
冒頭のシルエット。シャンクスがルフィに麦わらを預けるシーンが展開されてウルウル。
中村隼人くん演じるサンジ筆頭にまるで原画から飛び出してきたような麦わらの一味が白波五人男よろしく花道に勢揃いすると、何だかよくわからないけれどとても楽しい気分になって、ケラケラ笑いながら思いきり拍手。
ザーザーと音をたてて流れる滝を背にスックと立つボン・クレー(巳之助)とイナズマ(隼人)に思わず「カッコイイ~」と背中ゾクゾク。
楽しかったー


原作: 尾田栄一郎
脚本・演出: 横内謙介
演出: 市川猿之助
スーパーバイザー: 市川猿翁
美術: 堀尾幸男 照明: 原田保
映像: 上田大樹 衣装: 竹田団吾
出演: 市川猿之助 市川右近
坂東巳之助 中村隼人 尾上右近
市川春猿 市川弘太郎 市川寿猿
坂東竹三郎 市川笑三郎 市川猿弥
市川笑也市川男女蔵 市川門之助/
平 岳大 嘉島典俊 浅野和之 ほか
2016年3月6日(日) 11:00am 松竹座 3階1列上手
1997年から週刊少年ジャンプに連載が始まった尾田栄一郎原作の漫画は国内外を合わせ4億部に迫る売上げなのだとか。
漫画やアニメに全く関心がない私が「ONE PIECE」を初めて観たのは5年前。
「ONE PIECE THE MOVIE エピソード オブ チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」 のDVDです。
ネイルサロンの施術中にネイリストさんに無理やり(笑)見せられたもので、「えぇ~

続いて、
「ONE PIECE エピソードオブナミ ~航海士の涙と仲間の絆~」
「ONE PIECE エピソードオブルフィ ~ハンドアイランドの冒険~」
の2作品を同じくネイルサロンで観ました。
この2作は映画ではなくテレビのスペシャル版だったようですが。
どちらも面白く、特に「エピソードオブルフィ」のシャンクスが左腕を失うくだりにはダダ泣き

そのシャンクスがルフィに麦わらを預けて以来、
赤髪のシャンクスが My best character in ONE PIECE
・・・ま、知っているキャラクターは限られるのですが。
麦わらの一味のクールな剣の遣い手 ゾロが方向音痴なんていう豆知識は持っています。
そんな中途半端なONE PIECEファンもどきでも、もちろん全く知らない人でも、そして多分原作ファンにとっても、とびきり楽しくワクワクする舞台に仕上がっていました。
昨年10月、11月新橋演舞場で上演されて記録的大入りとなった舞台。
福士誠治さんに代わってエース役に平岳大さんを迎え、尾上右近くんが自ら志願して加わり、演出もリバイスして3月松竹座、4月博多座と連続上演です。
演舞場からのリピーターや、私のように今回初めて観る人を含め、連日満員の盛り上げリをみせています松竹座。
今回の上演は「頂上戦争編」と言われる原作コミックスの51巻から60巻に当たる部分だそうです。
シャボンディ諸島での海軍との戦いの中で、麦わらの一味が散り散りに飛ばされ、一人になったルフィ(猿之助)は女性だけの島アマゾン・リリーで女帝ハンコック(猿之助)と出会います。兄エース(平岳大)処刑宣告の知らせを聞き、侵入不能と言われた海底監獄に救出に向かい、ボン・クレー(巳之助)と再会しますが、エースは海軍本部に移送されてしまった後でした。そしてついに海軍本部を舞台に、エースを救おうとするルフィや白ひげ(市川右近)海賊団と、海軍との間で壮絶な「頂上決戦」が繰り広げられる・・・というストーリー。
麦わら一味を除いては私には全く未知のストーリー&登場人物でしたが、わかりやすいお話で楽しめました。
美術: 堀尾幸男さん、照明: 原田保さん、映像: 上田大樹さん、そして衣装: 竹田団吾さん、と、「どこの新感線の公演ですか」と言いたくなるような布陣。
客席上空をサーフボードに乗ってナナメに横切る宙乗り、ふわふわと浮遊する巨大なクジラ、そこに流れる北川悠仁さん作詞作曲の「TETOTE」、劇場全体が揺れているように見えるプロジェクションマッピングなど新しい手法をふんだんに採り入れつつ、それに負けじとばかりに、大ゼリ、スッポン、早替り、本水や大旗を使った立廻りなどアナログなケレンもたっぷり。
猿翁さんのスーパー歌舞伎の精神、歌舞伎そのものの底ヂカラと懐の深さ、そして歌舞伎役者さんの力量を改めて見せつけられた思い。
本水の中の怒涛の立ち廻りから宙乗りへとなだれ込む二幕終わりの高揚感もさることながら、私は、三幕で右近さん白ひげを中心に横一列に並んだ海賊団を載せて、大ゼリがゆっくり回転しながら上がって来た時、「そうそう、これこれ」と泣きそうになりました。「ヤマトタケル」の冒頭の聖宮のせり上がりを思い出しちゃったな。
猿之助さんはこの公演大成功の理由を「原作の人気と知名度」「過去のスーパー歌舞伎の評価」「そして若手の活躍」と分析されたそうですが、そこに猿之助さんの「プロデュース力」が加わるのも明らか。
まず企画、演出力、これだけのカンパニーをまとめ上げるカリスマ性、楽しそうにイキイキと活躍する若手をはじめ適材適所の配役、古典歌舞伎を知りつくしている上に、先代猿之助(現 猿翁)さんが創始されたスーパー歌舞伎への敬愛・・・。すばらしいなっ。
一幕二幕を歌舞伎の手法やニューテクノロジーでこれでもかというくらい盛り上げ楽しませてくれた後、物語がこっくりと深みを帯びる三幕。
ルフィとエース、白ひげとエース、そして仲間たち。
それぞれが互いに向ける思いに胸を打たれます。
手負いの自分を置いていけという白ひげの厳命に、マルコ(尾上右近)たち白ひげの一味が断腸の思いでその場を後にしようとするくだりには思わず拳を握りしめました。
「仲間」「友情」「同志」「絆」・・・文字にすれば何だか面映ゆいようなものの大切さを、ルフィが、白ひげが、エースが、仲間たちが、身をもって示してくれる様には胸も目頭も熱くなります。
哀しみを乗り越えて、仲間たちとまたサウザンドサニー号に乗って航海に出て「海賊王に俺はなる!」と高らかに宣言するルフィ。
その行く先に光輝く海が見えるような、希望にあふれたラスト。
まさに原作の力とその原作に敬意を持って臨む役者さん、スタッフのすべてが、この飛びきり楽しく感動的な舞台をつくり上げているのだと思います。


この日は先斗町総見でロビーも客席も華やか。
あちこちから「おはようさんどす」というやわらかな京ことばが聞えてきました。
まずは3階の宙乗りお迎え席(てか、思いがけず宙乗りお見送り席にもなった)で全体見渡して、次は1階前方で・・ということで来週もう一度観る予定なので、個々の役や役者さんについてはまたその時に。

To be continued
歌舞伎と大衆演劇とミュージカルとの融合。
でもしっかり歌舞伎になっている。
泣いて大笑いして歓声あげて、とにかく忙しかったですー。
ワンピースは大好きだけど歌舞伎は初めて、という友人と観たのですが、とても感激していましたよ。
ルフィとエースの場面では、周りから男性のすすり泣きの声も…。
名古屋に新しい御園座が開場したら、ぜひ上演していただきたいです!
「ワンピース」本当にすばらしかったですね。
あれだけたくさんの人を夢中にさせ、チケットが売れるのも
よくわかります。
>でもしっかり歌舞伎になっている
ここ、大事ですよね。
「歌舞伎」というベースから逸脱していないから、あれだけ
いろいろやっても歌舞伎ファンにも受け容れられているのだと思います。
猿之助さんの底力、見せてやったり、です。
新しい御園座での上演、私も楽しみに待っています!