
若手役者さんの登竜門とされる「新春浅草歌舞伎」。
35回目を迎えた今年はメンバーがガラリと若返って新装開店という趣き。
座頭の尾上松也くん筆頭に全員20代(松也くんはお誕生日迎えて30歳になっちゃったけど)。
しかも松也くん以外は全員平成生まれ。いやはや。
松竹さんもかなりプロモーションにリキ入っていて12月は役者さんたちのTV出演多かったし、このポスターと同じテーマ色を役者さんに割り振って、初日の鏡開きにはそのカラーのネクタイを用意したのだとか。
松竹創業120周年 新春浅草歌舞伎 第一部
2015年1月24日(土) 11:00am 浅草公会堂 1階い列センター
お年玉〈年始ご挨拶〉出演: 坂東巳之助 中村種之助
幕が上がると紋付き袴で正座して頭を下げたままのお二人。
よいお声で口上述べた後、一転してマイク握ってくだけた調子になる巳之助くん。
この二人の組合せはこの日が最後。
二人とも踊りの演目ばかりで台詞がほとんどないので(巳之助くんは五段目にも出てるけど台詞は「ごじゅう~りょう~」だけだし、って笑)ほとんどないのでここで喋るのが楽しみでたくさんしゃべりたいのですって。
そういえば1階ロビーに飾ってあったチャリティ羽子板。
巳之助くんのは「五十両」で笑ってしまった。
主に演目の説明をしてくださったのですが、「春調娘七種」は曽我もの・・お正月に欠かせない演目で、「今で言うと箱根駅伝みたいなものです」とゴーインに持っていく巳之助くん。
「わたくし、青山学院出身です」と右手挙げてちょっぴりどや顔w 客席からは拍手。お正月早々、あんな嬉しかったことはなかったのだそうです。
ちなみに独楽売は今で言うとジャパネットたかたですと種之助くん。
「一條大蔵譚」は今回 檜垣の場がないということで、種之助くんが大蔵卿のつくり阿呆をやってくれました。お兄さんとリレーですね。
二人が出演する「独楽売」は60年ぶりの上演ということですが、巳之助くんが最初に説明したのに種之助くんが「この演目は何と言っても60年ぶりの・・」と言って、「それ、さっきワタシ言いましたよ」と巳之助くんにツッコまれてました。
「ねぇ、言いましたよね?」と客席にも同意を求める巳之助くんS(笑)。
とはいうものの、3年前に観た時は種之助くん一人でご挨拶で、いかにも緊張して生真面目な上に心細そうだったことを思うと、ずい分こなれたよね、とその成長ぶりを喜ぶ親戚のおばさんの心境でした。
一、春調娘七種
出演: 尾上松也 中村児太郎 中村隼人
松也くんの曽我五郎に隼人くんの十郎、児太郎くんの静という顔合せ。
紅梅と白梅の襖が開けられると背景に富士山、衣装も初春らしく華やかで、若いビジュアル系(笑)の3人が並ぶと一幅の絵のようでした。
これまでお父様の錦之助さんに似ていると思ったことあまりなかった隼人くんが、この拵えをするととてもよく似ていらして驚きました。
踊りも教わったことをきちんきちんとやっている感じで観ていて清々しかったです。
特に松也くんの五郎は力強く、堂々。
長唄の歌詞(というのか)に「せり なずな ごぎょう はこべら・・・」と七草が入っていて楽しかったな。
二、一條大蔵譚 奥殿
出演: 中村歌昇 中村米吉 中村吉之助 中村芝のぶ 中村児太郎 尾上松也 ほか
巳之助くん曰く「大人の事情で」奥殿のみの上演。
歌昇くんの大蔵卿を楽しみにしていたのですが、やはり檜垣の場がないといささか辛いかなぁという印象。
歌昇くんは元々台詞の口跡もよく、キビキビと気持ちよい演技をする人なので、大蔵卿の芯の強さや凛々しさはよく表現できていたと思います。
熱演だし、吉右衛門さんに教えを乞うて、相当お稽古したのだろうなというところも見えました。
つくり阿呆の時のやわらかさ、くるくる変わるメリハリの面白さや、大蔵卿の大きさ、品のよさはもうひとがんばりといったところでしょうか。
いつか檜垣から通してやる時、さらに大きな大蔵卿を見せてくれるのを楽しみに待ちたいと思います。
何とも愛らしい米吉くんの常磐御前も、血気にはやる松也くん鬼次郎とその妻お京の児太郎くんのコンビネーションもよかったですが、この中に入るとさすがに芝のぶさんの鳴瀬の上手さ、安定感が際立っていました。声もよく通るし、女方としての所作が若い二人とは明らかに違っていました。しかもビジュアルは花形と十分張り合える(笑)可愛らしさだし。
幕が下りてもしばらく大蔵卿の高らかな笑い声が響いていました。
歌昇くん、最後まで熱演。
三、独楽売
出演: 坂東巳之助 中村米吉 中村鶴松 中村梅丸 中村芝のぶ 中村種之助 ほか
楽しかった

幕開きいきなり米吉くん・芝のぶさん・鶴松くん・梅丸くんのキレイどころ4人が並ぶ破壊力ね(笑)。
巳之助くん、つまり大和屋さんにとっては大切な演目。
お父様譲りのキレのある舞いを見せてくれました。
対する種之助くんがまた軽やかに舞い、のびやかに見得を切って踊り巧者ぶりを発揮。
暴れ獅子舞が出てきたり、巳之助くん、種之助くんが自分をコマに見立てて踊ったりとお正月らしさも満点で、いかにも新春浅草歌舞伎にぴったりの演目で、楽しく打ち出されました。
この若い人たちだけで1ヵ月の興行って初めての経験だと思います。
しかも、花形歌舞伎でもこんな大役ほとんどやったことがないのではないかしら。
大変なことも多かったでしょうが、すごく勉強にも財産にもなったんじゃないかな。
千穐楽の日に中村米吉くんが書いたブログの言葉が印象的。
「初日を迎える前は本当にただただ不安しかありませんでした」
そして、「しかし今は、この1ヶ月を無事に勤められたことへの喜びと、多くの方への感謝でいっぱいです」と。
「もし来年僕が浅草にいなくても、浅草歌舞伎をどうか、どうか、よろしくお願いいたします…!」
って、米吉くん

若さって、スバラシイ のごくらく度


