2015年11月13日
恋か友情か-そこに迷いなどあるものか 「ヴェローナの二紳士」
シェイクスピアの戯曲全37作の上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。1998年「ロミオとジュリエット」からスタートして今回が31作品目。
私が最初に観たのは1999年に上演された第3弾 「リチャード三世」(市村正親さん主演)ですから、もう16年前。
時の流れを感じます。
彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾
「ヴェローナの二紳士」
作: ウィリアム・シェイクスピア 翻訳: 松岡和子
演出: 蜷川幸雄
演出補: 井上尊晶
音楽: 阿部海太郎
出演: 溝端淳平 三浦涼介 高橋光臣 月川悠貴
正名僕蔵 横田栄司 大石継太 岡田正 河内大和 クイール・クラブ ほか
楽士: 田中浩介 矢崎浩志
2015年11月7日(土) 1:00pm シアター・ドラマシティ 5列下手
ストーリー: プローティアス(三浦涼介)は親友 ヴァレンタイン(高橋光臣)からミラノ行きを誘われ、恋人ジュリア(溝端淳平)と離れたくないために断ったものの、父の命令で結局ミラノに行くことになります。
ミラノでは、ヴァレンタインが美しいシルヴィア(月川悠貴)と恋に落ちていましたが、彼女の父親のミラノ大公(横田栄司)は財産目当てでシューリオ(河内大和)と結婚させようとしていました。
そこに到着したプローティアスはシルヴィアにひと目惚れ。ミラノ大公に取り入ってヴァレンタインを追放させます。
一方、ジュリアがプローティアスに会いたい一心で男装してミラノにやって来て・・・。
シェイクスピア初期の喜劇作品。
男二人は、一本気な単細胞と綺麗な女には目がないチャラ男。
女性二人はどちらも一途に恋人を思って行動力もある。
そんな4人の男女が織りなす恋のドタバタ。
いや~、それってどうなの?というツッコミどころも満載です。
「恋と友情、どちらを取るか?」
がテーマということですが、プローティアス、全く迷いなく恋を取っていますよね(笑)。
あんなに愛していたジュリアと涙ナミダのお別れをしたのにシルヴィアをひと目見るなりあっさり心変わりして、自分の恋の成就のために親友であるヴァレンタインを裏切り、シルヴィアにしつこくつきまとい、ジュリアからもらった指輪をプレゼントしようとして、それでも思いが通じないとなると力づくでものにしようとした挙句、小姓がジュリアだと知れると「やっぱりお前しかいない」とこれまたあっさり手のひら返し・・・サイテーの男じゃない?
一方のヴァレンタインは、無骨で誠実な男が初めて恋を知り、シルヴィアを一途に思う、というあたりいいとして、最後、プローティアスが誠心誠意?謝ると、「君を許す。友情の証としてシルヴィアを君に譲る」・・・って、バカなの?(笑)
開演前に二人の楽士がロビーで演奏。
着席すると、舞台上には椅子や彫刻や花売りのワゴンやいろんなものがぎゅうぎゅうという感じで並べられ、その向こうには客席を映し出す鏡。
先ほどの楽士さんたちが上手に現れてまた静かに演奏を始めて、それが急に勢いよく大音量になったかと思ったら客電がパッと点いて、上手下手の通路からキャストが続々降りて(ドラマシティは階段状になっているので)来るという、心踊るようなオープニング。
何だかかつての蜷川演出総動員という趣きじでした。
客席通路を使うのも定番ですが、今回は、客席を横切る、というのがありました。
4列目の客席をスピードの大石継太さんが横切り始めた時には「ええ~っ!ここ通るのぃ?」とオドロキと笑いが。その後、プローティアスもやってたかな。
私の席は5列目だったので、すぐ目の前で観られてラッキーでした。
客席を映し出す鏡も蜷川演出ではおなじみですが、今回はそれが大きな3本の柱のようになっていて、マントヴァへと向かう森のシーンでは緑の木々が鏡に映ってより奥行きが感じられてとても素敵でした。
三浦涼介くんはビジュアル的に女役も似合いそうですが、今回はプローティアス。
最初、上手と下手の通路でヴァレンタインと言い合うシーンでは、ナイーブな青年という印象を受けたので、シルヴィアに会っていきなり一目惚れするあたりはちょっと驚いてしまいました。
繊細そうで、全くチャラ男には見えない(笑)。
そのギャップがアリ、なのかな?
それにしても涼介くんはますますお母様の純アリスさんに似てきましたね。女役したら絶対お母様に間違えられると思います。
高橋光臣さんは一本気で融通きかない単細胞な感じがよく出ていました。
舞台で拝見するの初めて、と思っていたら、「しゃばけ」「真田十勇士」と2本も観ていました
さい芸の初日のやらかしがSNSにかなり流れていましたが、この日も明らかに台詞一つ飛ばして照れ笑いしながら言い直していました。
何度か噛んでたし、シェイクスピアの台詞、苦手なのか?
溝端淳平くんは「こんばんは、父さん」も再演の
もよかったので期待していましたが、ジュリア役はちょっと手強かったかな?
いや、一途で可愛かったし、お芝居も上手いのだけれど。
階段通路を上って行く時、暗転になって客席が舞台の方に注目しても、最後までちゃんと内股小股で歩いていたのは感心ましたし、手の仕草とかとても研究していて女の子らしく工夫しているのが見て取れましたが、そういう表面的なことばかりでなく、オールメールならではの女性の描き方があると思うのです。
二幕でプローティアスの会話を隠れて聞く時、私の真横の通路に座ったのですが、お肌ツルツルでした(笑)。
月川悠貴さんは、いつもながらお美しい。
美しいばかりでなく、所作とか佇まいのエレガントさ含めてすばらしい“女優”さんだと思います。
蜷川シェイクスピアのオールメールシリーズを代表する役者さんですが、台詞のトーンや顔の表情が、どんな役をやってもいつも同じ印象なんだなぁ。
お人形さんのようです。ま、様式美といえなくもないですが。
横田栄司さんの二役(プローティアスの父とシルヴィアの父のミラノ大公)がどちらもとてもよかったです。エキセントリックでオーバーアクションだったり、朗々と台詞を放ったり。
外山誠二さん休演のための二役ということですが、さすがにきっちり演じ分けていらっしゃいました。ウェーブのかかった長髪の黒髪もいかにもイタリア男っぽくてヤラレました。
カーテンコールコールで下手袖に去り際に客席に左手挙げてニヤリと笑った顔の色っぽいこと。
大石継太さんのスピード、正名僕蔵さんのラーンスという二人の道化役も存在感を示していましたが、存在感といえば、クラブでしょう
ラブラドールレトリバーのクィールくんとクラブくんのダブルキャストだったらしいのですが、私が観た日がどちらの出番だったかはわかりません。
いつもリードに噛み付いていたから何か塗ってあるのかな?
とても可愛くて、舞台にいる時は客席の(というか私の)視線ひとり占めだったのですが、とにかく気になり過ぎて、それが演劇作品として正しい演出かはビミョーなところかしら。
そんなこんなで、「ンなバカな・・」と思いつつも、めでたしめでたしで締めくくられる大団円は幸福感に満ちていて、私たちも笑顔で劇場を後にすることができたのでした。
やっぱりシェイクスピア、やってくれるわね のごくらく地獄度 (total 1468 vs 1468 )
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まさに終わりよければ!という感じの物語でしたね。
ツッコミどころがほんとに多くて、でも、それもまた楽しvでした(笑)。
横田さんも素晴らしかったですね。
休演の結果、というのは知らなかったのですが、あの演じ分け、とても楽しませていただきました。
森のシーンも美しかったですね。
オールメールは、わりとセットの綺麗な舞台が多くて、それもまた楽しみだったりします。
楽しい舞台でしたね。
シェイクスピア初期の作品だからなのか、シェイクス喜劇だからか
本当にツッコミどろこ満載ですが、最後には笑って席を立つことが
できるあたり、シェイクスピアも蜷川さんもさすがだなぁと思いました。
横田さん、ステキでしたね~♡
そうそう、オールメールは舞台装置美しいものが多いですよ。
もうひとつのオールメール歌舞伎の「NINAGAWA 十二夜」も
装置がとても綺麗だったことを思い出しました。