2016年04月14日

歌舞伎座 四月大歌舞伎 昼の部


4gatsukabukiza.jpg歌舞伎座の四月大歌舞伎。
まず夜の部の新作はハズセない、ということで、ここは一等で。
昼の部は三階でガマンしようかなとも思ったのですが、染五郎さんの三番叟あるし、何といっても仁左衛門さん右京の「うふふ~」を間近で観たいじゃない?(今まで何度も観てはいるけれど)ということで、贅沢に昼夜とも一等席で鑑賞でござます。

彩りの異なった三演目が並ぶ昼の部。
どれも楽しくおもしろく、見応えありました。


四月大歌舞伎 昼の部
2016年4月9日(土) 11:00am 歌舞伎座 1階2列センター



一、松寿操り三番叟
出演: 三番叟 市川染五郎  後見 尾上松也


舞踊のことはよくわからなくて苦手感のあるワタクシですが、いくつか好んで観る演目があって、
「操り三番叟」もその一つ。
染五郎さんが踊るとなればなおさらです。
幕間にお目にかかった染贔屓のお知り合いにお聞きしたところ、染五郎さんが操り三番叟を踊るのは10年ぶりなのだとか。

18分という短い幕ですが、ほんと、楽しかったな。

きりりとした後見の松也さんが木箱を開けて取り出した三番叟は、驚くくらいぺったんこ。
突っ伏したまま後見が糸を調整するように引っ張るのに合わせて左手、右手と上げるのが本当に糸がついている操り人形のようでした。
染五郎さんには松也さんの動きは見えないのに、息ぴったりです。

松也さん後見の操る糸で一つひとつ命が吹き込まれるように、手、足、顔と動かし始める三番叟。
その人形振りが何とも言えぬ愛嬌があって可愛らしく、キレのよい動き、音もなく軽々と高くジャンプしたかと思えばふわりと浮遊したり。
観ているだけで本当に楽しい。
常に片足に重心を置いていかにも吊られている雰囲気。染五郎さんの身体能力の高さが際立ちます。
糸がもつれてのくるくる回転するスピードも相変わらずお見事。

そしてやはり染五郎さんのお人形は綺麗。
まるでどこも見ていないような瞳、表情のない人形はどことなく物悲しくて、何だか切なくもあり。
今回も毎日隈取を変えているそうですが、前回の時は全部の写真が「演劇界」に掲載されたそう。
今回も掲載されますように。
あんなお人形、家にひとつ欲しいところです。


二、不知火検校   浜町河岸より横山町の往来まで
作・演出: 宇野信夫
脚本: 今井豊茂
出演: 松本幸四郎  市川染五郎  中村魁春  中村錦之助  片岡孝太郎  尾上松也  
大谷友右衛門  坂東彌十郎  片岡秀太郎  市川左團次 ほか


生まれつき目が見えず、按摩を生業としながら、盗み、騙し、殺し・・と悪の限りを尽くし、師匠まで手にかけて二代目不知火検校となった富の市が金と権力を手に入れて思うままに生きながら、やがて破滅するまでの物語。
2013年 幸四郎さんが新橋演舞場で復活上演して評判をとった作品。

その時話題になった蜷川実花さん撮影の特別ポスターがこちら。

shiranui.jpg

同じ月に歌舞伎座で上演された「陰陽師」に夢中だったので(笑)観ておらず、今回初見でした。

父親が金のために盲目の按摩を殺した同じ時刻に生まれた富の市。
目が見えずに生まれたのは因果応報だったのでしょうか。
少年時代から手癖が悪く、師匠から暇を出されますが、本人は全く悪びれた様子もなく、欲しいものは手にいれるというスタンス。

三つ子の魂百までも、ではありませんが、この富の市がそのまま成長していきます。
金にも色にも強欲で、頭がよく回り、人を欺いたり殺したりすることなんて何とも思っていない極悪非道ぶり。
まさに”悪の華”ですが、その徹底したヒールぶりはかえって小気味いいほど。

捕らえられ、取り囲んだ町人たちから石をぶつけられて額から血を流しながらも言い放つ捨て台詞。
「おめぇたちゃちっぽけな肝っ玉に生れついたばっかりに、俺のようなまねもできず、目明きのくせに面白いことの一つも見ず、せいぜい祭りを楽しむのが関の山。みんな毎年無駄に一つずつ年をとり、小汚ぇババアや薄汚ぇジジイとなり、挙げ句の果てにゃくだらなく野たれ死んでしまうんだっ。俺ぁ 地獄で待ってるっぜ!」

・・・何か、カッコいいんだけど(笑)。

幸四郎さんの演じる検校はスケールが大きく、何を考えているのかわからないような不気味な冷酷さ。
無理に女房にしたおはんとその恋人である房五郎を殺し、おはんが可愛がっていた猫をやさしい声で呼びながらしめ殺して長もちに投げ入れるあたり、ゾッとしました。
その一方で、ヒールなんだけれどもどこかとぼけてユーモラスな面があって、抗えないような不思議な魅力があります。
座頭市の真似したり、謡い弾きを聴かせたり、芸達者ですな。

そんな富の市に逃亡の旅の途中で出会い、やがて相棒のようになる生首の次郎は染五郎さん。
渡世人の時は眼光鋭くいかにもやくざ者という感じだったのが、富の市が検校となって、自身も幸吉となってからはどこか大店の番頭さん風(笑)。
でも、柔らかな物腰の中に抜け目なさが垣間見えて、富の市を「不知火検校」に仕立て上げたプロデューサーでありマネジャーでもあったのかなと思いました。
最後に検校と一緒に捕えられ、縛られて花道を行く検校をどこか醒めたような眼で見る表情が印象的でした。

チラリとしか出てきませんでしたが、おはんの母おもとの片岡秀太郎さんが印象的でした。
検校からお金をもらって嗜める娘に「私はこれが大好き」とニコニコ顔・・・食えない女です(ほめています)。
もう一人、利用できるという意図があったにしても富の市もこの人にだけは手を出さなかった岩瀬藤十郎の友右衛門さん。
奥様の浪江さんは富の市にひどい目にあわされていたのに何も気づかず、のん気に「謡いを・・」なんて、いかにも人が好さそうで憎めない人物像でした。


三、新古演劇十種の内 身替座禅
作: 岡村柿紅
出演; 片岡仁左衛門  中村又五郎  中村米吉  中村児太郎  市川左團次


仁左衛門さん山蔭右京に左團次さんの奥方玉の井、太郎冠者には又五郎さんという布陣。
さすがに皆さん達者で楽しかったです。

仁左衛門さん右京のくるくる変わる表情の可愛らしさ。
無邪気なのだけど品を失わず、醸し出されるほんのりとした色気。
こんな人、玉の井でなくても心配で外に出せません(笑)。
これまでに何度も観ていますが、100回観ても飽きないと思うな。

左團次さんの玉の井も、奇をてらったお化粧ではなく(それでも十分コワおもしろいけど)、
デフォルメしすぎない演技で好感。
ただやきもち焼きなのではなく、もう少し右京さんが好きで好きでたまらないという雰囲気が欲しかったかなぁ。
又五郎さんの、いかにも律儀で実直だけど小心者といった太郎冠者、米吉くん、児太郎くんの見目麗しい千枝、小枝と、役者ぞろいで楽しく幸せな気分で打ち出されたのでした。


11:00開演で終演ほぼ4:00って、昼の部とはいえ1日仕事 のごくらく地獄度 (total 1548 1554 )


posted by スキップ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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