
本当は一部の「棒しばり」が一番観たい演目ではあったのですが、エリザの上演時間と重なってそれは無理。ならば、と日曜夜に三部を観ることにしました。
いずれも初めて観る演目で、そんなにチカラこぶ入っていた訳ではないですが、楽しかったです。
歌舞伎座 八月納涼歌舞伎 第三部
2015年8月23日(日) 6:15pm 歌舞伎座 3階東
一、十世坂東三津五郎に捧ぐ 芋掘長者
出演: 中村橋之助 坂東巳之助 坂東新悟 中村国生 中村鶴松
坂東秀調 中村七之助 ほか
息女 緑御前の婿選びに舞の会を催す松ヶ枝家。
芋掘藤五郎は緑御前に恋焦がれていましたが踊りはからきし駄目。
そこで舞の上手な友人治六郎が面をつけ、藤五郎になりすまして踊り、やんやの喝采を受けますが・・・というお話。
皆さんそれぞれにお役のつとめをしっかり果たしてお行儀のいい一幕。
純朴な藤五郎(橋之助)、友だち思いの治六郎(巳之助)、最後に姫を芋掘りに奪われても怒ったりしない兵馬(国生)と左内(鶴松)。
清楚で品があって美しい赤姫の緑御前(七之助)、姫をやさしく見守る松ヶ枝家後室(秀調)と腰元 松葉(新悟)。
悪人が誰も出て来なくて、観ていてふんわりやさしい気持ちになるお芝居でした。
最後にみんなが横一列に並んで踊るお尻フリフリダンス(?)もかわいかったな。
お
この演目は平成17年に坂東三津五郎さんが45年ぶりに復活上演されたもの。
その役を踊る巳之助さんへたくさんかかる「大和屋っ!」の大向うと、多分重圧もあるでしょうに、きちんと受け止めてキビキビ踊る巳之助さんの姿に胸が熱くなりました。
二、祇園恋づくし
出演: 中村扇雀 中村勘九郎 中村七之助 坂東巳之助 中村鶴松
市川高麗蔵 坂東彌十郎 ほか
京都三条で茶道具屋を営む大津屋に泊まっている江戸の指物師留五郎(勘九郎)。
主人次郎八(扇雀)が江戸で世話になった人の息子ですが京になじめず江戸へ帰ろうとしていました。ところが、次郎八の妻おつぎ(扇雀二役)の妹おその(鶴松)に一目ぼれした留五郎は、おそのから江戸へ連れて行ってほしいと言われ有頂天。実はおそのは、手代文吉(巳之助)との駆け落ちするつもりだったのです。また、おつぎからは次郎八が浮気をしているかもしれないので調べてほしいと頼まれます。次郎八は、ひいきの芸妓染香(七之助)に熱を上げているのでした・・・。
いや~、これ、自分でも何がツボに入ったからよくわからないのですが、やたらおかしてゲラゲラよく笑いました。
公演期間も終盤でしたのでアドリブもかなり増えていると思われ、役者さんたちがボソっとつぶやくひと言が訳もなくおかしかったり。
勘九郎さんも扇雀さんもそれぞれお父さんネタやってましたが、舞妓ちゃん好きが「お父さんの遺伝かな」って、そこにいない人間国宝の顔がアリアリと浮かびましたよね。
落語を元にして、十七世勘三郎さんと当代藤十郎さんにあて書きされたものだそうです。
演じるのはそれぞれのお孫さんと息子さん。
勘九郎さんが早口でまくしたてるべらんめぇ調でキレのいい江戸っ子弁は耳にとても心地いい。
そんな口跡、声、ちょっとした仕草も含めて、いつにも増して勘三郎さんが重なって、泣き笑い。
次郎八とその女房おつぎの二役は扇雀さん。
ちゃんと別人に見えて見事な演じ分けの中に、「似たもの夫婦ですな」と留五郎に言わせたり、夫婦揃って「悔しい~」と同じリアクションを見せて笑わせてくれました。
七之助さんは声が本調子ではないご様子でしたが美しさは絶品。
「芋掘長者」の赤姫とはまた違って粋に着こなした寒色系の芸妓さんのお着物が美貌によく映えます。
次郎八のことを嫌いながらもいただくものはちゃんといただくちゃっかりさんで、おつぎさんまでうまく丸め込むしっかりさん。最後は好きな人と添い遂げて、この中で一番の勝ち組かも。
「狐狸狐狸ばなし」のおきわさんといい、こういうちょっと腹黒いというか、したたかな女の役、本当に上手いしよくお似合いです。
おそのちゃん・文吉くんのいちゃいちゃカップルもかわいかったです。
初めておそのちゃんのお供をした時、坂を下りる話をデレデレくねくね語り続ける巳之助さん文吉のおとぼけっぷり

最後にはおそのちゃんの縁談相手のお家の旦那はんこと彌十郎さんが丸く収めて大団円。
勘九郎さん以外の役者さんたちの京ことばのイントネーションが耳にひっかかる場面もありましたが、お江戸と京の文化や芸風の違いも感じられて、楽しい一幕でした。
演目は楽しかったのだけど、初めて座ってみた歌舞伎座三階東側。音響が悪くて聞き取りにくかったよぅ のごくらく地獄度



