尾上松也さんを座頭として昨年メンバーを一新した新春浅草歌舞伎。
昨年とは少しメンバーが違いますが、フレッシュさはそのまま。
最年少の中村国生くんは二十歳(梅丸くんもだけど)。
今年は中村錦之助さんを上置きに迎えての布陣です。
新春浅草歌舞伎 第1部
2016年1月17日(日) 11:00am 浅草公会堂 1階か列センター
お年玉〈年始ご挨拶〉: 坂東新悟
紋付き袴でぴしりと決めて、よく通るよいお声で口上を述べた後、やおらマイクを取り出して軽い口調に。
そのギャップに客席も笑って、ツカミはOKという感じ。
「今日で浅草歌舞伎2回目以上の方」と手を挙げさせたりした後、拍手の練習。
新悟くんの質問に応える形で、1階と2階3階、最後は客席全体で拍手を。
物怖じしないしっかりしたご挨拶でした。
一、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
出演: 中村隼人 坂東巳之助 中村梅丸 中村錦之助 ほか
和尚、お坊、お嬢の三人吉三が出会って義兄弟の契りを交わすことになる「大川端庚申塚の場」。
見取り上演されることも多い場ですが、さすがにこの場だけで、花形だけで、あの独特の退廃感とか刹那的な雰囲気を出すのはキビしかったかなぁ。
お嬢の隼人くんとお坊の巳之助くんは二人一緒に染五郎さんに習いに行ったと聞きましたが、真面目に懸命に取り組んでいるのは好感。
ですが、台詞がいかにもいっぱいいっぱいで、緩急に乏しく棒読みのようで、あの黙阿弥独特の七五調のテンポやリズム感とは別物のように聞こえました。
お嬢は、「女装した盗人」ですが、ただ女装しているだけではなく、女として育てられ、「男でもなく女でもない」妖しい色気のある人だと思うのです。
隼人くんのお嬢はその境目がくっきりし過ぎていて、特に身バレして以降、男過ぎるような印象も受けました。
とはいえ、何ぶん初役でもあり、メイクに工夫が必要とはいえ美しさも十分な役者さんなので、今後に大いに期待したいところです。
2階ロビーには7人それぞれのお役の羽子板が。隼人くんお嬢と巳之助くんお坊観ながら、「あれ?和尚は誰だろう」と「松也くんじゃないし、新悟くんでもないし・・」と残りの浅草メンバーの顔を思い浮かべては消してたら、登場したのは錦之助さんでした
そうよね、そーよね。
錦之助さんにとっても和尚はニンではないように思いますが、この中に入ると台詞も所作もさすがに安定感ハンパなく、和尚が登場して何だかほっとしました。
短い出ながら梅丸くんおとせもよかったな。
二、土佐絵
出演: 坂東巳之助 中村国生 坂東新悟
桜が満開の吉原仲之町を舞台に、傾城采女太夫(新悟)をめぐる不破伴左衛門(巳之助)と名古屋山三(国生)の恋のさや当てを描いた舞踊。
二人の男に割って入る新悟くん采女太夫の華やかな美しさに目が奪われました。
新悟くん、12月の「東海道四谷怪談」のお袖ちゃんもとても綺麗でしたが、お化粧の研究したのかな。
このところとみに美しくなったように思います。上背があるので押し出しも立派。
三、与話情浮名横櫛 源氏店の場
出演: 尾上松也 中村米吉 澤村國矢 中村山左衛門 中村錦之助 ほか
親分の囲われ者だったお富と、若旦那・与三郎が恋に落ち、親分に見つかって切り刻まれ海に投げ込まれから3年後、二人が再会するというお話。
若手が初役で大役に挑むという浅草歌舞伎ならではの演目で、これは敢闘賞を差し上げたいです。
それぞれに力量を発揮して、よい舞台に仕上がり、楽しく拝見しました。
お富の米吉くんは、童顔で可愛らしいお顔立ちながら、精一杯背伸びして大人びた雰囲気。お色気もあって大健闘だと思います。
さすがに修羅の過去が見え隠れする、というところまではいきませんが、囲われ者の倦怠感も感じられ、時折ドキリとするくらいあだっぽかったり色っぽかったり。
まさに♪あだな姿の洗い髪~
台詞は元よりしっかりした人であります。
台詞しっかりといえば松也くん与三郎も、よく通る声。
ちょっとハキハキし過ぎて、「いやさ、お富」の例の台詞が真っ直ぐすぎるような気もしましたが。
男前だし、全体から醸し出す雰囲気は与三郎にとてもよく合っていると思いました。
その相棒・蝙蝠安の國矢さんがとてもよかったです。
いかにも卑小で抜け目ないごろつきの風情で、なのにどこか憎めないところもあって。
お富に言い寄る藤八の山左衛門さんもよかったし、こういう周りの役がきっちり仕事してくれるとこの芝居はますます面白くなるお手本のようでした。
錦之助さんの和泉屋多左衛門が舞台をぐっと締めていました。
ま、多左衛門、いい役だしね(笑)。
「大川端」と「土佐絵」は上演時間短いので、ひとつにまとめて他の演目でもよかったかも のごくらく地獄度 (total 1505 vs 1506 )
2016年01月26日
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
この記事へのトラックバック