
posted at 15:12:53 on Aug.23
これ、1日目の幕間の私のツイートです。
2年前のStarSコンサートで「最後のダンス」を歌った時、「もうトート決まってるんじゃないかな」と感じた井上芳雄くん。
あの時、3人で「闇が広がる」も歌ってくれたけど、輪舞をナマで聴くのは初めてでした。
そして、これまで数々観てきた「エリザベート」の中で、この出会いの曲で泣いたのも初めて。
自分でも不思議な感情だったのですが、帰阪してから読んだ河村常雄さんの劇評に、「正確で気迫と情感に満ちた『愛と死のロンド』は過去のトートの中で最高の歌唱ではないか」と書いてあるのを読んで、やっぱりあの「愛と死の輪舞」は特別なんだと納得した次第です。
ミュージカル 「エリザベート」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞: 小池修一郎
音楽監督: 甲斐正人
美術: 二村周作
衣装: 生澤美子
2015年8月23日(日)1:30pm 帝国劇場 1階F列上手/8月24日(月)1:30pm 1階P列下手
全体の感想はこちら
ちなみに、このフライヤー画像は昨日とは別バージョンですが、エリザベートが片手挙げているばかりでなく左右入れ替わっているのね。トートは全く同じだけど(笑)。

これ、ロビー奥にあったプリンシパルキャスト全員登場のパネル。
常にカメラを構えた人だかりがしていて、人の頭を避けて全体を撮るの至難のワザだったのですが、ナナメながら全部入れられた自分をほめたい(笑)。
そんな「愛と死の輪舞」が表す通り、エリザベートへの「愛」とエリザベートが魅入られた「死」の二面性を持つトート。
井上芳雄くんのトートは、“緻密に計算して全精力注ぎ込んでつくりあげた”という印象でした。
何ていうのかな、井上芳雄という人のミュージカル俳優としての天性と、この役に対する意気込み、そしてプロ根性を見せつけられた思い。歌唱の迫力、すばらしさはもちろん、あの唇の端だけ上げてニヤリとする酷薄な笑みとか、佇まいとか、マントさばきとか、髪型とか衣装とか、すべて完璧にトートを造形。
特にそれを感じたのは手の表情で、二幕冒頭で、戴冠式の後、「私は勝ったのね」と自信たっぷりに ♪私が踊る時 を歌うエリザベートを階段の下で、片膝ついて右手を差し出して迎えるトートの指先がとんでもなく美しく、かつ緊張感にあふれていて、「絶対あの指先から妖しい魔力出てる」(笑)と思いました。
城田トートも同じようにするのかな、と思って翌日注意して観ていたら、そうではなかったので、あれはやはり芳雄オリジナルなのか、と。
エリザベートに内在する、死への憧憬を投影したものとしてのトートですが、井上くんのトートは彼自身がシシィをすごく求めている感じが時折して、より恋愛に近い・・・甘美な死の誘惑、という言葉がハマるトートでした。
対する城田優くんのトート。
長身(井上くんももちろん長身ですが)に彫りの深い顔立ち・・ビジュアルからアドバンテージありありで人外のもの感ハンパない。
役へのアプローチも歌い方も、井上くんとは違っていて好みは分かれるところかと思いますが、「トート」という意味では城田くんの在り方が正解のような気がしました。
いや、どちらが正解というのとは違うな。うまく表現できませんが、井上トートが「人間離れ」しているのに対して、城田トートは「人外のもの」という感じ。
井上くんのトートは、(私がいつも注目しているせいもあるかもしれませんが)出てきた瞬間から目が惹きつけられて、舞台上での存在感と劇場全体への支配力が凄いのですが、城田トートは気づいたらいつの間にかそこに、しかも彼にとっての対象物(エリザベートだったりルドルフだったり)の至近距離にいるイメージでした。
一人ぼっちのルドルフを、離れた場所から首を傾けてこの上なくやさしそうな顔で黙って見つめているかと思えば、次の瞬間 ♪友だちさ~ と全然友だちを見るようではない(笑)氷のような顔で手をのばしたり。変幻自在。
ロックな歌唱も好きでした。
ルキーニの尾上松也くんと山崎育三郎くんの二人。
松也ルキーニは今回発表された時、一番驚いたキャスト。
言葉は悪いですが、野卑でゲスな感じがよく出たルキーニでした。
さすがに台詞は滑舌よく声もよく通って歌舞伎役者としての芝居っ気がこの役には有効に作用していたと思います。公演初期の頃、「高音が・・」という声も漏れ聞こえましたが、私が観た日は歌も普通に上手かったです。
松也くんのルキーニが「下卑た殺人者」なら山崎育三郎くんは「狂気の暗殺者」という趣き。
育三郎くんはハンサムだし歌も上手くて何でもそつなくこなす優等生ですが、私の中では「どんな役をやっても育三郎」というイメージでした。
そんなイメージを見事に覆してくれたルキーニ、すごくよかったです。
twitterでもつぶやきましたが、「育三郎のかけらもない」(ほめています)。
フランツ・ヨーゼフは佐藤隆紀さんと田代万里生くん。
佐藤さんを初めて拝見したのは多分「タイタニック」だと思いますが、相変わらずいい声。歌上手いよねー。
シシィと出会った青年期から♪夜のボートの哀愁を帯びた晩年まで、無理なく歳を重ねたように見えました。
万里生くんフランツは、「シシィのことが大好き」感と「マザコン」感がすごかった(笑)。
やさし過ぎていろんなことに抵抗できなくて、自分を自分を追い詰めている雰囲気がより色濃く出ていた印象です。
ルドルフは京本大我くんと古川雄大くん。
京本くんは、どうなんだろ?という感じだったのですが、歌はフツーに上手いし、ダンスはさすがJの人という感じ。
トートダンサーと踊る時の操られ感がすごかったです。
古川くんルドルフは前シリーズではただひ弱なイメージがあったのですが、今回はひ弱な中に凛として自分の意思を持った皇太子でした。
二人とも青い軍服、似合うよね~。
ゾフィーの香寿たつきさんとルドウィカ/マダム・ヴォルフ の未来優希さんさんはともに宝塚歌劇団出身。
やはり歌はどちらも高度に安定して聴きごたえたっぷり。
香寿さんは美しさもやさしさも「厳格」というヴェールの向こうに隠したゾフィーでしたが、それがたまに垣間見えるような。
未来さんは当然ながらルドウィカとマダム・ヴォルフの別人感が凄かったですが、この方の持ち味としてはマダム・ヴォルフかなと思いました。
子ルドは正直なところあまり区別がつかないのですが、のびやかに響きわたるボーイソプラノ。すごいな、あんな小さな子が。
・・・といちいち書いていたらきりがない。しかも我ながら息切れ感アリアリ(笑)。
私が観た組み合わせ以外にも、トートとルキーニ、フランツとルドルフ・・など別の組み合わせだったら、また違った化学反応が起こっていたのかもしれません。
その楽しみはまた次の機会にとっておくことにします。
「エリザベート」が主役のミュージカルですが、やはり舞台は総合芸術。
アンサンブル、ダンサーの一人ひとりに至るまでが見事なパフォーマンスを発揮して、音楽、演出、美術、衣装、それらがすべて融合してこの作品をつくり上げていて、だからこんなにも人々を魅了して、何度も劇場へ足を運ばせるのだと思います。
2016年の全国ツアーが発表されました。ココ
今回と全く同じキャストになるとは考え難いですが、来年大阪でまたこの作品に会えること、とても楽しみにしています。
私にしては珍しくライブCDも予約しちゃいました のごくらく度



キャスト編も興味深く読ませていただきました。
二人のルキーニの趣、まさにその通り!と深く頷いてしまいました。
複数キャストは本当にそれぞれに個性的で、それぞれに魅力的でしたね。
来年の公演では、キャストの組み合わせでの変化も楽しめると良いなー、と思います。
・・・チケット争奪戦、凄そうですが(^^;)
自分でもだんだん飽きてきちゃって(笑)尻切れトンボみたいな感想に
なっちゃいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
本当に彩り豊かで個性的、しかも実力あるキャスト揃いで楽しめましたね。
終わってみると何だかお祭りみたいだったなと思います。
来年のツアーは地元の利を活かして、大阪ではいろんな組み合わせを
楽しめるといいなと思っています。
(チケット取れれば、ですが(^^ゞ)