2015年05月16日

じゃ 行きます! 星組 「黒豹の如く」

kurohyosenko.jpg


すべて終わってしまって今さら感ありありですが、星組公演 最初の3回を観た段階でざっと書いて以来、感想を書いていませんので、一応ライブ中継含めて16回観た総括を、まずはお芝居の方から。


宝塚歌劇星組公演
ミュージカル・プレイ 「黒豹の如く」
作: 柴田侑宏
演出・振付: 謝珠栄
出演: 柚希礼音  夢咲ねね  紅ゆずる  真風涼帆  万里柚美   十輝 いりす  
壱城あずさ 天寿光希  十碧れいや  麻央侑希  礼真琴  妃海風/英真なおき ほか



あらすじなどは最初に書いた感想に。

「ドラマチックでない」という初めて観た時に受けた印象は最後まで変わることはなく、正直なところ、「もう少し何とかならなかったのかな」という思いは残りました。
「あかねさす紫の花」「うたかたの恋」「激情」・・といった宝塚歌劇史に残る名作を書いていらした柴田侑宏先生の作品への期待値も大きすぎたかもしれません。

それでも、大劇場公演の始めあたりと終盤では役者さん一人ひとりの掘り下げも、物語の深みもずい分と増し、それが東京公演ではさらに深化して、「大人の物語」として結実したように感じました。
大きな時代の渦の中、個人の努力では抗えない流れの中で翻弄される人々の物語。

それに何と言っても「ちえねね」。
アントニオとカテリーナ。
無言で交わす視線の中に言葉にならない気持ちがあふれ出すよう。
柚希・夢咲のチカラワザで、この作品が感動とともに観られるよう底上げされた感じです。物語の構成、演出

冒頭は主人公 アントニオ・デ・オダリス大佐の祖先である海賊ソルが国王に強力して姫を助け出すシーン。
ショーアップされたダンスでこれは豪華なおまけみたいなものかな。
柚希さんソル、文句なくカッコいいムード

ここから1920年 バルセロナの戦勝記念パーティへの流れは好き。
音楽も、ズラリと並ぶ銃を持った兵士たちのダンスの振付も印象的です。

パーティ会場に到着するテイで主要人物が中央の階段から登場するあたりまではテンポよく進みます。
♪人の不幸は蜜の味~ からの3場面、ほぼ説明台詞ばかりが続くあたりが一番ツライところでしょうか。

「深くてしなやかで俊敏、ゆえに黒豹である」と真風くんラファエルに言葉で説明されるアントニオ。
実際に黒豹らしく活躍する場面はなくて、斜陽のスペイン海軍を憂い、自分探ししながら「もっと腰を据えろ!ちきしょう!」と自分を鼓舞しています。
終盤、晴れやかな顔でモロッコに旅立ちますが、あの自分探しはどこで解決したのかな?

・・・というように、柴田先生にしては人物の描き方が浅い印象。
まぁ、カテリーナとの愛が再燃して、海の男として輝いていた頃の自分を取り戻し、愛する人を守るために戦っていく、ということになるのでしょうかね。

ただ、さよなら公演として、柚希礼音という人、夢咲ねねという相手役、そして星組の皆さんとその別れを作中に投影し、人物に重ね合わせたということは見てとれました。

Seven Seas と名づけられたコロスが、いろいろな場面でそこにいる人物の心象風景をダンスで表現していて、あれはよかったな。


装置・衣裳

いかにも謝先生なテイストの舞台装置(大田創さん)。
2本の大きな角のようなものが舞台に常にあって、それが回転したり。

セルバンテス号やアラルコン伯爵の経営するクラブなどは少しリアルに作り込んであって、悪くはないですが、若干シンプル過ぎかなぁ。

衣装(有村淳さん)は基本的にはどれも好きです。
ただ、アントニオはじめ海軍のメンバーはほとんど軍服ばかりで、かつその軍服がベルばらみたいに華やかなものではないので、全体的に地味な印象かな。

淑女の皆さんのドレスも色、デザインともに好きでした。
カテリーナのドレスでは、カディスの祭りに行った時のグレーのドレスが一番お気に入り。
セルバンテス号でも着てましたが、あの白いファーいらないし(笑)。


楽曲

楽曲は歌詞とともにどれも印象的で、佳曲揃い。
知らず知らず口ずさんでいることも多い(ま、回数観てるから刷り込みも激しいわーい(嬉しい顔))。

最初に覚えたのは、バンデラス叔父さんが将校クラブでアントニオと歌う

♪ 怒り出すわけも 涙流しすぐに笑うわけも
 わからないけど 愛おしく思う女たち~

という歌。
この曲の、「神がつくり出した神秘のベールをまとい~」という部分の柚希さんの高音が大好き。


それから
アラルコンとアントニオが銀橋で対峙して歌う「変わりゆく世界」。

人にはそれぞれの 生き方があるはず
あらゆる価値が違うように       とアントニオが歌えば

時代遅れの思想 過ぎ去る過去の日に
しがみつき 何になるのか       と返すアラルコン

ここ、紅さんアラルコンが公演の後半、飛躍的に迫力を増したこともあって、
とても緊迫した応酬の場面になりました。
私がヒソカに「ひとり壁ドン」と呼んでいるこの後のアラルコンの♪もっともっ何か~ という「男として悔いなく生きる」とともに、紅さん歴代の名歌唱だと思います。


そしてやはり
アントニオとカテリーナが歌う「今再び」
♪生きる力なくした時 絶望の中でも あなたを待ち続け
悲しみ 喜びも切なさも 瞬く星になり 私を支えてくれた~ たらーっ(汗)


役者さんたち

柚希礼音さんのことは書いても書いても書ききれませんが、本当にすばらしかったです。
苦さを心に秘めた大人の男なのだけど、叔父さんの前で見せる少年っぽさとか、カテリーナの前で見せるこの上なくやさしい笑顔、一方でアラルコンに対する毅然とした態度、凛とした立ち姿・・・アントニオとしてというより、柚希礼音としての魅力があふれていました。

夢咲ねねさんのカテリーナは品よく美しく、時代に翻弄される受け身の女性でありながら心には一途な思いを秘めて・・こんな人だからアントニオはずっと想い続けていたんだなと感じられました。

ねねちゃん、大劇場公演の時から本当によく涙をこぼしていて、その涙を柚希さんアントニオがあの大きな手でぬぐって、そのまま頬を包み込んでキス・・という夢のようなシーンももう見ることはできないのねたらーっ(汗)

紅ゆずるさんアラルコン公爵は、楽曲のところにも書きましたが、公演の初旬と終盤では別の人物かと思うくらいスケール感が増していきました。
柚希さんが紅さんにかつてアドバイスしたという「悪役はもうひとつの正義」という言葉を思い出したな。

カテリーナとの云々をアルヴィラに邪魔されて、「チッ!」と舌打ちして醒めた目でにらみつけながらネクタイを緩めるシーンが大好きだったのですが、東京では舌打ちしなくなっちゃったねぇ。

そのアルヴィラは妃海風さん。
次期トップ娘役としては異色の色濃い役柄ですが、ソロも2曲あって、とてもしどころのある美味しい役でもあります。
さすが実力派の風ちゃんは熱演。歌も上手いなぁ。

アントニオの部下のスリーM 壱城あずささん、天寿光希さん、礼真琴さんはいつも3人で出てきて軽妙な印象でしたが、ラストでアントニオがモロッコへ旅立つ時、「君たちは俺のいない間、この国をしっかり守るんだ」と言われて、「私たちは」」「護りの」「プロフェッショナルで」「ありますっ!」3人が言うところが毎回涙なくして観られなかったことを告白しておきます。
特にこの場面の礼真琴さんの表情が何とも・・たらーっ(汗)


じゃ 行きます!

最初に観た時
「アントニオ・デ・オダリス大佐に敬礼!」
でどっと涙があふれて以来、このあたりは大体涙にくれている訳で(笑)。

「行ってきます」と凛とした敬礼で応えるアントニオ。
ひとり銀橋を渡り、誰もいなくなった舞台の高台から、本当に清々しいくらい晴れやかな笑顔を客席に向けて、「じゃ 行きます!」と言ってゆっくり背を向けるアントニオ。

あの後ろ姿を決して忘れることはないと思います。



観劇記録
宝塚大劇場2015年
2/7(土) 11:00am 2階2列上手
2/8(日) 3:00pm 2階12列センター
2/11(水) 11:00am 2階11列上手
2/14日(土) 11:00am 1階17列上手
2/22(土) 11:00am 1階9列センター
       3:00pm 1階13列センター
2/24(火) 1:00pm 1階6列センター
       6:00pm 1階12列下手(新人公演)
2/28(土) 3:00pm 2階2列センター
3/7(土) 11:00am 2階5列上手
3/8(日) 1:00pm 2階15列下手

東京宝塚劇場
4/12(日) 11:00am 2階4列センター
       3:30pm 2階10列上手
5/9(土) 11:00am 1階16列上手
      3:30pm  2階9列センター

ライブ中継 
5/10(日) 1:30pm  TOHOシネマズ日本橋 スクリーン7 G列センター



何度観てもさびしいものはさびしい のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1368 わーい(嬉しい顔) vs 1373 ふらふら)
posted by スキップ at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック