2014年11月17日

吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

kabukiza201411.jpg十一月歌舞伎座夜の部。
「勧進帳」の感想だけ高揚感にまかせて早々とアップしましたが、他の2演目の感想を簡単に。

吉例顔見世大歌舞伎 夜の部
初世松本白鸚三十三回忌追善
2014年11月1日(土) 4:30pm 歌舞伎座 1階8列下手



一、御存鈴ヶ森
出演: 尾上松緑  坂東彦三郎  河原崎権十郎  市川團蔵   尾上菊之助 ほか


江戸時代の美少年剣士の白井権八と大親分・幡随院長兵衛の鈴ヶ森での出会いを描いた物語。
「鈴ヶ森」といえば、今年の俳優祭の印象が強烈で、今でも思い出すと笑っちゃうくらいなのですが、今回は菊之助さんの権八に松緑さんの長兵衛。

菊之助さんの白井権八は美しさは申し分なく、品もあるし妖しい色気もある、錦絵から抜け出たような美剣士ぶり。
白井権八は人を斬ったかどでお尋ね者となっていますが、この後、100人以上の人を殺める殺人マシンとなる訳で、そのあたりの秘めた狂気とか、凄味が今一歩・・お行儀が良すぎるのかな。

俳優祭でご長男の大河(現・尾上左近)くんがやったのと同じ幡随院長兵衛を演じるのは松緑さん。初役なのだそうです。
この役については、左近くんの方が先輩なのね(笑)。
さすがに「お若ぇの、お待ちなせぇやし」の台詞もキマリますが、この役には口跡、所作ともに若すぎる印象も。しかしながら、初日でもあり、これからの進化も、十年先、二十年先の円熟も楽しみな二人ではあります。

というか、次の「勧進帳」が気になりすぎて、観ている私の方が気もそぞろだったのですがあせあせ(飛び散る汗)


三、義経千本桜 すし屋
出演: 尾上菊五郎  中村時蔵  中村梅枝  市村萬次郎  市川左團次  松本幸四郎 ほか


これまで何度も観た「すし屋」ですが、菊五郎さんの権太で観るのは初めて。
というか、“江戸前の”「すし屋」を観ること自体初めてでした。

上方が舞台のこの義太夫狂言を、菊五郎さんは江戸っ子で演じていらして、我ながら驚いたことにはそれに違和感がなかったということ。
何とも気風のいい権太が楽しく愛嬌たっぷりで、加えて色気も凄味もあって、これまで観たことがないような権太でした。
菊五郎さんは相変わらずよいお声で台詞も朗々。

梅枝くんのお里ちゃんが達者。
綺麗に整いすぎて田舎娘という雰囲気は若干希薄ですが、台詞の一声ひと声、動きの一つひとつが、ずっと観ていたいと思える可愛らしさがあって惹きつけられます。お里ちゃんを応援したくなる感じ。
発声に無理がない(ように聞こえる)のも強みで、娘らしい高い声もキンキンしていなくて嫌味なく、よく聞き取れる台詞の確かさは同世代の役者さんの中で群を抜いていると思います。

勧進帳をはさんでこのニ演目は音羽屋さんのお芝居といった趣でしたが、この「すし屋」には梶原景時役で幸四郎さん登場。
白塗りの梶原で、存在感ありあり。


にしても、やはりこの物語は、スキップ的分類による「理不尽系」。
自分の妻子を犠牲にしてまで維盛を守った権太が、実の親の手にかかって命を落とすだけでもいたたまれないのに、匿ってもらっている立場でありながらいくらその気を見せられたからってつい手を出す維盛ってばどーなん?という感じなのですが、よくも悪くもその理不尽さがこの時代であり、義太夫狂言なのだなぁ、と父、母、妹の悲嘆の中で息絶えていく権太を観て思ったのでした。


とはいうものの、夜の部はやはり「勧進帳」にみんな持っていかれちゃったな のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1283 わーい(嬉しい顔) vs 1286 ふらふら)
posted by スキップ at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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