南座三月花形歌舞伎 午後の部のニ演目はどちらも花形七人総出演。
はなかなか観に行く時間が取れず、平日に仕事休んで行くしかない→どうせ休むなら千穐楽にしましょう(笑)という訳で千穐楽に拝見しました。
松竹創業120周年
三月花形歌舞伎 午後の部
2015年3月27日(金) 3:30pm 南座 1階1列下手
一、弁天娘女男白浪
浜松屋見世先より
稲瀬川勢揃いまで
出演: 尾上松也 坂東巳之助 中村隼人 中村米吉 嵐橘三郎 中村種之助
尾上右近 中村歌昇 ほか
午前の部の「鳴神」でも感じましたが、松也くんは役がつかない時でも精進を重ねてきた結果が出ていると思います。
もちろん足りない部分は多々ありますが、初役でこんな大役を昼夜勤め、さらに座頭として若い一座を率いるのは心身ともに大変なプレッシャーだったことでしょう。
それをものの見事にやってのけた、という観があります。
それだけに喉の不調が返す返すも残念(繰り返しになりますが、一番悔しいのはご本人だと思います)。
元々よく通る声の持ち主で、立役、女方の声の使い分けもできる人。
なのに、弁天小僧で、武家のお嬢様として花道を出てくるところから声がかなり苦しくかすれていて、いかにも無理している感じ。
だから、正体が露見して声もスパッと男声になる落差があまり感じられず、面白さ半減といったところでした。
松也くんの弁天を観ていて、今でこそ押しも押されもせぬ立役ですが、ほんの数年前まで女方メインで活躍していたことを懐かしく思い出しました。
私が印象に残ってるのはこちら。(松也くん、大きすぎ、たくましすぎと書いてる

ただ、弁天小僧菊之助としてはもう少し不良少年っぽい方が個人的には好み。
南郷力丸の巳之助くんは声は朗々、松也くん弁天とのコンビの息も上々で、花道の「坊主持ち」の引込みも達者。楽しかったです。
この演目を花形が演じるにあたって一番の難役は日本駄右衛門ではないかと思っているのですが、その役に挑んだのは歌昇くん。
若いし、小柄なので少し不安だったのですが、とても落ち着いていて、日本駄右衛門の不敵な雰囲気もよく出ていたと思います。
米吉くんの宗之助は品よくお行儀よく、おっとりとしていていかにも大店の若旦那という佇まい。黙って座っている姿も綺麗。
種之助くんの鳶頭は江戸前で威勢もよかったけど、弁天・力丸連合軍にちょっと押され気味だったかなぁ。
橘三郎さんの浜松屋幸兵衛さんがさすがの存在感で、舞台がとても落ち着く感じがしました。
「稲瀬川勢揃い」は、五人男皆さん初々しくも凛々しくお勤めで眼福。
中でも、尾上右近くんの赤星十三郎が両性具有といった雰囲気の妖しい美しさで、紅いとさかの尾長鶏が描かれた着物もよくお似合いで印象的でした。
右近くん、チャンスがあれば弁天小僧も観てみたいです。
二、闇梅百物語
大名邸広間の場
葛西領源兵衛堀の場
廓裏田圃の場
枯野原の場
庭中花盛りの場
これ、初めて観たのですがとても楽しかった

大勢の人が点けておいた百本の灯火を一つひとつ消しながら百種の怪談噺に興じるという「百物語」。
百本目の灯りを消してはならず、すべて消えて真っ暗になったときに怪異が起こるとされていました。
ある大名屋敷で「百物語」が行われ、最後の灯火を小姓の白梅が消すことになります。白梅が恐る恐る蝋燭を消すと・・・。
まず、白梅さん(右近)に百本目の蝋燭を消す役を押し付ける先輩腰元・菊三呂さんの迫力あるコワいお顔に爆笑。
「人の不幸は蜜の味・・」って言ってくれますね。
白梅が蝋燭を消した後から起こるあれこれが舞踊で綴られます。
特に他愛もない内容なのですが、場面が次々変わって色んなキャラクターが登場して飽きることがありません。
記憶をたどると、
・右近くん白梅 → のっぺらぼう
・隼人くん河童 vs 歌昇くん狸 巳之助くん傘一本足がレフェリー(笑)
・米吉くん新造・右近くん雪女郎
・種之助くん骸骨(ただし踊っている時は誰かわからず)
・種之助くん 読売 → 白狐
・松也くん大内義弘の押し戻し
・全員勢揃い
という流れだったかしら。
まずは右近くんの美しさ。
初々しい白梅も、妖しい雪女郎も、目が惹きつけられます。
元々踊りの達者な人ですが、上背もあるのでスケール感があってシャープでとても華やか。
一緒に踊った新造の米吉くんはふわんと可愛らしく、同い年で仲良しというお二人ですが、持ち味がとても違っていて、切磋琢磨していくであろうこれからも楽しみです。
それからイケメン3人の河童・狸・傘ね。
ご覧になった方々が舞台写真で「河童買った」「狸買った」・・とツイートしていらした意味がよくわかりました(笑)。
3人ともよくあれだけつくり込んだなという扮装だったのですが、中でもエキセントリックな巳之助くん傘一本足に爆笑。
「シャーッ!」って叫んだり、仕草の一つひとつがおかしかったです。
片足一本でタップみたいな踊り、技量も相当なものと思いました。
歌昇くん狸と隼人くん河童が花道七三でいろいろやっている時、舞台中央で宙吊りになった巳之助くん傘が髪振り乱して小芝居しているのでどちらも目が離せず忙しかったです。
そんなこんなを最後に全部持って行っちゃったのが種之助くん白狐。
綺麗な側転も見せた身体能力の高さはもちろん、踊りのキレ、間、そしてなんとも言えぬ愛嬌、可愛らしさは天性のものでしょう。
一つひとつキマるたびに客席は拍手喝采。
激しい踊りで汗だくで、髪がおでこに張り付いちゃったのですが、最後一瞬後ろ向いて向き直った時には綺麗になっていて、もらった宝珠を右手に掲げてちょっとドヤ顔でうれしそうに見得を切る白狐さんの可愛いことこの上なし。
それから、これまでそんなこと思ったことありませんでしたが、面差しが又五郎さんに似ていると感じました。

千穐楽の舞台。
拍手が鳴りやまずカーテンコールありました。
幕が開くと七人全員拵えのまま舞台に正座して両手をついて上手下手中央に一礼。
言葉はなかったけれど、七人とも凛とした表情。
種之助くんの達成感たっぷりの笑顔が印象的でした。
千穐楽の米吉くんのブログにあるように、
「まだまだ、青二才」で「 身の丈に合わないお役を勤めて」いるけれど、
「だからこそ、今月のこの経験を必ず糧として進んでいかなくてはなりません」。
七人みんなが、今月のこの経験を次に活かしてくれると信じています。
そんな気持ちを持っている彼らだから、これからも本当に楽しみ。
若さってすばらしいな。

「松ちゃんパフェ」
尾上松也監修による生クリームと抹茶をメインにしたパフェですと。
数量限定ということでしたが、幕間にフツーに買えました。
右の茶色い板のようなものは八つ橋です。京都らしい(?)
そしてフツーにおいしかったです(爆) のごくらく度


