
1985年に初演された柴田侑宏先生の名作と今夏 大劇場で上演されたばかりのショーという2本立てです。
宝塚歌劇雪組 全国ツアー公演
ミュージカル・ロマン 「哀しみのコルドバ」
作: 柴田侑宏
演出: 中村暁
バイレ・ロマンティコ 「La Esmeralda」
作・演出: 齋藤吉正
出演: 早霧せいな 咲妃みゆ 望海風斗
梨花ますみ 鳳翔大 大湖せしる 蓮城まこと 彩凪翔 彩風咲奈
星乃あんり 永久輝せあ ほか
2015年11月22日(日) 4:30pm 梅田芸術劇場メインホール 1階5列センター
「哀しみのコルドバ」
舞台は19世紀末のスペイン。
花形闘牛士として栄光の人生を歩んでいたエリオ(早霧せいな)は、ある夜会で初恋の女性エバ(咲妃みゆ)と再会したことから人生の歯車を狂わせることとなり・・・。
1985年に星組・峰さを理主演で初演、1995年 花組・安寿ミラ主演、2009年 花組・真飛聖主演で再演された作品ですが、いずれも観ていなくて今回初見。
エリオとエバの再会シーンから始まりますが、恋人同士だった8年前、エバが突然姿を消した理由が、「自分でもどうすることもできなかったの。ある朝突然母が町を出るって言って・・・」
というのがまず納得いきません(笑)。
いくら19世紀とはいえ、親の権力絶大とはいえ、年端のいかない子どもじゃないんだから、逆らうことも、100歩譲ってエリオに知らせに行くことぐらいできたでしょ、と思っちゃいました。
そしてエリオの方も、「町じゅう探した」って・・・町の外も探そうよね。
とはいえ、そこはタカラヅカですから。
そんなヤボなことは言いっこなし、ということで。
憎しみ合って、とか、どちらかが一方を嫌いになって別れた訳ではないので・・・それどころがエリオはずっと思い続けいる・・・互いの気持ちがまた燃え上がるのは必定。
エリオには師匠の娘 アンフェリータ(星乃あんり という婚約者がいて、今は未亡人となったエバにもリカルド・ロメロ( 望海風斗)というパトロンがいますが、そんなことで歯止めがきかないのが愛。
ロメロはともかく、アンフェリータは不憫だなぁ・・・
と思いながら観ていたらエリオとエバの母親同士(梨花ますみ・千風カレン)が知り合いで、2人が再会するなんて不味いことになった的な話をする場面があって、「あ~、兄妹なのか・・」とわかってしまう自分が口惜しい。
主題歌 「エル・アモール」(作詞:柴田侑宏・正塚晴彦/作曲:寺田瀧雄)は評判通りの名曲ですが、この曲が歌われる場面の演出もとてもよかったです。
エリオにまつわる人々・・エバ、アンフェリータ、ロメロがドアから入れ替わり現れては消え、また現れて歌うシーン。
幸せそうに歌うアンフェリータの後ろのドアから出てくるエバ。
エリオが歌う後ろのドアで交錯するエバとアンフェリータ。
エバを見つめながら歌うロメロ。
エル・アモール 時には祈り
叫び かざす剣の
誓いのように エル・アモール
どれも恋 二度とない
そして恋 今一度
かまわない あなたなら
そむかれて 一人でも
迷わない あなたなら
会えなくて 血が滲む
今は恋 あなたなら
エル・アモール
エバが自分の妹だということを知り、エバには決して知らせるな、「このことをエバに言ったら・・俺と同じ嘆きを彼女に味あわせる奴がいたら・・殺す!」と言うエリオ。
絶望で今にも崩れ落ちそうなエリオが、最後の優しさを振り絞ってエバに語る幸せな未来。
それは決して訪れることのない未来とも知らず、うれしそうに幸せそうに聴くエバ。
幸せな話をしているのにエリオの頬をつたう涙。
幸せすぎてそのことに気づかないエバ。
マタドールとして最後の闘牛に挑むエリオ。
エバが「私も一緒に闘牛場へ行く」と言った時、「ああ」と応えた切ない声と笑顔に、エリオの絶望と覚悟が見えました。
最期のマタドール。
華麗に翻したマントを投げ捨て、まるで二人分の哀しい運命を自分一人で受け止めるように両手を広げるエリオ。
最期までエバに秘密を守って。
早霧せいなさんはシャープなスタイルと端正な顔立ちに憂いを秘めたエリオがハマってとてもよかったです。
細身の身体に闘牛士の衣装がよく映えて、冒頭とラストで見せたマントさばきのカッコよくて流麗なこと。
そういえば、オープニングのダンスは安寿ミラさんが今回新たに振り付けたものなのだとか。
歌はまぁ、相変わらずのちぎクオリティですが、物語の中に入るとあまり気にならなくマジック。
エバの咲妃みゆさんはいつもの可愛らしさを封印して大人の女性を描出。
再会するまでは、「私はエリオに会ってももう大丈夫よ」と冷静に言っていたのに、会ってしまうと燃え上がる気持ちを抑えられないという心情の変化も納得いく演技。
憑依型娘役の本領発揮です。
おヒゲがカッコよくも色っぽいロメロは望海風斗さん。
これぞ大人のオトコの雰囲気でした。
早霧さんがどこか少年っぽい雰囲気を残した男役さんなので、望海さんの大人っぽさも際立ちます。
エリオに決闘を申し込む手袋を投げるところもカッコよかった~。
他に目立っていたのはエリオの闘牛士仲間ビセントの彩風咲奈さん。
司法長官セバスチャン伯爵(鳳翔大)の夫人メリッサ(大湖せしる←色っぽい)と道ならぬ恋に走る役。
このところ精悍さが増した彩風さん。長身、脚長の闘牛士さんでした。
もう一人。
ロメロの甥フェリーぺを演じた永久輝せあさん。
雪組のピカピカのホープですが、闘牛士がゴロゴロ登場する(笑)中、フェリーペは一人だけ軍服で、それが甘いマスクによく映えてとても目立っていました。
エリオのことで傷心のアンフェリータに告白して「あなたの涙が乾いたら、僕のところへ来ませんか」なんて王子様ぶりもポイント高いです。

「La Esmeralda」
今年の夏 大劇場公演のショー。
「星逢一夜」という泣かせるお芝居と併演で、その時の感想に、「お芝居で流した涙もあっという間に乾く勢いのラテンショー」と書いたのですが、今回も、哀しいコルドバの悲劇をぶっ飛ばす勢いのショーでした。
バウ組が抜けて人数は半分くらいになっているそうですが、それを感じさせない熱い雪組パワー炸裂。
基本的な構成は同じですが、全ツ仕様の分、フリーダム度が増していました。
客席降りも客席登場もモリモリ。
各地の方言を入れていく趣向らしく、梅田はもちろん大阪弁をやたら連発していましたが、ちょっと盛りすぎかな~という印象。
ここぞという時にキメてこそアドリブも冴えるというものです。
早霧さんなんてイントネーションもちょっとあやしかったし。
そんな中、望海さんがParis amarの最後に「めっちゃ ジュテーム」と言ったのは思わず吹き出しました。
トリデンテは、
早「大阪だと何食べたい?」
望「食べたいじゃなくて、どこ行きたいでしょ。通天閣」
早「通天閣いいね~」
咲「◯☓■△」(早霧さんがまたしゃべってるところにカブって何言ってるかわからない)
とグダグダ気味でしたが、
最後は三人とも両手を三角に挙げて「通天閣っ!」とキメポーズしていました。
このショーでも永久輝せあさん目立っていました。
月城かなとさんのパートをほぼ担っていたような印象。
ビジュアルよし歌よしダンスよしのスター候補生なので、これからますます出て来るんだろうな。
カーテンコールで梨花ますみ組長が、全ツ恒例ご当地ジェンヌの紹介で「◯◯市出身 □□」というたびに、「□□ちゃんっ!」と大声で呼びかける早霧さんの漢っぷり愛おしい。
最後に「ワタクシ、大阪市出身 梨花ますみでございます」と組長が小さい声で言うと、「リカっさんっ!」って一段と大声で言ってました(笑)。
雪組ご一行様、ただ今愛知県あたりを通過中 のごくらく地獄度




私も見てきました。
この作品、ものすご~く印象に残っていて、名曲の数々も鮮明に記憶しています。
ちぎちゃんは、ホントにラテンがよく似合う人ですね(^^ゞ歴代の方とはまたタイプの異なる、素敵なエリオでした。
一番驚いたのは、ゆうみちゃんでした。イメージ的にはホントに幼い感じのトークだったんですが(^^ゞやはり役者さんですね。素晴らしいエバでした。もっともっと伸びていきそうな雰囲気で。
だいもんくんは、もう抜群の安定感。ちぎちゃんの華やかさとはまた違う、スターの風格でした。
ショーも華やかでまさに「ザ・タカラヅカ」を地元で堪能できて、よかったです。
本拠地で見るのが一番ですが、もっと多くの方に宝塚を知っていただくには、やっぱり全国ツアーですね。
ご覧になったのですねー。
ほんとに全国ツアー公演ってありがたいですよね。
どちらかといえば硬質な持ち味のちぎちゃんにエリオは
よくハマっていましたね。
マントさばきの美しさはピカイチだと思います。
咲妃さんは「メリー・ウィドウ」がすばらしくて
本当に驚いた記憶があるのですが、どんな役でも
その役になりきる力量はさすがです。
「ラ」も楽しくて、何だかお得な二本立てですよね(笑)。