「エッグ」は第1回から数作を除いてほとんど観ているNODA・MAP公演の中でも特に好きな作品の一つ。
初演からわずか2年半。
ほぼオリジナルキャストで再演ということがうれしくもあり、驚きでもありました。
NODA・MAP第19回公演 「エッグ」
作・演出: 野田秀樹
音楽: 椎名林檎
美術: 堀尾幸男
照明: 小川幾雄
衣裳: ひびのこづえ
出演: 妻夫木聡 深津絵里 仲村トオル 秋山菜津子 大倉孝二 藤井隆 野田秀樹 橋爪功 ほか
2015年4月4日(土) 1:00pm シアターBRAVA! 1階H列上手
初演の感想はこちらに。
キャストがオリジナルなら、脚本や演出も同じですが、
時代が混沌と胡散臭さを増していく中、深化が感じられる舞台です。
たとえば1964年と1940年の東京オリンピックのミスリードや
阿倍比羅夫(妻夫木聡)の背番号137に込められた意味など、
初演の時「あっ!」と思ったギミックにはさすがにもう驚かないけれど、
前半の「エッグ」というスポーツの場面が、戦争の狂気へとくるりとドラスティックに裏返る様は何度観ても鮮やか。
初演の感想に「野田マジック」とタイトルをつけたのですが、まさに演劇の手品のようです。
前半に散りばめられた、計算しつくされた伏線(・・というのか?)を後半一気に回収しつつ
物語に込められた想いを広げてみせる劇的展開に改めて感じ入りました。初演の感想と重なってしまうのですが、
スポーツに対する熱狂やナショナリズムと戦争という狂気への高揚との相似。
世論を誘導する宣伝映画やツイッター(つぶやき)へのシニカルな目線。
扇動されやすく駆り立てられる大衆。
戦争の犠牲となって流浪する民。
ジェンダーへの問題提起。
過去の罪に蓋をして逃れようとする者への警鐘。
これらを決して説明的でも教訓的にでもなく私たちに「感じさせて」くれる野田さん。
やっぱり野田秀樹さん、天才。
野田さんと同じ時代に生きて、野田さんがつくり出す演劇をリアルで観る、体験できることの幸せを心から思います。
キャストは初演同様、全員適役熱演。
今回、人がいい農家の三男坊が訳もわからず利用された末、闇に葬られようとする阿倍比羅夫を演じた妻夫木聡さんの明るさの向こうの翳りが特に印象的でした。
「満州には、あまりにもたくさんの絶望がある。
だから満州の夕陽はあんなにも赤く大きい。
無念です 無念です 無念です・・・。」
という阿倍の言葉がより一層切なく胸に響きました。
あの狂気の戦争から70年。
歴史は繰り返され、人間もまた同じ過ちを繰り返しています。
そんな愚かさを見つめながら、赤い夕陽は今日も大地を照らして沈んでいくのでしょう。
会場には舞台装置の模型が。
初演の時にもありましたが、こうしてセットを前方からばかりでなく
上からも見られるのは貴重な機会です。
苺イチエは一期一会 のごくらく度 (total 1355 vs 1356 )
2015年04月14日
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
この記事へのトラックバック