原作は読んだことがなくて、1994年に公開された映画も未見。河原雅彦さん演出、成河さん主演の2013年の舞台も観ていなくて今回が初見でした。
「冤罪で投獄された男性が刑務所の中で希望を捨てずに生き抜き、やがて脱獄に成功する物語」ということはうっすら知っていました。(何で知ってたんだろ?)
ロンドン版 「ショーシャンクの空に」
原作: スティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」
脚本: オーウェン・オニール/デイヴ・ジョーンズ
翻訳: 小川絵梨子
演出: 白井晃
美術: 松井るみ
出演: 佐々木蔵之介 國村隼 三浦涼介 谷田歩 小林勝也 板尾創路 ほか
パーカッション: 栗原務
2015年1月17日(日) 12:00pm 森ノ宮ピロティホール H列上手
物語: 有能な銀行員だったアンディ・デュフレーン(佐々木蔵之介)は妻とその愛人を射殺した罪で終身刑となり、脱獄不可能といわれるショーシャンク刑務所に投獄されます。タマス所長(板尾創路)が支配するその刑務所は、荒くれ者たちによる暴力やレイプ、職員たちの受刑者を人として扱わないような過酷な環境でした。
アンディは“調達屋”レッド(國村隼)から、「鉱物採集の趣味のための」小さなロックハンマーと、妻に似た女優リタ・ヘイワースのポスターを手に入れます・・・。
フライヤーに書かれたコピーは「希望は、決して死なない」
つまり、絶望的な環境の中にあっても人は希望を持ち続けられるか、というテーマが貫かれていて、それを体現するのが佐々木蔵之介さん演じるアンディ。
・・・なのですが、私にはアンディが持ち続けていたものが「希望」というのとはちょっと違ったものに感じられました。まじめで頭が良く、意思も強いアンディは、とても細心に冷静に計画してそれ(脱獄)を実行に移したという印象。
実際には20年の歳月を費やしている訳で、その折れない心の強さには驚嘆しますが、ロックハンマーを手に入れたのは入所した初期の段階で、最初から脱獄しようという強い「意思」と「実行力」の成果であって、希望を持ち続けていた結果というようには思えなかったのです。
アンディがあまり自分の心のうちを語らないキャラクターということもあり、佐々木蔵之介さんの淡々とした演技がそんな印象を強くしたのかもしれません。
アンディのすばらしさはむしろ、本人が、というより、それまで「希望」なんていう考えは微塵もなかった人たちに希望を、希望を持つ喜びを与えた「影響力」ではないでしょうか。
たとえばビール。
暑い夏の炎天下での作業中、看守の遺産相続の税金対策をアドバイスする見返りとして、仲間たちへのビールを要求するアンディ。
「青空の下でビールを飲めば 少しは人間らしい気持ちにもなる」と言って。
それを後で述懐するレッド。
「ビールはしょんべんみたいに生ぬるかったけど、今まで飲んだどんなビールよりもうまかった」と。
長い刑務所生活で、希望を抱くことや未来について考えることを諦めてしまったレッド。
「希望」を口にするアンディに、「希望は危険だ。希望は人を狂わせる」と反論したレッド。
そのレッドが、アンディの姿を見続けて、アンディの脱獄を喜び、自分が仮出所した時ついに、
うまく国境を越えられますように
友だちに再会して 奴と握手ができますように
初めて見る太平洋が ずっと夢みてきた輝く青さでありますように
それがおれの希望だ
と「希望」を口にするラストは、とても感動的です。
そしてそこに、レッドをそこまで変えたアンディが重なるのです。
レッドに対して負のエピソードとして象徴的だったのが小林勝也さん演じるブルックシー。
35年間の服役の後、仮出所となったものの、行き場もなく、現実の世界での生活を恐れて刑務所に戻りたいと騒ぎを起こすけれども認められず、結局社会に適合できずに自殺してしまうブルックシー。
出所前夜、図書館でアンディと話す場面にもブルックシーの不安は表れていて、さり気ない中にリアリティある演技がとても印象に残りました。
小林勝也さん、昨年観た「THE BIG FELLAH」ではIRAの非情なヒットマン。当然のことながらその振り幅の広さに驚かされます。
白井晃さんの演出はリアリティを追求するといったタイプではないとかねがね思っているのですが、監獄の鉄格子を緞帳のように使って威圧感を出したり、役者さんが移動させてセットチェンジを視覚的に楽しませてくれたり(美術は松井るみさん)。
光と影の使い方は相変わらずスタイリッシュで、独房に舞い込んだ蝶にアンディが手を差し伸べ、やがてその影が大きくなって蝶と一体化していく脱獄シーンはとりわけ印象的でした。
ただ、無機質な分、時間の経過は少しわかり難かったかな。
レッドが「それから8年」と言うのを聞いて、「えっ」と思ったりしました。
まぁ、アンディが眼鏡かけたり、タマス所長の髪に白いものが混じったり、というマイナーチェンジはありましたが。
音楽はいろんな音が流れているように聞こえましたが、パーカッションの栗原務さんお一人で担当されていたようです。
そして、場面転換のたびに役者さん(囚人)たちが鉄格子を打ち鳴らすカンカンカンという音が、まるで塀の中の生活の閉塞感を表しているようにも感じました。
アンディの「希望」を感じるには映画を観てみるのがいいかしら? の地獄度 (total 1317 vs 1324 )
2015年01月29日
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