2015年10月06日

「再演」というハードル 「100万回生きたねこ」

cats2015.jpg2013年の私のベストスリー舞台の中の1本。
1月31日という1年の早い時期に観たにもかかわらず、「早くも今年のベストか?」と思ったくらい大好きだった作品です。

その作品がキャストを変えて再演。
作品のよさもさることながら、森山未來くん&満島ひかりちゃんがベストキャストだと思っていましたので、そのイメージを壊されたくなくて今回観るかどうか逡巡しましたが、キャストが変わると受ける印象がどう変わるか興味があったこと、キャストが変わるからこそまた新しい発見があるかもしれないと思ったこと、そして今年観た成河くん出演の2作品(「十二夜」 「アドルフに告ぐ」)がどちらもとてもよかったことから、観てみることにしたのでした。


ミュージカル 「100万回生きたねこ」
原作: 佐野洋子
演出・振付・美術: インバル・ピント  アブシャロム・ポラック
脚本: 糸井幸之介  戌井昭人  中屋敷法仁
音楽: ロケット・マツ  阿部海太郎
歌詞: 友部正人
出演: 成河  深田恭子  近藤芳正  田口浩正  石井正則  銀粉蝶  藤木孝 ほか

2015年10月3日(土) 5:30pm シアターBRAVA! 1階B列センター



この作品の感想は初演の時に気合入れて書いていて、しかも我ながらよく書けている(自画自賛)ので、こちらをご参照。


まるで飛び出す絵本のような舞台。
細かい部分までこだわった装置や小道具。影絵。
かわいい衣装やメイク。
アコースティックな楽器が奏でる甘く切ないメロディと歌詞。
独特な動きを見せるダンス。
じんわりと染み入るように心に届くメッセージ。
・・・研ぎ澄まされたような美意識の中で繰り広げられるちょっぴりビターでシニカルな大人のメルヘン。

そんな初演に感じた雰囲気はほとんど変わっていないのに、全く心が乗っていきませんでしたあせあせ(飛び散る汗)

これはどうしたことでしょう
と、自分なりに理由を整理してみました。キャスト

森山未來くんは間違いなく私のお気に入りの役者さんの一人です。
だから、ここから書くことはかなり贔屓目線になっていることを差し引いていただくとして。

初演の感想に
「演技も歌もダンスも一流。キュートとシニカル、傲慢と繊細が同居。今この役ができる人が他に思いうかびません。」
と書いています。

そうだった。
チケット取る前に自分のこの感想を読み直すべきでした。
この「とらねこちゃん」という役は私の中で森山未來くん以外なかったんじゃないか、と今さらながら気づいたのでした。

決して成河くんが劣っているとか、役者としてのポテンシャルに差があるとかいうことではなくて、この役は未來くんのための役だったな、と。

最もそれを感じたのは、未來くんのとらねこの、傲慢さや醒めた目線の向こうにある救いようのない孤独感、切なさ、ぬぐいきれない哀しみが成河くんとらねこには感じられなかったことかな。
その佇まいやふとした時に見せる表情も含めて。

成河くんとらねこ(特に一幕)は、心身ともに元気そうで、ねこというより文字どおりトラのこどものようにも感じられたり。何だかいつもプンプン怒ってイラついているように見えたのでした(偏見です)。
成河くんはオーディションでこの役を勝ち取ったのだとか。
この経験が彼のこれからの役者人生に大いにプラスになることを期待しています。


どんなに初演がすばらしくても、未來くんに限らず、一人の役者さんがずっと同じ役を演じ続けることはできない(松本幸四郎さんの『ラ・マンチャの男』のような例もあるけれど)ので、そこに再演の難しさも、それを観る側のハードルもあるのではないかと思います。


白ねこは、シャープでしなやかな満島ひかりちゃんに対して、深田恭子ちゃんはどこまでもふんわり可愛かったです。
顔ばかりか声も可愛かったなぁ。
一幕でとらねこがピンチに陥るたびに「とらねこちゃんっ!」と叫ぶ声が耳に残っています。
二幕ではあの可愛い顔でとらねこにつれない態度をとって、ツンデレかよ、と思いましたが(笑)。

カーテンコールでスタンディングになった客席見て涙流す深田恭子ちゃんは天使みたいに可愛いかったです。
そんな深キョンをよしよししながら泣きマネする成河くんもねw


メルヘン

一幕を観ていて、自分の気持ちがこうも乗れないのは、私がメッセージが込められてるとはいえ、メルヘン的な世界観に浸れる心をもう失くしてしまったからではないか、とも思いました。
穢れちまったのさ、わずか2年の間に(笑)。

ストーリーを知っているせいもあるかもしれないのですが、あんなに愛おしいと思った世界が、ただの絵空事のように感じてしまって、自分で自分が悲しかったです。


そして最後にして最大の理由
阿弖流為

何だよ?って感じでしょ(笑)。

この日は歌舞伎NEXT「阿弖流為」の大阪公演初日。
その日程がわかったのは、こちらの公演のチケットを取ってしまった後だったので、「ま、仕方ないか」と思ったのです。その時は。
でもいざその日になると「阿弖流為」のことばかりが気になって。

多分この2週間は「阿弖流為」で心が占められちゃうのだと思います。
これは、こちらの舞台の出来とか役者さん云々とかとは全く関係ない私の個人的な感情なので、作品に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
この感じ、前にもあったゾ・・・と思い返してみたら、「朧の森に棲む鬼」の大阪公演の時でした。
あの時も、その間に観た他の舞台に全然心が向かなかったなぁ。

その2回がどちらも松竹座でどちらも市川染五郎さんが主演だなんて。
染ちゃん、どんだけ(笑)。
・・・というか、ライとか阿弖流為とかといったタイプのヒーローが大好きなんです、私。


という訳で全く舞台の感想から離れてしまいました。
ほんっとっ、申し訳ないっ<(_ _)>


そうそう、初演の感想に書いた「森の緑の草原に花が咲いているのにカーテンコールの時に気づいた」という件は、そのことすら忘れていましたが、ちゃんと咲く瞬間を目撃しました。
あれに気づかなかったとは、前回何観てたんでしょ。



この作品は未來くんがとらねこをやらない限り二度と観ない・・つもり の地獄度 ふらふら (total 1447 わーい(嬉しい顔) vs 1450 ふらふら)
posted by スキップ at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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