
半通し上演は33年ぶり、ラストの「化粧殺生石」に至っては41年ぶりの上演だとか。
今回見逃すと、次またいつ見られるかわからないという声も漏れ聞き、スケジュールやり繰りして観に行きました。
いやこれ、ほんと楽しかった!
平成27年度(第70回)文化庁芸術祭主催
錦秋文楽公演 第2部
「玉藻前曦袂」 (たまものまえあさひのたもと)
清水寺の段/道春館の段/神泉苑の段/廊下の段/
訴訟の段/祈りの段/化粧殺生石
太夫: 竹本津國大夫 竹本千歳大夫 豊竹咲甫大夫 豊竹睦大夫 竹本文字久大夫 ほか
三味線: 野澤錦糸 豊澤富助 鶴澤清志郎 野澤喜一朗 鶴澤藤蔵 ほか
人形: 桐竹勘十郎 吉田玉男 吉田玉也 吉田文昇 吉田幸助 ほか
2015年11月15日(日) 4:00pm 国立文楽劇場 1列上手
物語の舞台は平安時代。
鳥羽院の兄、薄雲皇子は弟に帝の位を奪われ、密かに謀反を企てていました。ある日、鳥羽院が寵愛している玉藻前が、神泉苑にある御殿で和歌を詠んでいると、妖しい狐が現れます。この狐は天竺や中国で王様の妃となり、正体を暴かれて日本に渡ってきた魔物でした。狐は玉藻前を殺してその姿に化け、薄曇皇子に謀反の手助けをすると約束しますが、その様子を見ていた陰陽師安倍泰成は、神聖な鏡の威力で狐を追い払うのでした・・・。
前半のメインは「道春館の段」。
まだ狐が登場する前の段階のお話。
萩の方の館に薄雲皇子の遣い・鷲塚金藤次がやって来て、紛失した(実はこっそり金藤治が盗んでいた)獅子王の名剣を差し出すか、それができぬなら、姉の桂姫の首を打って渡すかと迫ります。桂姫と妹の初花姫がすごろくで負けた方の首を討つことになり、互いの命を救おうと覚悟の白無垢ですごろくを競う姉妹。勝ったのは初花姫ですが、金藤治はなぜか姉の桂姫の首を討ちます・・・。実は桂姫は、金藤次が以前捨てた実の娘でした。
金藤次が自ら斬った桂姫の首に語りかける「父(てて)じゃわい、父じゃわい・・」という千歳大夫さん渾身の語り。
身を切られるような金藤次の慟哭が、聴いていて苦しいほど。
それに合わせる富助さんの三味線もドラマチックでした。
金藤次を遣うのは玉男さん。大きくて細やか。
初花姫が入内し、帝の寵愛を受ける玉藻の前となる後半からいよいよ狐の出番です。
まずは勘十郎さんひとり遣いの狐が登場。
勘十郎さんの狐は何度も観ていますが、いやもう、ほんと、狐だから(笑)。
「神泉苑の段」でその狐が玉藻の前を殺して乗り移ったところから勘十郎さんが玉藻の前を遣います。
時折正体を現して、玉藻の前の顔が瞬時に妖狐に変わったりまた元に戻ったりするところ、3年前に北京で観た「変顔」みたいだなぁと思いましたが、こちらは両面が顔になっている「両面」という特殊なかしらを使った技法なのだとか。
しっかし、ほんとに目にも止まらぬ早ワザでした。
その妖しの狐さん、祈祷で追い詰められると、宙乗りで去っていきます。
勘十郎さん、瞬時に衣装も着替えてるし。
そして「化粧殺生石」
もおおお~ぉ 勘十郎オンステージ(笑)。
殺生石と化した妖狐の七変化。
座頭、在所娘、雷、いなせな男、夜鷹、奴、女郎と次々と人形を持ち替え、異なるキャラクターを踊り分ける勘十郎さん。
次は何?次はどこから出てくるの?とワクワクして目が釘づけでした。
つい舞台の方に目が吸い寄せられてしまうのですが、この場の床は咲甫大夫さんはじめ五人の太夫さん、三味線も藤蔵さん筆頭に五丁がズラリと並んで壮観。
床に近い席だったので、藤蔵さんが相の手入れながらノリノリで弾いてらっしゃったのが印象的でした。
その三味線に乗せられた咲甫さんの語りもテンポよく。
本当に楽しい一幕でした。
咲甫大夫さんは「神泉苑の段」の奥も語っていらっしゃって、その幕の三味線は野澤錦糸さん。
錦糸さんといえば住大夫さんとコンビで引退まで三味線を担当していらした方。
咲甫大夫さんへの期待のほどが伺えます。
時間が許せばもう1回観たいくらい楽しかった! のごくらく度


