2015年11月25日

切なくビターな大人の寓話 「ダブリンの鐘つきカビ人間」

dablin.jpg後藤ひろひとさんの数ある名作の中でも、「MIDSUMMER CAROL ~ガマ王子VSザリガニ魔人~」(パコと魔法の絵本)と並んでトップ2だと個人的には思っていますこの作品。
きゃははと笑っているうちにナミダ流してる、という感覚も同じ。

今回10年ぶりの再演ということで、「10年かぁ~」と思っていたのですが、私が前回観たのは2005年版ではなく、その前、2002年版だったのでした。13年かぁ~(笑)。


PARCO & CUBE present 
「ダブリンの鐘つきカビ人間」
作: 後藤ひろひと
演出: G2 
音楽: 佐藤史朗 
出演: 佐藤隆太  上西星来  小西遼生  白洲迅  大塚千弘  マギー  篠井英介  
木戸邑弥  中村昌也  明樂哲典  吉野圭吾  村井國夫  後藤ひろひと
(文末に2002年版・2005年版とのキャスト比較を付記)  

2015年11月15日(日) 1:00pm 森ノ宮ピロティホール H列センター



ストーリー: 旅行中に濃霧のため、中世のお城のような建物に一夜の宿を求めた聡と真奈美。
その屋敷の主が語った、昔この村に起こった物語-
かつてそれぞれ症状が違う不思議な病に襲われた村。
誰も近づきたがらない醜い容姿となってしまったカビ人間と、思っていることの反対の言葉しか喋れなくなった少女 おさえの切ない恋の物語。
その話を聞く聡と真奈美も、いつしかこの不思議な世界の中に入り込んで行き、病を治すという奇跡の剣・ポーグマホーンを探しに森の中へと入っていきます・・・。

美しくて切なくてビターな大人のメルヘン。
グリム童話を思わせるような少し毒を持つ物語の世界観と、重厚な雰囲気の舞台装置、ゴシック調の衣装、美しくノスタルジックな旋律の音楽がとてもよくハマっています。
やさしく切なく美しい寓話と、何ともナンセンスでベタなギャグとの同居。
後藤ひろひと大王 真骨頂です。

「ぐるぐる回るとバターになりますよ」とか「マクダーノー」とかあの馬とか、散りばめられたギャグがおかしくておもしろくてアハハと笑っているうちにとても切なく哀しくなって、最後は怖い。
不思議な余韻の残る物語。

あのクライマックスシーンの美しさ、哀しさ、そして痛み.
大王史上・・というか演劇史上に残る名シーンだと思います。「お願い!殺してっ!」
「続けて!殺して、お願い!」
「私は、私だけは、お前が大っキライなの!」

ほとばしり出る言葉がすべて心とは裏腹にカビ人間を断罪するものとなり
結果として村人たちを扇動して彼を殺す方へと向かわせることになるおさえ
おさえの言葉の真意を理解し、喜びの中笑顔で死を受け容れるカビ人間
最期の願いを込めて、自らの身体に奇跡の剣ポーグマホーンを突き立てるおさえ


この後エピローグで聡と真奈美に訪れる残酷な結末も含めて、
散々笑わせておいて最後には全く別の世界に連れて行かれる感覚。
これって演劇の醍醐味ですし、やっぱり大王好きだー!と思いました。


今回キャストが一新されていますが、中でも注目は、前回まで山内圭哉さんが演じた神父を篠井英介さんがやることによってシスターになっていたこと。
でも市長と群馬水産高校の同級生だった設定はそのままで、つまりオネエってこと?(笑)

海がなくても水産学ぶよ
群馬水産高等学校~

っていう校歌は覚えていたのですが、俺たち黄金バッテリーのくだりはすっかり忘れていて、
「俺がライトで」「私がレフト」で不覚にも爆笑・・・バッテリーって(笑)。

爆笑といえば、大王の森の司会者 ジョン森。
「仲良しのカエルくんと一緒にホール&オーツのコンサートに行く」というのをやります、ということで、「悲しい話になりますのでハンカチのご用意を」なんて言うから、「悲しい話って・・?」と思いながら見ていたら・・・悲しい話だったー(爆)。ヤラレましたワ。


佐藤隆太さんは12年も前に「いつか僕も後藤さんの作品に出してください」と直訴されたのだとか。
カビ人間は、私にとって大倉孝二さんのイメージが強烈なせいもあって、いささか没個性というか、強烈な共演者の中に埋もれちゃったかなぁという印象はありますが、ナイーブでやさしい雰囲気はよかったです。

おさえの上西星来さんは東京パフォーマンスドールのメンバーで、これが初舞台ということですが、とてもよかったです。
お人形さんのように可愛くてゴスロリっぽい衣装もお似合いでしたし、少し硬質な声に切なさと裏腹の 「死んじまえ」とか「殺して」とかいう言葉がよくハマっていました。

真奈美の大塚千弘さん、戦士の小西遼生さんはいい意味でイメージを覆す弾けっぷりでした。
あんなにアクションしてパキパキ話す大塚千弘さんを観たの初めてですし、あんなに三のセン(なのか?)の遼生さんも初めてで楽しかったです。



カーテンコール。
村井國夫さんが大阪出身だから、と中村昌也さんに挨拶を振って、何か言おうとすると「それでは・・」と切り上げたり(笑)。
中村昌也さんはお母様が客席にいらっしゃってるとおっしゃっていました。
木戸邑弥さんだか明樂哲典さんだかはご両親が私の2列位前にいらっしゃって舞台に手を振っていらっしゃいました。



キャスト:   2002      2005      2015
カビ人間: 大倉孝二 / 片桐仁  / 佐藤隆太
おさえ:  水野真紀 / 中越典子 / 上西星来
戦士:   橋本さとし/ 橋本さとし/ 小西遼生
聡:    長塚圭史 / 姜暢雄  / 白洲迅
真奈美:  遠藤久美子/ 土屋アンナ/ 大塚千弘
侍従長:  中山祐一朗/ マギー  / マギー
神父:   山内圭哉 / 山内圭哉 / 篠井英介(尼僧) 
天使:   及川健  / 及川健  / 木戸邑弥
とまり木: 田尻茂一 / 田尻茂一 / 中村昌也
目玉:   八十田勇一/ 八十田勇一/  明樂哲典
王:    後藤ひろひと/後藤ひろひと/後藤ひろひと
市長:   池田成志 / 池田成志 / 吉野圭吾
ジジイ:  若松武史 / 若松武史 / 村井國夫




2002年版また観たくなっちゃったなぁ のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1474 わーい(嬉しい顔) vs 1476 ふらふら)
posted by スキップ at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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