2015年06月08日

その連鎖を断ち切れるのは何か  「プルートゥ PLUTO」

pluto.jpg4ヵ月前に観た舞台あせあせ(飛び散る汗)
あの頃は絶賛サヨナラ期間中で精神的にも物理的にも余裕がなく、感想も書けないままになっていたのですが、この作品のことは残しておきたいと思っていました。
が、もうあの時の感動も記憶も薄れがち・・・だったところ、先日BSでオンエアされたのをザクッと観て復習したのでした。

森山未來くん イスラエル留学から帰国第1作。


「プルートゥ PLUTO」
原作: 浦沢直樹×手塚治虫
演出・振付: シディ・ラルビ・シェルカウイ
プロデュース: 長崎尚志
監修: 手塚眞
出演: 森山未來  永作博美  柄本明  吉見一豊  松重豊  寺脇康文 ほか

2015年2月6日(金) 7:00pm 森ノ宮ピロティホール H列上手



手塚治虫の「鉄腕アトム」に出てくる「地上最大のロボット」をもとに書かれた浦沢直樹の漫画「PLUTO」が原作。
ベルギーの鬼才の振付家 シディ・ラルビ・シェルカウイが演出・振付をした作品です。
鉄腕アトムやウランちゃん、お茶の水博士は子どものころ慣れ親しんだキャラクターではありますが、この原作は全く知りませんでした。


果たして作者や演出家の意図を理解できたかどうかはさておき、物語も演出も舞台美術も、際立って印象的かつ刺激的な舞台でした。■ 物語

人間とロボットが共存する時代。
世界最高水準のロボットが破壊される事件が次々と起こり、刑事ロボット・ゲジヒト(寺脇康文)は、自分を含めた7体が標的になっていることを知ります。7体は5年前、泥沼化した第39次中央アジア戦争を収束させるため招集されたメンバーでした。
ゲジヒトは日本へ向かい、7体の一人であり人間に限りなく近い存在であるロボット・アトム(森山未來)と共に事件の謎を追います。アトムの妹・ウラン(永作博美)は悲しみを察知する能力を持っていますが、廃墟の壁に花畑の絵を描く不思議な男と出会います・・。


戦争で家族を失い、その悲しみと憎悪に満ちたアブラー博士(松重豊)。
ロボットたちが襲われた事件の向こうに見えてくる、「大量破壊兵器がある」ことを理由に子供まで虐殺した大国への怒りと憎しみ。
イラク戦争を思い起こさせますが、「第39次」としたところに、太古の昔から、人間は愚かな争いを繰り返してきたこと、そしてそれが今なお続いていることを象徴しているように感じます。
様々な物語やお芝居の中で表現される「憎しみの連鎖」がここにも。

その連鎖を断ち切ろうと立ち上がるアトム。
空を飛び、敵に立ち向かい、傷つけられ、それでもなお諦めずに飛ぼうとするアトムの姿は観ていて痛々しいほどでした。
心を持たないはずのロボットが、人間との交流によって人を愛したり家族を大切に思ったり愛する人をなくして悲しんだりという感情を持って立ち上がる・・・憎しみの連鎖を断ち切ることができるのはそんな「愛」なのかもしれません。

夫のゲジヒトを亡くした後、芽生えた“悲しみ”という感情に混乱するヘレナ(永作博美二役)が、天馬博士に「泣くまねをするといい」と言われ、マネをしているうちに本当の涙になって、やがて号泣する場面も印象的でした。


■ 演出・美術

演出や美術はかなり斬新。
残骸のように積み上げられたロボット。
いろいろな形に組み合わせて使われるセットは漫画のコマの形。
そこに映し出される原作漫画のカットやプロジェクションマッピングの映像。
ロボットを操る黒子ならぬ白いダンサーたち。
ロボットを演じる役者さん自身の肉体も含めて、様々な表現方法の融合がこの舞台をつくり上げていました。

そして終盤に登場する大爆発を表現する大きなビニールの風船(?)
表面が伸縮して、中から人の顔が浮き出てきたり、アトムがその中に吸い込まれていく様は、「どーなってるの?!」と驚きながらも、何だかおそろしいものを見るようで、吸い込まれるように見つめてしまいました。


■ 森山未來くん

まずは、未來くん お帰りなさい。
未來くんがまた舞台に戻ってきてくれて、本当にうれしいです。

しなやかにして強靭な筋力と身体能力にはさらに磨きがかかって、まるで重力なんてカンケーねーよ、な動き。しかも美しい。
リフトされて空を飛ぶカタチの完璧さ。
ナイーブな表情に孤独な影。

完成されすぎてしまったロボットであるが故に、「トビオはそうじゃなかった」と生みの親である天馬博士(柄本明)に受け容れてもらえず、その哀しみと心の影が、孤高の道を行くストイックな未來くんにどこか重なるような気がして切なかったです。

未來くんの繰り出すパフォーマンスの高さはよくわかっているつもり。
未來くんが求めるアーティスティックな世界も心から応援し楽しみにしています。


けれど
あまり芸術を追求する方にばかり行ってしまわないで、時には私がいるような世俗な世界にも降りてきてほしいです。
「メタルマクベス」で未來くんが演じたマルカム王子はもちろん、元きよしくんも大好きなのだから。



にしても感想書くには時間経ちすぎ の地獄度 ふらふら (total 1382 わーい(嬉しい顔) vs 1386 ふらふら)
posted by スキップ at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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