2015年02月20日

我ら真田十勇士 時の流れに逆らい 義を貫く者なりっ 「真田十勇士」

sanada2015.jpg2013年から14年にかけて上演された舞台の再演。
この再演が発表された時、「早っ!」と思いました。
初演は観ていなくて、その理由の一つが同じ年に上演されたマキノノゾミさん脚本・中村勘九郎さん主演の「真田十勇士」の方を選んだというのがあるのですが、その作品がワタシ的にはいささかビミョーだっということもあり、「中島かずきさん脚本の方を観ればよかった」という忸怩たる思いがくすぶり続けていて、今回リベンジと相成りました。


「真田十勇士」
脚本:  中島かずき
演出:  宮田慶子
音楽:  井上鑑 feat.吉田兄弟
主題歌:  中島みゆき  「月はそこにいる」
出演:  上川隆也  柳下大  黒川芽以  葛山信吾  山口馬木也  松田賢二  渡部秀  相馬圭祐  小須田康人  粟根まこと  鈴木健介  吉田メタル  後藤光利  佐藤銀平  玉置玲央  三津谷亮  賀来千香子  里見浩太朗 ほか

2015年2月7日(土) 6:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階6列上手


負けるとわかっている徳川との戦いに挑む真田幸村(上川隆也)が言い放つ
「我ら真田十勇士 時の流れに逆らい 義を貫く者なりっ!」

くぅ~っ。
そーよね、そーよねー、真田十勇士ってこうでなくちゃね、という舞台でした。

私はナニワの人間なので関ヶ原はもちろん西軍。
大阪冬の陣、夏の陣も豊臣方で、心情的にはアンチ家康(笑)。
負けるとわかっていても豊臣を見捨てなかった真田幸村はわれらがヒーロー。
でもこの「真田十勇士」は、家康=悪者というステレオタイプな描き方ではなく、時に幸村をも凌駕する度量の人物として揺るぎなく存在しているところがよかったです。
それをわかっていてなお、義を貫いて闘いを挑むのが真田幸村のカタルシスな訳で。マキノさんの「真田十勇士」の感想にも書いたのですが、滅び行く豊臣と真田を描く時、作家さんはどうしても家康に一矢報いたいらしく、ドラマでも舞台でも「実は秀頼が生き延びていた」ということに行き着くことが多いように思います。
それも家康の知らないところで。

一方この物語では、生き延びるのは猿飛佐助(柳下大)というのが新鮮。

・佐助は実は秀頼の腹違いの兄で、彼が生き延びたことによって豊臣の血も途絶えなかった
・佐助を取り逃がしたことを家康も知っている
・佐助は服部半蔵配下の忍 花風(俗名 はな)と一緒に船で海外に逃亡
  ↓
・260年以上続いた徳川幕府が崩壊するきっかけとなったのはペリーの黒船
・その黒船の艦名は「サスケハナ号」(←史実 名前の由来はNY州に実在する川の名前)
  ↑
・そのサスケハナ川のあたりに、200年以上前、若い日本人の夫婦がやってきて住みついたという風聞

というプロット。
その虚実綯い交ぜぶりが実に絶妙。
中島かずきさん、さすがの作劇です。

ただ。

個人的な好みで言うと、この結末はいささか甘さに勝ちすぎるかな。
佐助はいくらまわりに「お前は生き延びろ」と言われたとしても、やはり戻って来て一緒に戦うことで「十勇士の物語」として完結するのではないかと思います。
「弟の秀頼は自分が命を賭してでも守る」と固く心に誓っていた佐助の翻意が軽過ぎるような気がしないでもありません。まして女連れだし(笑)。

それから、クライマックスの歌。
中島みゆきさんの楽曲はすばらしいし作品の雰囲気にも合っているとは思いますが、歌詞のある曲はどうしてもそのイメージが強いですし、何より、あの超絶カッコいい殺陣のシーンで、
たとえば空を切る刀の音、刀同士がぶつかり合う音、踏みしめる足音、思わず発してしまう声、息づかい・・・
そういったものも殺陣の大切な要素で、それらがあの大音量の曲の中に埋没してしまうのはいかにも残念です。

八百屋というよりもはや坂道というレベルの急こう配の舞台装置。
左右にもスロープが組合されていたりして、そこを服部半蔵(山口馬木也)がジャンプした時は「馬木也やるじゃん!」と思いましたよね。


上川隆也さんは本当に舞台の芯に立つのが似合う役者さんです。
華のある立ち姿も迫力ある声も他を圧する殺陣も。
空間を支配する力、観客の耳目を惹きつける吸引力がハンパないです。
そして、滅び行く悲劇の武将が本当によくお似合い。

あの坂道であんなに激しい殺陣ができるなんて。
近くの席の年配のご夫婦が「熱演やったな」「熱演やったな」と何度もおっしゃっていました。

あまり事前にキャストとか確認しない方なので、山口馬木也さんが出て来た時には目が揺れるハートになりました。
さすがに時代劇で活躍されているだけあって、殺陣を含めて所作がとても綺麗。声もステキだったな。
何とも言えぬ負の翳りと色っぽさがあるのよね。
上川さんはもちろんのこと、霧隠才蔵の葛山信吾さんもとてもステキでしたが、馬木也さんが別格に色っぽかったです。
半蔵 vs 才蔵の、いかにも「命の取り合い」といった感の殺陣もすばらしかったな。

才蔵といえばあの霧隠れの術、ステキでした~。

もう一人、すべての事情を知りながら佐助を育てた元・忍 由利鎌之助の松田賢二さん。
この中年(笑)色男3人がとても好みで、カーテンコールには3人並んで出て来たので目のやり場に困りました(日本語おかしい)。

そして里見浩太朗さんです。
そんなに動く訳でも大きな声という訳でもないのに場を支配する圧倒的な存在感。
派手な殺陣はされませんが、刀身の抜き差しがすごく速くて美しい。

カーテンコールラストの里見浩太朗さん。
賀来千香子さんの手をとってホリゾントに向かってはけながら、上川さんの真似してちょっとジャンプしてらっしゃいました。お茶目♪


幸村さん、とてもついこの間までゴチで学生服着てた人とは思えません のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1330 わーい(嬉しい顔) vs 1331 ふらふら)
posted by スキップ at 23:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、上川版 真田十勇士、観られたんですね!良かったでしょ?
勘九郎版は、自分もちょっと微妙でしたね。しかし、あれのナレーションは、三津五郎さんがやっていましたね。残念ですが。
Posted by ケンボウ at 2015年02月25日 14:26
♪ケンボウさま

はい!
今回はちゃんと観ました。
「正統派 真田十勇士」という感じでとてもよかったです。

そうでした。
あちらのナレーションは三津五郎さんでした。
東京の初日にはお元気に劇場にいらしていたと聞いていましたのに・・・。
Posted by スキップ at 2015年02月25日 23:20
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