2015年03月28日

若春爛漫 「三月花形歌舞伎」 午前の部

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三月南座は、尾上松也くんを中心に、新春浅草歌舞伎のメンバーから中村児太郎くんが抜けて尾上右近くんが加わった松也くん以外全員平成生まれという超若手による花形歌舞伎。
客席にも若いお嬢さんの姿が目立ちましたが、古都京都で、全員が江戸の役者さんというアウェイ感?をもろともせず、若さほとばしる熱い舞台を見せてくれています。

松竹創業120周年  
三月花形歌舞伎 午前の部
2015年3月22日(日) 11:00am  南座 1階6列センター

一、歌舞伎十八番の内 「矢の根」
出演: 中村歌昇  中村隼人  中村種之助 ほか


曽我もの。
曽我五郎(歌昇)が父の敵 工藤祐経を討つために大きな矢の根を研いでいると、大薩摩文太夫(隼人)が年始のあいさつに訪れます。五郎は初夢によい夢をみようと、太夫が祝儀に持参した宝船の絵を枕の下に敷き、うたた寝します。すると夢に兄の十郎(種之助)が現れ、工藤に捕えられていると助けを求めます。飛び起きた五郎は・・・。

市川宗家のお家芸である荒事、しかも歌舞伎の様式美にあふれた「矢の根」を、経験浅い若手ばかりでやるのはかなりハードルが高かったのではないかと拝察いたしますが、果敢に挑戦する意気込みやよし。

隈取も鮮やかな曽我五郎は、立っているだけで大きさや、際立つような存在感を必要とする役だと思いますが、そのあたりはさすがに一朝一夕にという訳にはいかないものの、指の先まで力がみなぎっているような躍動感あふれる五郎をまさに全身全霊で見せてくれた歌昇くんに拍手。
端正なお顔に隈取がよく映え、一つひとつの見得もピタリと決まります。
決して上背がある方ではないのに、装束に負けない気迫が漲っていました。文太夫と十郎のお二人は、まだ役をなぞるのに精一杯で隼人くん、種之助くんが全面に出てる感じ。これからに期待です。

兄の十郎を助けに馬に乗って駆け出す五郎。
かなり大きな馬にひらりと飛び乗ったところでは客席から少しどよめきが。
「ハイヤーッ!」という掛け声とともに大根片手に花道を引っ込んでいく様は博多人形のように勇壮でした。
鳥屋口では馬は膝を折り、馬上の歌昇くんも馬の背に突っ伏していて大変そうでしたが。


二、歌舞伎十八番の内  「鳴神」
出演: 尾上松也  中村米吉 ほか


歌舞伎十八番がニ演目続きます。
朝廷への恨みから竜神を滝壺に封じ込め、雨を降らないようにした鳴神上人(松也)。
日照り続きに苦しむ人々。朝廷は、宮中第一の美女とうたわれている雲の絶間姫(米吉)を、上人のもとに遣わし、女性の色香で上人を堕落させ、その隙に竜神を天に飛び去らせ、雨を降らせようと考えました・・・。

このブログには何度も書いていますが、雲の絶間姫は私が歌舞伎でやりたい女方 No.1
ただ綺麗なお姫様というばかりでなく、使命を背負ったスナイパーというところがカッコいい。
この大好きな役に、これまた大のお気に入りの米吉くんが挑むとあって、今回の花形歌舞伎で一番楽しみにしていた演目です。

その米吉くんの絶間姫。
美しさ、可愛らしさ、色っぽさは申し分なく、あれなら上人もイチコロだわね、と(笑)。
台詞は元々声もよく達者な人ですが、教わった通り、一つひとつ丁寧にお勤めで長台詞もしっかり聴かせていました。
時折「時蔵さんの絶間姫に似てるな」と感じたのですが、なるほど、時蔵さんに教えていただいたのだとか。

とはいうものの、若い米吉くんの絶間姫はどこか現代っ子ふう。
鳴神上人の様子を伺って、ときどき「ふふふん」と悪い目つき(笑)することがあって、ちょっと二重人格のようで面白かったです。「あ、こんな娘、いそう」という感じ。
でもお姫様としての品は失っていないし、上人が酔いつぶれてしなった後、ひとり正体を現して詫びるところ、注連縄を断ち切った後、上人に心を残しつつ必死に花道を去っていくところ、お見事でした。

意外と言っては失礼ながら、松也くんの鳴神上人もよかったです。
喉を痛めていて声が本調子でないのは残念(多分ご本人が一番悔しいでしょう)でしたが、高潔な心を持つ生真面目な高僧ながら、色香に惑ってしまう隙も感じさせて。
絶間姫の色話を身を乗り出して聴いているところ、可愛いかったな。

怒りでぶっ返った後の上人の数々の型はこれまでの精進の成果が表れている感じ。
どの型もぴたりとキマッていて、花道の引っ込みは迫力ありました。

それにしてもこの二人の並びは本当に美しくて眼福です。
絶間姫の胸元に手を入れる鳴神上人のツーショット写真、買っちゃったもんね~揺れるハート

そして、忘れちゃならない白雲坊・黒雲坊。
番附を買わなかったから確信持てないのですが、中村又之助さんと澤村國矢さんかな。
この白雲坊・黒雲坊が達者に、それも決して出過ぎずいい塩梅で勤めてくれるのでこの舞台がよりおもしろくなるのだと思います。


三、流星
出演: 坂東巳之助  中村隼人  尾上右近


七夕の夜、牽牛(隼人)と織女(右近)は年に一度、この夜にしか会うことができません。そこに流星(巳之助)が、雷夫婦が喧嘩を始めたと報告にやってきて・・・。


隼人くん牽牛と右近くん織女は並びも美しく品がよくて、凛としていてお雛さまのようでした。
右近くんの流れるような踊りは本当に綺麗。

・・・と見とれているうちに花道から巳之助くん流星登場。
鳥屋を飛び出してきた巳之助くんの佇まいや所作が驚くほど三津五郎さんに似ていて目頭が熱くなりました。

大和屋さんの型なのかな。
面を使わず、角のついた輪を色々変えて雷夫婦と子雷、姑雷の四役を踊り分けます。
これが本当に達者で、夫婦喧嘩や、子ども、仲裁に入る姑をのびのびと楽しそうに、そしてコミカルに踊っていらして、客席も拍手喝采でした。



三津五郎さん 空の上でご覧になっているかな のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1345 わーい(嬉しい顔) vs 1347 ふらふら)
posted by スキップ at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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