2014年10月31日

ナイロン100℃の底ヂカラ 「社長吸血記」

nylon42.jpg先週末のお芝居の感想も道半ばではありますが、一昨日観た舞台がとてもおもしろかったので、記憶が新鮮なうちにこちらを先に。

ナイロン100℃ 2年ぶりの新作。
ケラ作品にしては短い方だとはいうものの、平日の会社帰りに休憩なしの2時間25分は正直キツイかなぁと思いましたが、とても気持ち悪く(笑)おもしろく、集中力途切れることなく引き込まれました。

ナイロン100℃ 42nd SESSION 「社長吸血記」
作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演: 三宅弘城  大倉孝二  みのすけ  喜安浩平  
犬山イヌコ  峯村リエ  村岡希美  皆戸麻衣  
水野小論  猪俣三四郎  小園茉奈  大石将弘/
鈴木杏  岩崎う大  槙尾ユウスケ(かもめんたる)  山内圭哉

2014年10月29日(水) 7:00pm シアター・ドラマシティ 1列センター



舞台は少し古びたオフィスビルの屋上。
お弁当を食べたり飲物を飲んだりしながら他愛ない話をしているサラリーマンやOL。
のどかなお昼休みの日常光景・・・と思えるのははじめの方だけ。
社長は3ヵ月前から失踪して行方不明だったり、自殺した社員の妻が「自殺じゃない」と乗り込んで来たりするこの会社は、詐欺まがいの商法で契約を取るいわゆるブラック企業だということが明らかになります。
そしてその社員たちも、最初の印象とは違った一面を見せていきます。
一方で、この屋上の人のいない時間に集まってくるのはこの会社のOB・OGたち。
彼らの会話がアナザワールドのように描かれ、二つの世界が交錯し・・・。


観ている間ずっと心がゾワゾワして居心地悪い。
非日常なのにリアル。
コメディと不条理。
笑いながら怖い。
現実と悪夢。
残酷なファンタジー。登場人物は皆 心に闇や歪みを抱えていて、それがいかにもわかりやすく表に出る「狂気」という感じではなく、じわじわと染み出してくる得体の知れない気味悪さ。
心の歪みを投影するように徐々に傾いていく建物。

だけど、随所に笑いが散りばめられていて、「あはは」と声をあげて笑うこともしばしば。
ただ、何て言うんでしょ。ケラさんのつくり出す笑いはカラリとしたものではなくて、どことなくウェットな感じ。


とりわけ印象に残ったのは、大倉孝二さん演じる黛が凶行に及ぶ大雨のシーン。
台詞はなく、スローモーションのコマ送りのように展開される場面の圧倒的な迫力。
スローモーションなのに追い立てられるような切迫感。
その一つひとつの動きの美しさ。
言葉はなくても多弁な表情。
声はないのに、耳に届く叫び声。
降りしきる雨。すべてが終わった後、ビルの壁に投影される歪んだ模様。

ナイロンの舞台では早くからプロジェクションマッピングを使った演出が鮮やかでしたが、今回のこのシーンは際立って秀逸だと思います。

この場面の峯村リエさんも凄かったな。
このひとクセもふたクセもありそうな曲の姉(東京出身の女優さんなのに関西弁完璧!)の下卑た感じとOGのちーちゃんがイヌコさん演じる同僚に何か言われて「うん」と返事する無垢な声の響きとの落差がまたね。

いつも何かにイラ立っているような大倉くん、カッコよかったです。
「黛は屋上から下の道路におしっこしたんだ」と誰かが言ったとき、今は笑わなくなった大倉くん黛が「昔のことだよ」と吐き捨てるように言うのですが、後の方でそのシーンが再現されて、明るく笑っている黛見てたら何だか涙出そうにもなりました。


役者さんは客演含めて磐石。
リアルワールドとアナザワールドを繋ぐような探偵(?)が山内圭哉さんというのもおもしろかったです。

OB・OGを二役で演じるのは全員ナイロンの役者さんなのですが、その切り替えの鮮やかさに惚れ惚れ。
ケラさんの作品を、ケラさんが演出し、その意図を正しく受け止めて客席に届けることのできる力量を持った役者さんたち。
その作品の世界観を余すことなく伝えられる美術や効果音はじめスタッフ。
・・・「ナイロン100℃」の劇団としてのクオリティの高さ、底力を改めて知った思いです。

nylon42-2.jpg


カーテンコールでは三宅さんが「平日の夜にこんな気味悪い芝居観に来ていただいてありがとうございます」と(笑)。
大阪ラストということで客演陣のご紹介。
「瀬戸内少年野球団の」山内圭哉、「金田一少年の」鈴木杏ちゃん・・・て、いつの話やねんわーい(嬉しい顔)
最後に皆さんで、「ありがとうございました」ならぬ「ありがとうございます」と声をそろえて幕。



鈴木杏ちゃんの関西弁イントネーションの「ゾンビ」にウケました のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1274 わーい(嬉しい顔) vs 1278 ふらふら)
posted by スキップ at 23:40| Comment(2) | TrackBack(1) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、やっぱりスキップさんて凄いです。
自分、このお芝居全然訳分からなかったです。
Posted by ケンボウ at 2014年11月01日 16:45
♪ケンボウさま

いや~、私もわからない部分もありましたし、
ケラさんの意図を正しく理解したかどうかも
怪しいものですが(笑)、とにかく、
おもしろかったです!
Posted by スキップ at 2014年11月02日 23:56
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ナイロンの新作を
Excerpt: 4日のことですが、舞台「社長吸血記」を観劇しました。 ナイロン100℃ 42nd SESSION 書き下ろし新作ですよ ケラさんの最初は時効警察だったと思うが それから舞台もテレビやDVDなどで見..
Weblog: 笑う社会人の生活
Tracked: 2015-03-03 18:11