2016年04月17日
明治座 四月花形歌舞伎 昼の部
明治座恒例となった花形歌舞伎。
今年は音羽屋の御曹司+中村屋兄弟という珍しい座組。
菊之助さん、勘九郎さん、七之助さん 3人ともすべて初役に挑みます。
明治座 四月花形歌舞伎 昼の部
2016年4月10日(日) 11:00am 明治座 1階8列センター
一、芦屋道満大内鑑 葛の葉
出演: 中村七之助 中村梅枝 中村歌女之丞
片岡亀蔵 ほか
安倍保名が妻子と暮らす家に、許嫁の葛の葉姫が両親に伴われてやって来たことから、妻の葛の葉が実はかつて命を助けた白狐だということがわかって・・・という物語。
「元禄港歌」にも出てきた葛の葉の子別れが一番の見どころですが、葛の葉と葛の葉姫の早替りや、葛の葉が障子に遺す書き置きの曲書きなど、歌舞伎らしいケレンもたっぷりな演目です。
若くて綺麗なお姫様ばかりでなく、このところグッと役の幅を広げた観のある七之助さん。
わが子を抱いたお母さん役も全く違和感ありません。
甥っ子さんたちがいつも近くにいるせいか、童子(後の安倍晴明ね)の接し方がとてもやさしくて、本当にやさしいお母さんのよう。
保名のこと、わが子のことを心から思っているのに、本物の葛の葉姫が現れたのでは自分は山に帰るしかないという切なく悲しい気持ちがよく伝わってきました。
身バレしてから見せる狐の仕草も、元からの怜悧な美しさと相まって、妖しげな雰囲気十分。
「恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信田の森のうらみ葛の葉」
左手で、裏文字で、筆を口にくわえて、の曲書き。
先代雀右衛門さんはこの役を演じる時はいつも楽屋の壁じゅうに紙を張って練習されたと聞いたことがありますが、七之助さんもすごく練習したんだろうなぁ。
まぁ、すっごく上手いかと言われれば、「がんばれ~」となるところですが、初役でこれだけ書ければ上出来だと思います。
早替りも鮮やかでした。
夫の保名は梅枝くん。
梅枝くん、葛の葉もできそうですが、保名もいい男っぷり。
声もよくて所作も綺麗だし、本当に器用で何でもできる役者さんです。
二、末広がり
作: 大沼信之
出演: 中村勘九郎 中村国生 中村鶴松 片岡亀蔵
狂言を基にした作品。
分限者宝斉(亀蔵)から娘の祝言のために末広がり(扇)を買って来るよう命じられた太郎冠者(勘九郎)。実は末広がりが何か知らず、都に出て万商人に末広がりと言われて売りつけられた唐傘を持ち帰り・・・という舞踊劇。
知らない演目だなぁと思っていたら、観始めてすぐ、以前狂言で観たことがあることを思い出しました。
勘九郎さんがのびのび楽しそうに太郎冠者を演じていて、観ているこちらも思わず笑顔になります。
宝斉の娘 福子(鶴松)に気があったらしく、結婚すると聞いて目に見えてガックリするなど、表情豊か。買ってきた唐傘を何の疑いもなく、末広がりだと宝斉に説明する天真爛漫ぶりも楽しい。
太郎冠者に唐傘を売りつける万商人は国生くん。
若干いっぱいいっぱいという感じがしないでもないですが、大熱演でした。
声はわざとつぶしてあんな野太い声にしているのかな?橋之助パパによく似てきたなぁと思いました。
大詰めには唐傘の上で毬を転がす太神楽を披露。
染之助・染太郎ばりですが(若い人は知らんよね)、これがとても上手でびっくり。
七之助さんの曲書き同様、すごく練習したんだろうなぁ。
毬を回す方もそうですが、投げる方も結構難しいのではないかな、と思いますが、その点、亀蔵さんとの息もぴったり。
何度かやった最後にちょっと落としちゃって、亀蔵さんが再度投げた毬を幕が降りてくるまで回していました。
三、女殺油地獄
作: 近松門左衛門
監修: 片岡仁左衛門
出演: 尾上菊之助 中村七之助 中村勘九郎 中村梅枝 坂東新悟
嵐橘三郎 上村吉弥 ほか
河内屋与兵衛に挑む菊之助さん。
多分、音羽屋さんの家の芸にはないお役です。
声よし姿よしで立役、女方、何をやっても上手くて”優等生”というイメージの菊之助さんですが、さすがにこの与兵衛は手強かったでしょうか。
仁左衛門さんからとても真面目に一所懸命勉強して写したという印象。
初役で、しかも多分ニンとは違う役柄でここまで持ってきたところはさすがに菊之助さんです。
しかしながら、与兵衛って、甘やかされて育った放蕩息子で、根はぼんぼんなのにどこかにキレたら危うい陰性の雰囲気があって、それが色気にも繋がっていると思うのです。
それを冒頭の徳庵堤でも垣間見せられるといいのになぁ。
豊嶋屋でも怜悧が先に立って、「いっそ不義になって・・」というところも、切羽詰まってというより冷静に計算して、というふうに感じられもしました。
いや~、それにしても美しい与兵衛でした。
七之助さんのお吉はすっかり落ち着いた子持ちの奥様。
ちゃんと与兵衛より年上に見えました。
与兵衛に言われて油を入れている時に殺気を感じて怯えるところ、子どもを残して「死にとうない、死にとうない」と必死に願うところ、さすがに上手いです。歌舞伎座で本役でできそう。
命尽き果てる刹那の海老反りも、陰惨な殺し場の中の美しさ極まれり。
勘九郎さんの豊嶋屋七左衛門が短い出ながらよかったです。
口跡よく、所作もいかにも商人といった趣きでした。
勘九郎さんの課題はやはりあれだな。浪花ことばのイントネーション。
そのあたり、橘三郎さん、吉弥さんの徳兵衛、おさわ夫婦は鉄板。
もちろん言葉ばかりでなく、それぞれの立場でわが子を思う心情が痛いほど伝わってきました。
ランチは人形町今半の黒毛和牛焼肉弁当。
明治座にも銀だら西京焼きなど名物のお弁当はありますが、
ワタシは今半派なのです。
久しぶりでおいしかった~♪
ほんとは夜の部も観てみたかったのですが
のごくらく地獄度
(total 1550 vs 1555 )
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
この記事へのトラックバック