
昨年観た第1弾「アンダーソン家の秘密」がとてもおもしろかったので、楽しみにしていました。
橋本さとしさんホームズ、一路真輝さんワトソン、コング桑田さんレストレード警部の3人は不動のキャスト。
ミュージカル
「シャーロック ホームズ2 -ブラッディ・ゲーム-」
脚本: キム・ウンジョン
作曲: ノ・ウソン 音楽: チェ・ジョンユン
演出: 板垣恭一
訳詞: 森雪之丞
上演台本: 斎藤栄作
出演: 橋本さとし 一路真輝 秋元才加 良知真次 竹下宏太郎 まりゑ
春風ひとみ コング桑田 別所哲也
2015年5月24日(日) 12:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階H列上手
ストーリー:
1888年のロンドン。5人の売春婦が変死体で発見されるという猟奇的な殺人事件の捜査をロンドン警視庁から依頼されたシャーロック・ホームズ(橋本さとし)は、「切り裂きジャック」と呼ばれた犯人に罠を仕掛けます。しかし、ホームズを嘲笑うかの様に新たな殺人事件が起こり、助手のワトソン(一路真輝)の懸命の助けも虚しく危機に陥って行くホームズ・・・。
この作品が「切り裂きジャック」を扱ったものだということは、当日舞台を観始めるまで知りませんでした(相変わらず全然予習していない)。
「切り裂きジャック」についてはぼんやり知っているという程度だったのですが、先月にTVで「切り裂きジャックの告白 ~刑事 犬養隼人~」というドラマをたまたま観ていて、日本の普通のミステリードラマではあったものの、図らずもいい予習になったよね(笑)。
一幕で切り裂きジャックが起こした殺人事件を一路さんワトソンが1件ずつ歌って説明していくのですが、かなり詳細で聴いていて気分悪くなりそう。
物語的にも、ジャックの狂気とも思える行動の向こうには、幼児虐待や人身売買といった何とも陰惨な背景があって、その重さに気も滅入りがちです。
あのリアリティは韓国ミュージカルならでは、なのでしょうか。曲も難曲揃いという印象ですが、さとしさん、一路さんはじめさすがの歌ウマさん揃いで、ソロもデュエットもコーラスも圧巻の迫力でした。
前週に「デス・ノート」を観たばかりでしたが、兵芸の音響のよさもあって、これくらいのキャパで観るのが好きだなぁと思った次第。
(ミュージカルであるなしにかかわらず、私が大バコ苦手というのもあります。)
ミステリーという意味では、前作もそうですが、キャスティングの時点で犯人わかっちゃうのが、仕方ないとはいえ難点かなぁ。
エドガーが切り裂きジャックなのでは?と思わせる振りもあったりしますが、そんなこと臭わされても、「犯人、べっしーなんでしょ?」という私の気持ちは揺らぎませんでしたから(←可愛気がない)。
ま、二幕冒頭で犯人明らかになる訳ですから、はじめから犯人探し=謎解きよりも心理劇の方に重点を置いているのかもしれません。
それでも、後半の畳み掛けるような展開と演出は、見どころたっぷり。
別所哲也さんを舞台で拝見するのは、多分、松たか子さんのキム目当てに観た「ミス・サイゴン」以来。調べたら2004年でした。11年も前なんだ

いささか恰幅良すぎかなという気がしないでもないですが、長身のさとしさんホームズに引けを取らない存在感はさすが。歌も聴かせてくれました。
クライブがただ敏腕刑事というだけでなく、野心があってホームズの手柄を自分のものにしようとする悪の香りも漂う人物とすることで、善人ではない→裏を返せば犯人でもない というミスリードが巧みで、上手い脚本だなぁと思いました。
そのクライブが掌中の珠のように大切にしている盲目の妹・マリアは秋元才加さん。
AKB時代は強気でテキパキしたイメージでしたので、儚げて天使のようなマリアの造形が意外な気がして、「へぇ~、こんな人だったんだ」と思いましたが、カーテンコールではイメージどおりのシャキシャキ女子でしたので、やはりあれは演技だったのですね。お見事。
歌声も綺麗でのびやか。ファルセットになると途端に弱くなるかな、という部分と、何かに夢中になる(歌だったり感情だったり)と目が見えているように感じられるところあたりに課題は残りますが、今後も楽しみな女優さんです。
そんなマリアを心から愛するエドガーは良知真次さん。
ひたすらマリアを守ろうとする懸命さが伝わる繊細なエドガーでした。歌うまいね。
舞台を拝見するのは初めてではないのに、ずーっと、「よしとも」さんだと思ってました。この日のカーテンコールで初めて「らち」だと知りました。ごめんなさ~い

この役はダブルキャストだったのですが、小西遼生さんのエドガーも観てみたかったです。
橋本さとしさんのホームズと一路真輝さんのワトソンはもうすっかりコンビとして観られるような安定感。今回どちらもソロの大曲が多かった印象ですが、お二人ともさすがの歌唱力で聴かせてくれました。
「ワトソンが女性」というのがこのミュージカルの特徴でもあるのですが、一路さんの元男役のキビキビした感じと女性らしさの“両性具有”感がこの役にぴったりハマっていると思います。
大千秋楽で、カーテンコールでは橋本さとしさんの進行で主要キャストが一人ずつご挨拶。
コングさんレストレード警部がホームズに本当にキスしちゃった話になって、(劇中で「ついに本当にやったね」とホームズが言ってました)、「本当は最後だからワソンにやれって言ったんだけど・・」と言うのを受けて、一路さんワトソンは
「別にさとしさんがイヤとかそういうのではなくて(笑)、物語の流れ上、あそこでワトソンがキスはないなと思って・・・ということで私はその代わりに」と妖怪ウォッチのゲラゲラボーダンス 踊ってくれました。
秋元才加さんは「冒頭シーンで今日ラチガーが私の手にキスしたんですよ~」と暴露していました。「DVDで確かめてください」とおっしゃっていたのですが、収録はこの日ではないことがわかって、「皆さんの心のシャッターに残して下さいっ!」とアセッて言い直すところが可愛かったな。
別所哲也さんは「血みどろ担当です」と(笑)。
「この作品を通じて、世の中の凄惨な事件が何故起こってしまったのか、そういったことも心に残ったらいいなと思います。僕ら役者はお客様の拍手で生きているような人間ですので、皆さんが笑顔で千秋楽を迎えてくださったことが本当にうれしいです。」
そして橋本さとしさん。
「僕 天パなんですけど、舞台の熱気で髪がどんどん膨らんで、東京の始めの方と明らかに大きさ違います」

「皆様の熱い息吹に包まれながら大千秋楽を迎えられたことは本当に幸せです。
僕たち役者は、ト書きに年代や場所が書いてあればそこに行って生きることができますが、今、僕はできることなら、2015年3月の稽古場に戻りたい。またもう一回この素敵なカンパニーで、稽古して飯食って、本番を迎え直したいです!」
最後はいつも開演前に組んでたという円陣をステージ上で再現。
客席も一緒に、と上手下手端のキャストは片手を客席に伸ばして、さとしさんの「シャーロックホームズッ」の掛け声に舞台客席一緒に「トゥー!!」で幕となりました。

役者さんたちの頭上に降ってきたのを客席に投げたりポーンと打ったりしてくれていて、私はそれほど前方席という訳でもなかったので届かないなぁと思っていたら、目の前にふわりと一つやってきました。
でもね。
赤・青・黄色・ピンクと色とりどりで、ハート型なんてのもあったのに、なぜにこの色?(爆)
そして次回の強敵はルパン・・・なのか? のごくらく地獄度



