2015年10月14日

「聞けぬっ!」 歌舞伎NEXT 「阿弖流為」 -立烏帽子/荒覇吐編-


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10月3日に松竹座公演が開幕して、すでに3回観ました「阿弖流為」。
というか、時間が許すなら毎日でも観たいくらいなのですが。
何回感想アップしても同じことをグダグダと繰り返し書くような気もしますが、
今回からは少しテーマを絞って書いていきたいと思います。
まずは「立烏帽子/荒覇吐編」。


松竹創業120周年 歌舞伎NEXT 「阿弖流為」
作: 中島かずき 
演出: いのうえひでのり 
出演:  市川染五郎  中村勘九郎  中村七之助  坂東新悟  大谷廣太郎  中村鶴松  市村橘太郎  澤村宗之助  片岡亀蔵  市村萬次郎  坂東彌十郎 ほか

2015年10月10日(土) 11:30am 松竹座 3階2列上手



松竹座2回めは3階席から。
最初から松竹座では2階→3階と観て、1階へ降りていく(笑)と決めていました。
3階からはさらに全体がよく見えて、もちろん遠いのですが、照明の美しさはピカイチでした。

そして、この日の荒覇吐が凄かったのよ。
中村七之助さん演じる立烏帽子は、演舞場の初日に観た時からかなり完成された印象でしたが、初日より終盤、そして松竹座でも10/4に観た時よりこの日が格段に凄まじかったです。

まだその正体を現していない時から、演舞場の時より荒覇吐としての表情や声を垣間見せることが多い印象の松竹座の立烏帽子。
その美しい顔が苦しそうに歪む時。

田村麻呂に本物の鈴鹿のことを聞かされて、振り返って立烏帽子を見つめる阿弖流為。
じっと見返す立烏帽子の目。

「お前は誰だ?」
「わが名を問うか、阿弖流為」
「お前はもうわかっているのであろう」

客席に背を向けている荒覇吐の覚醒は、
七之助さんに惹きつけられ過ぎて息をするのも忘れるほど。


「私は森であり 山であり この日高見の国である」


「これは人が神を殺す戦だ」という荒覇吐と
「蝦夷の民たちに戦火に怯えることのない夜を与えたい」という阿弖流為
「俺は、俺だけは、いつもあなたのことを思っている」
「許せっ」と命も賭する勢いの阿弖流為の言葉に

「聞けぬっ!」

と毅然と剣を向けて応じる荒覇吐。
右手で剣を構え、左手を真っ直ぐ天に伸ばした荒覇吐の姿は、
孤高で、気高く、そして何と神々しいことか。

荒覇吐の激しい怒り。
その中に滲む哀しみと絶望。
これ以上ないというくらい憤怒と哀しみが織り交ざった「おのれはっ!」
そして言葉にならない咆哮。

神としては元より、やはり女として阿弖流為を愛していたのではないかと思います。
それを考えれば、鈴鹿だけ記憶を残したままあの隠谷に閉じ込めた理由もわかる気が。
「私がいながらお前を護れなかった」という悔恨。
武人としても蝦夷の長としても、そして一人の男としても愛した人間が自分に刃を向ける切なさ。

二人の殺陣がまるで魂のぶつかり合いそのものようで、何度観ても震えます。
演舞場2回目の感想に、「阿弖流為と荒覇吐の殺陣は、「阿修羅城の瞳」の出門と阿修羅王(つばき)の斬り合いと並んで、新感線の舞台の中でも究極のラブシーンだと思っている」と書きましたが、何だかもう荒覇吐が切なくて切なくて、涙がとまりませんでした。

ついに荒覇吐の体を貫く阿弖流為の剣。

「神とは口惜しいのう」
「蝦夷の長も口惜しいわ」
「口ばっかり」

この「口ばっかり」という声の弱々しさ、やさしさ、寂しさ。

「いずれわが魂はあなたのもとに行く」という阿弖流為の言葉で、
荒ぶる神の魂は解放されたのでしょうか。
いや、そうであったと信じたい。
だって、宮中でのあの最後の闘いで、阿弖流為に力を与えた紅玉こそ、
荒覇吐の魂だったと思うから。

七之助さんの立烏帽子/荒覇吐、それに加えて可憐な鈴鹿も、ビジュアル含めてこれ以上ないというくらいハマリ役だと思います。
切れ味鋭く速いのはもちろん、衣装の裾をひらひら翻す殺陣の美しさ。
もちろんご本人の資質や力量がイチバンですが、
「歌舞伎役者でこの役がやれるのは七之助くんしかいない」と考えてオファーした染五郎さん
七之助さんが演じるにあたって脚本をリバイスして中島かずきさん
そして演出をつけたいのうえひでのりさん
そのすべてのベクトルが見事なくらい同じ方向に向けて最大限の力を発揮して、
この役とこの震える名場面が出来上がったに違いありません。



10/10の定点観測レポ:

■ 御霊さまネイル: 聞きくところによると御霊さまは大阪にはネイルは1種類しか持って来られなかった模様。なので前回と同じです。
■ シャケ: 蛮甲 → 阿弖流為  持て余した阿弖流為。No ideaだったのか、うろうろした挙句 「ごめんなさい」と蛮甲に返却。
■ 田村麻呂: 隋鏡を殴りに行った時、逃げる隋鏡に「おい、待てこらぁ~ ハゲ」 (前回にハゲがオン)
■ おはよう: 「はい、おはようさん」 阿弖流為さん 完璧関西弁イントネーションでした。
■ 佐渡馬黒縄: 登場の時グリコポーズ 「ひと粒三百里」



7/5 演舞場初日カーテンコール
7/5 初日
7/25 2回目
10/4 大阪1回目




はぁ~ ほんとに松竹座に住みたいワ のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1452 わーい(嬉しい顔) vs 1453 ふらふら)

posted by スキップ at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんわ~!!
スキップさん羨まし過ぎですよ!
また、阿弖流為の飛び六方が観たい!!
Posted by ケンボウ at 2015年10月15日 22:28
♪ケンボウさま

ふふふ。
うらやましでしょ?(笑)
とはいうものの、時間が許せばまだまだ観たいところでしたが。

あの阿弖流為の飛び六方は本当に何度でも観たくなりますね。

今日と明日の千穐楽、私はラスト2回です(涙)。
Posted by スキップ at 2015年10月16日 00:11
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