この作品のことは全くノーマークだったのですが、このフライヤーを最初に見た時、ひと目で惹きつけられて「おもしろそう」と直感しました。
キャストに大好きな花組芝居の桂憲一さん、八代進一さんも入っていて、これは観なければ、と。
その直感は当たっていて、とてもおもしろくて、「世界館」というロケーションを含めて、際立って印象に残る舞台となりました。
こんな出会いがあるから、観劇はやめられませんね。
玉造小劇店配給芝居 vol.16
リリパットアーミーⅡ
「ひとり、独りの遊戯」
作・演出: わかぎゑふ
出演: コング桑田 野田晋市 うえだひろし 谷川未佳
長橋遼也 桂憲一 八代進一 小椋あずき 鈴木健介
浅野彰一 わかぎゑふ
2015年6月26日(金) 7:00pm 世界館 A列(3列目)センター
生まれてから十三歳までは女、
初潮がきた日に男に成り、
女でなくなった日から女に戻り、
今日まで、 大陸と日本に翻弄され続けた・・・
女歴五十三年、男歴三十年、
最も人間らしい一生をおくった者の噺。
というのが公式サイトに掲載されたストーリー。
主人公は、昭和8年12月23日 現天皇と同じ日に満州で、日本人の父と朝鮮人の母の間に生まれた少女 光(ひかる)。
日本が軍事国家の道をひた走る中、家族はバラバラになり、2歳年上の兄・悟(さとる)とともに終戦の混乱の中、やっとの思いで日本へ帰ります。
数年後、帰国途上に自らの身を守るためにおさげ髪を切って男になりすました光は、そのまま男として、悟とともに大阪・ミナミでヤクザの世界に足を踏み入れていました・・・。
女であることを隠して男として生きる若いヤクザという異形の主人公の物語ではありますが、光の生き様を通して、昭和初期から戦中、戦後、そして高度成長期へと辿る昭和史を見るような骨太のドラマでした。
そこには戦争の狂気も悲劇も、民族差別やジェンダーの問題、さらには赤軍派まで、社会性も孕んでいます。
それらを決して大仰な悲劇としてでも美化するでもなく、フラットな目線で描いていて、リアリティがあってどこか物哀しくて、でも明るさもユーモアも散りばめられていて。
わかぎゑふさん、さすがの作劇です。「動く紙芝居のような作品」というだけあって、紙芝居のような枠のあるセットに、こども時代はパペットを遣う演出や、前方にある柵を役者さんが折りたたんだり伸ばしたりして部屋になったり車になったりする舞台装置もおもしろかったな。
観る側のイマジネーションを信頼してくださっている感じ。
心に残るエピソードはいくつもありますが、幼い光たちに影響を与えた二人の実在の人物がとりわけ印象的。
一人は伊達順之助。
親たちと離れ離れになり路頭に迷って飢える兄妹を引き取って面倒をみた人物。
馬賊。
いかにも豪放で、人々からは恐れられている雰囲気ですが、光とは目と目で通じ合ったのね。
光に拳銃の撃ち方を教えた人物でもあり、後になって光がある人を射殺した時、悟が「俺が知る限り(順之助に教えてもらった)あんな撃ち方ができるのはお前だけだ」と言っていて、ハッ!としました。
順之助を演じるコング桑田さんがまたカッコいいんだ。
順之助が実在の人物ということは後で調べて知ったのですが、もう一人はすぐにわかりました。、
終戦で満州から日本へ帰る決死の旅を共にする中に、「男の子のふりをした方がいい」とアドバイスをして光のおさげ髪を切ってやる人物。
「嘘もつき通したらほんまになるんや」と言ったこの人は、「イナガキカンジいうねん。役者やってんねん」と。
・・・稲垣寛治って、藤山寛美さんやん!
後日、松竹新喜劇の看板役者となった藤山寛美さんの借金取り立てに悟が行って再会、という虚実織り交ぜたエピソードが本当にうまく物語にハマっていて、ゑふさんすごいなぁ、と改めて思いました。
役者さんは皆さん何役か兼ねていらっしゃいましたが、
光(ヤクザ時代の呼び名はコウ)を演じたうえだひろしさんと悟の桂憲一さんはずっと通しで。
この二人が本当に愛おしい兄妹で。
コウ時代のうえだひろしさんのクールでカッコいいこと。
そのコウをずっとそばで見守り続ける桂憲一さん悟の温かいこと。
ヤクザ社会に身を置くコウが光に戻る時って、悲しいことが起こりそうで見守りながらも胸を痛めていたのですが、そんな心配をふんわり笑いに包んでくれたのも悟兄さんでした。
そして13年後。
女に戻った光に訪れた結末が少し苦く切なく、そしてまたふんわりとした空気が漂ったのがとても心安らぐ思いでした。
世界館はまるで昭和の芝居小屋はこうであったろう、な雰囲気でこの芝居にぴったり。
元倉庫ということで、上演中ザーザーと雨音がハンパなかったのですが、それすらBGMのよう。
少し静かになった時に登場したコングさん、「雨もやんだ。大丈夫だ!」とフツーに台詞でおっしゃっていました(笑)。
金曜日の雨の夜で少し空席もあったのですが、カーテンコールがダブルコールとなって、
「ダブルコール初めてで。一番少ないお客さんなのに・・」とゑふさん(笑)。
コングさんが「せっかくだから写真撮ってもらお。SNSとかバンバン流していいから」とおっしゃって、舞台上で皆さんでポーズとってくださって、「起動する時間があるからね」と少し待ってもくださったのですが、スマホがバッグの奥底に沈んでいた私は起動が間に合わず、やっと撮れたのがこれ。
もうみんな帰りかけてるし(笑)。
こちらはロビーに飾ってあった出演者全員のサイン入り写真。
ロビーに出ると八代進一さんがプログラム販売していらしたので思わず買って(カテコでもコングさんがまだ9冊しか売れてないっておっしゃってたし)、握手していただいちゃった
買った人には役者さんが日替わりでサインをしてくださるらしく、
この日は浅野彰一さんと谷川未佳さんでした。
ロビーの写真撮ってる私に気づいたコングさんが
こんなポージングもしてくださって、ほんと至れりつくせり。
東京公演は7/1-7/8 下北沢ザ・スズナリ お時間ある方はぜひ! のごくらく度 (total 1394 vs 1395 )
2015年06月29日
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