スキップ的に当たりハズレが激しい岩松了さん。
この作品を観ようと思ったのは、大人計画を離れて“一役者”として舞台に立つ宮藤官九郎さんが観てみたかったから。
一昨年 「断色」で観た麻生久美子さんも印象的でしたので、再見を楽しみにしていました。
M&O playsプロデュース 「結びの庭」
作・演出: 岩松了
出演: 宮藤官九郎 麻生久美子 太賀 安藤玉恵
岩松了
2015年3月28日(土) 1:00pm シアター・ドラマシティ
3列センター
弁護士・水島慎一郎(宮藤官九郎)は、経済界の大物・来宮信介の一人娘 来宮瞳子(麻生久美子)にかかった殺人容疑事件の弁護を担当し、無実へと導いたことがきっかけで彼女と結婚。
二人は緑の木々が美しい庭のある洋館で、家政婦の丸尾(安藤玉恵)、水島の秘書の近藤(太賀)たちに支えられて一見穏やかな暮らしをしていました。
結婚一周年が過ぎたある日、末次(岩松了)という男が現れ・・・。
何もない舞台で丸尾さんのモノローグから始まります。
ここから二人の住む洋館と庭が現れるセットチェンジがとても好き。一気に惹き込まれました。
ちょっとレトロモダンでシックな雰囲気の作りこんだ洋館。緑におおわれた庭。
この二つが場面に応じて回り舞台で行き来するところもよかったです(美術: 二村周作)。
ストーリー的には、サスペンスであり心理劇であり愛情物語でもあるという感じ。
岩松さんの作品は、一見平和な日常の中にどこか居心地の悪さというか、ある種の不穏さみたいなものがあって、それがじわじわと澱のように沈殿していく・・・というイメージですが、この作品はワタシ的には比較的わかりやすかったかな。もちろん自分の理解が正しいとして、ですが。瞳子は本当に殺人を犯したのか。
そのことを慎一郎は知っていたのか。
慎一郎が知っていることを瞳子は気づいていたのか。
という問いに対して私の感じた答えはすべてYESです。
何と言ったか明かされない瞳子の「寝言」。
洗濯物を庭に干したいと執拗にこだわる瞳子。
慎一郎が見た夢なのか現実なのか曖昧な階段の幻覚?シーン。
一つひとつが破綻を予告しているよう。
瞳子と自分の名誉を守るために凶行に及んだ慎一郎(と近藤)。
そのことを知って、意外な方法で彼を守る瞳子。
すべてを呑み込んで瞳子の指示に従う丸尾。
犯した罪の重圧に心を蝕まれていく近藤。
ラスト。
冒頭と同じように何もない舞台で、
二人きりで幸せそうに微笑み合う慎一郎と瞳子。
慎一郎は瞳子を殺人の罪から、瞳子は慎一郎を殺人の罪から、
それぞれ相手に気づかれないように逃れさせて、その罪と「助けた」という意識を共有することで二人の愛情はより深まったように見えます。
そして、キスしようとして、あたりを見回し
「誰かが見てる!」
破滅がヒタヒタと近づいてくるようなエンディングでした。
エリート弁護士という珍しい役柄も余裕でこなす宮藤さん。
美しくエキセントリックで、資産家の令嬢の傲慢さも併せ持つ麻生さん。
ストーリーテラーを兼ね、ユルい笑いの部分を担いながら最後は凄味を見せた安藤さん。
いかにもな等身大の若者を切なく描出した太賀くん。
そして、こんな胡散臭い役やらせたら天下一品の岩松さん。
役者さんは皆よかったです。
中でも、舞台で拝見するのは多分初めての安藤さんは、「あまちゃんのしおりさん役」ということぐらいしか存じあげませんでしたので
その自在な演技にうれしい驚きだったな。
みんなあの庭から逃れられずに生きていくのかな のごくらく地獄度 (total 1347 vs 1349 )
2015年03月31日
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