
次代のトップスター候補の一人と目されている月組の珠城りょうさん。バウホール二度目の主演です。
宝塚歌劇月組公演
バウ・ミュージカル
「Bandito -義賊 サルヴァトーレ・ジュリアーノ-」
作・演出: 大野拓史
出演: 珠城りょう 早乙女わかば 宇月颯 飛鳥裕
光月るう 咲希あかね 千海華蘭 真愛涼歌 朝美絢 輝月ゆう/一樹千尋 ほか
2015年1月31日(土) 2:30pm 宝塚バウホール 7列下手
第二次世界大戦後、連合国軍の占領下にあるシチリア島。
ホテルのクラブでダンサーとして働いていたジュリアーノ(珠城りょう)は身に覚えのない罪でマフィアに犯人に仕立てられ、憲兵を撃って傷を負いながらも逃亡しますが、ランペドゥーザ公爵(一樹千尋)や修道女アマーリア(早乙女わかば)に助けられ逃げのびます。
故郷の山岳地帯に落ち延びたジュリアーノは、やがて群盗のリーダーに祭り上げられ、誰からも一目置かれる存在となっていきます・・・。
タイトルの「Bandito」はイタリア語で「山賊」。
私は全く知らなかったのですが、サルヴァトーレ・ジュリアーノは第二次世界大戦後の混乱期のイタリアで山賊のリーダーとして名をはせ、イタリアでは知らない人はいないくらいの伝説的人物なのだとか。
ごく普通の青年が運命の糸に操られ、自分の意思とは別のところで義賊の英雄としてまつりあげられていく半生を縦軸に、仲間たちとの友情、裏切り、アマーリアとの恋、敵対するマフィアとの確執など盛りだくさんな内容がうまく物語の中に織り込まれ、とてもおもしろく拝見しました。中でも、一幕終わりは特に印象的。
狭い社会のシシリーに嫌気がさし、故郷を離れようとするジュリアーノ。
兄弟のように育った従兄ロンバルド(輝月ゆうま)は
「山賊団は俺が面倒を見るよ。だからお前は行ってもいいよ」と言います。
「またどこかで会えたら、その時は…謝りたいことがあるんだ」とも。
多分、昔、ジュリアーノを恋人と引き離してしまったことをずっと後悔していたのかな。
ジュリアーノに背を向け「あばよ、ジュリアーノ」と手を振るロンバルド。
サイドカーつきのバイクをくるりと方向転換させたジュリアーノ。
「行くぞ、ロンバルド。早く乗れよ」
そしてサイドカーにロンバルドを乗せ、走り出すバイク。
・・・これ、男役二人のシーンとしては有数の名場面になる予感。
それとともに、もしあの時、ロンバルドの思いにほだされずにジュリアーノがシシリーを出て行っていたら、あの後の悲劇も起こらなかったかもしれないと思うと、いかにも切なさの余韻が残る幕切れでした。

とにかくガタイのよさが印象的で、プロローグで着ていた肩パットパァーンと入ったロングコートの似合いっぷりは宝塚一ではないかしら。
プログラム裏表紙のこれね→
ジュリアーノは口数少なくて自分の気持ちを言葉にも表情にもあまり表わさないのですが、これまでの珠城さんの持ち味とは違っているんじゃないかと思えるクールさがピタリとハマっていました。
母の形見の指輪を返してほしいと言うアマーリアに、「何か貰わないとな・・たとえば・・・一曲踊るとか」と無表情に言い放つあたり、クラクラしました。
早乙女わかばさんのアマーリアもとてもよかったです。
わかばちゃんの華のある美しさは誰もが認めるところですが、少し特徴のある台詞まわしも、この役には合っていたと思いますし、課題の歌もかなり向上したように聞えました。
珠城さんとは同期生ということで雰囲気も息もよく合っていました。
影を秘めたマフィア・ヴィトーの宇月颯さん、シャープな美貌に髭も映えたピショッタの朝美絢さん、ジュリアーノに向ける視線が温かいロンバルドの輝月ゆうまさん、敵役を一手に引き受けたアントニオの光月るうさん、軽妙な新聞記者マイケルの千海華蘭さんなど月組若手男役キラ星のごとし。
そして忘れちゃならないランぺドゥーザ公爵の一樹千尋さん。
飄々としていながら肝が据わっていて、いつもリベラルに冷静に物事を達観しているこの貴族のおじさまが実に魅力的でした。
ジュリアーノもきっと彼のことが心の底では好きで、だから人質だったのに自ら運転するサイドカーに乗せて送ってあげたりしたんだろうな。
フィナーレは紫のスーツで男役のカッコいいダンスの後、珠城さん&わかばちゃんのデュエダン。
これが本当にステキでした。
ここでも珠城さんのガタイのよさが際立っていました。わかばちゃんも娘役としてはそれほど小柄ではないですが、ほんとすっぽり包まれている感ハンパなかったです。
そしてあの超高速多回転リフト!
しかも片手でスタートしていました。
たまきち、おそるべし。
ラスト、出演者が舞台下手手前から上手奥へとナナメに整列して「?」と思っていたら、下手袖から珠城さんバイクに乗って登場とか、最後までヤラレました。
珠城りょうに男役のガタイの大切さを学ぶ のごくらく度


