
・・・にしても、とても力のある作品で、しかもそれが自分の好みにドンピシャだったりすると他のものはこんなにも上塗りされてしまう、という感覚、久しぶりです。
「阿弖流為」おそべし!
それはさておき(笑)
NEWシネマ歌舞伎 「三人吉三」
作: 河竹黙阿弥
演出・美術・監督: 串田和美
出演: 中村勘九郎 尾上松也 中村七之助 坂東新悟 中村鶴松 笹野高史 ほか
2015年6月28日(日) 9:30am 大阪ステーションシティシネマ スクリーン9
昨年6月28日 コクーン歌舞伎の千穐楽で観た舞台。
ちょうど1年ぶりです。
その時のレポに役者さん個々の感想などは書いていますので、詳細は省略。
上演時間170分だった舞台を135分に編集されていますので、カットされた場面もいくつかありますが、お坊とお嬢の一箇所、あれ?!あの場面ないの?と思った以外は、それほど違和感は感じませんでした。
これは多分、今回シネマ版の監督も串田和美さんが担当されたのが大きいと思います。
やはりご自身の演出なので、ここは、というところは間違いなく収められていてしっかり強調もされています。舞台美術もされる方ですから、リアルに動く画像の中に静止画を挟み込むバランスとか絶妙で、映像作品としてもかなり上質だと思いました。
ラストで3人がぶわっとそのままフライヤーの現代の3人の若者になるところとか、象徴的で洒落てたな。(このフライヤー、似てますがコクーンの時とは微妙に構図が違うのね)大詰めの大雪の中の立ち回りの躍動感たるや。
本郷火の見櫓の場。
閉ざされた木戸を開けるために必死に櫓に上って太鼓を打とうとするお嬢吉三の姿に涙。
ここ、舞台で観た時も泣いちゃったのですが。
さらに、今回映像を観てより強く印象に残った場面は、「巣鴨吉祥院の場」です。
去年舞台を観た時の感想にこんなことを書いていました。
ここのお嬢とお坊は何でしょ。
エロス?(笑)。
「一緒に死ねと言われるほうが、おらぁうれしいよ」とお嬢。
「そんならここで、てめぇもおれと一緒に死ね」と応じる言葉が、お坊からお嬢へのプロポーズに聞こえたな。
実は映画を観る前にたまたま目にした 25ans 8月号の3人のインタビュー記事で、お嬢とお坊の萌え場面について、
七之助くん 「原作的には恋人、友情どちらにも取れるんですが、今回はこっち(恋人)で行こうと。ただ台詞で表すものがないので、ふたりで死のうとするところをたっぷりやることにしました」
松也くん 「たくさん話し合ったけれど、結局は本番ですよね。本当にキスしかかった日もありましたし、まったく触れない日もありました。それでも伝わるものは伝わるんだと思います」
と語っているのを読んだのです。
これを読んだ時、あの時私が受けた印象はやはり間違ってなかったと思いつつ、それを知った上でもう一度あの場面を観てみたいと思ったのでした。
そして、スクリーンで大写しにされた細かい表情や目の動きまで見て取ると、本当に愛し合っていたのね、という思いをより強くして、だから、あのこと切れる刹那、最期の力を振り絞って手を繋ぐ二人が一層哀しく切なく見えました。
ナマの舞台もすばらしかったですが、まさに時分の花。
この年齢のこの3人だから放つ輝きと情熱と脆さ危うさにあふれていて、
それは、もし再演するとしてもまた別の「三人吉三」になるであろうもので、
だから
舞台の映像化をあまり好まない私ではありますが、
あの瞬間をこうして映像に残すことができるのは、彼らにとっても観る者にとっても、幸せなことだと思いました。
ほんに今夜は節分か のごくらく度


