を背負っていたり、心に闇を抱えた青年の役も観てみたいな。
ご主人に代わって大店を切り盛りする剛毅で人情味あふれる上に色っぽい花魁上がりの丹下屋女将お幸の高田聖子さん。
物腰の柔らかさを装いつつ冷酷でいかにも血も涙もない中に薄気味悪いほどの狂気も滲ませた火縄の砂吉 橋本じゅんさん。
幽霊役楽しそうだった勘助 粟根まことさん。
・・・客演が控えめな反面、劇団員のご活躍がうれしい作品でした。

梅芸名物大看板。
全体撮るのこれでギリギリ。
千穐楽は2階だったのですが、驚いたことに1/3以上空席でした。
新感線の千穐楽で、しかも土曜日なのにこれはmy 新感線観劇史上初めての経験ではないかしら(・・とはいうものの、千穐楽に2階席に座るは初めてだったので正確なところは?ですが)。
何だかサビしい の地獄度



私も、見ながら「この人は実は裏があるに違いない・・・」とあれこれ考えて全部外れました(^^;)
もっと素直に楽しめば良かったです。
もちろん、十分楽しめましたが。
古田さん、本当にかっこよかったですね!
登場と、ラストシーンにめちゃくちゃしびれましたv
またこういう古田さんも観てみたいですね!
続けていらっしゃいませ(笑)。
やっぱりあれこれ深読みしてしまいますよね~。
この作品が新感線デビューだった友人はそんなこと
全く考えず観て「おもしろかった!」と言っていましたので
最初から心を無にして臨めばよかったのかもしれません^^;
古田さんのカッコよさはね~。
あのラストシーン観られただけでもこの作品観てよかったなぁ
と心から思いました。