2014年10月28日

袴姿の♪最後のダンス 「演劇人祭 特別篇」

IMG_6753.jpg元々日帰りの予定で、何ならやめても?と思っていた今回の東京遠征を1泊にしたのは一にもニにもこれが観たかったから。

演劇人祭 特別篇
2014年10月26日(日) 4:00pm 歌舞伎座 1階6列上手



各分野の演劇人が一堂に会して5年に1回開催される演劇人祭。
松竹が歌舞伎座で興行を始めて100年、宝塚歌劇団の初公演から100年という記念すべき年に当たる今年、「演劇人祭 特別篇」として新装なった歌舞伎座で行われました。
客席の比率としてはヅカファンが多かったのかな?
いつもの歌舞伎座とはロビーから雰囲気が違っていました。

総合司会は宝塚歌劇団OGの檀れいさん。
生成地の大振袖に黒地の帯でそれはそれは匂うがごとき美しさ。

まずは、日本演劇協会会長の植田紳爾さん(植田先生が会長とは存じ上げませんでした)、国際演劇協会日本センター会長(・・というより世田谷パブリックシアターの、という方が身近ですが)の永井多恵子さんからご挨拶があり、引き続いて座談会となりました。


engekijin.jpg座談会
出演: 中村梅玉  鳳蘭  植田紳爾  永井多恵子  安孫子正(松竹株式会社副社長)


永井多恵子さんの進行で、主に歌舞伎、宝塚の海外公演についてのお話が繰り広げられました。梅玉さんが初めて行った海外公演がロシア(当時ソ連)で、直行便もない時代なので横浜港からナホトカまで船で行き、そこからハバロフスクまで列車に乗り、そこからさらに飛行機でモスクワまで、日本を出発してから1週間かかったというお話を聞いて、そんなにまで苦労して海外公演をやろうとする先人の意志や努力に頭の下がる思いがしました。

このコーナーでおもしろかったのは鳳蘭さんのお話。

・初めてのパリ公演で現地のTVに出た時、事前に「とても意地悪な質問をする司会者です」と聞いていたが、最初に「よくぞ本場のパリに日本からレビューを持ってきましたね」と言われた。
それに対して、「私たちはとても努力して勉強して来ましたので自信を持ってお届けします。ぜひそちらの皆さんも勉強して日本で歌舞伎をやってください」と答えたら司会者は言葉も出なかった。

・舞台で青い布を揺らして(自分たちは姿を見せずに)波を表すシーンで「ブラボー!!」と言われて、「波ごときで?」と思ったけれどうれしかった。
・フランス語で「セ・シ・ボン」を歌った時、発音も完璧だと自分では思っていたのに「訛りがかわいい」と新聞に書かれた。

・(植田先生の各組からの選抜メンバーでもちゃんと秩序が保たれていて・・という話に割り込み)上級生には絶対服従ですっから。今日も司会の檀れいさんが先ほど私のところへ来て「よろしくお願いいたしますっ」と頭を下げたので、「まぁ、がんばりなさい」と言いました(とソファにふんぞり返るポースで)。

・海外では出て行くと拍手はなくて、歌や踊りをやった後に拍手が起こる。
 日本では出て行くだけで拍手をくれるので、海外公演を経験してから、「まだ何にもしてないのに」と思うようにもなった。


ユーモアも茶目っ気もたっぷりのツレちゃん節、もっとたくさん聞きたかったです。


朗読劇「瞼の母 ―柳橋水熊 おはまの居間の場―」
出演: 坂東玉三郎  市川中車


「瞼の母」は2年前 中村勘九郎襲名披露興行で観ていて、その時のおはまも玉三郎さん。
もちろんお芝居とは比べるべくもないけれど、とても聴き応えありました。

玉三郎さんが上手、中車さんが下手、お二人とも紋付袴で照明を落としてほの暗い中で座したままの朗読。

中車さんは格段に慣れてこられたとはいえ、歌舞伎の公演ではまだ所作や声の出し方が他の人たちと違うと感じることがありますが、朗読で、しかもこの演目だと演技派の真骨頂という感じ。元々口跡よくて台詞も聞き取りやすい役者さんですが、朗読だとなお映えます。終始抑えめな口調なのもよかったな。
長谷川伸さん作品で中車さんと言えば、今年6月に「一本刀土俵入り」を観ましたが、こちらの方が合っている印象。いつか舞台でも観てみたいです。

玉三郎さんのおはまはは言わずもがな。
拵えもなく、表情もほとんど変えず動きもないのに、おはまのとまどいや苦悩がありありと目に浮かんで、そこにおはまが立ち昇るよう。目を閉じて聴いていると朗読であることを忘れそうでした。


宝塚歌劇「宝塚歌劇100・夢紡ぎ続けて」
出演: 宝塚歌劇団星組  柚希礼音  万里柚美  毬乃ゆい  如月蓮  天寿光希  
大輝真琴  夢妃杏瑠  毬愛まゆ  礼真琴  紫りら  華鳥礼良  小桜ほのか


お待ちかねの宝塚コーナー。
構成、演出は植田紳爾先生と谷正純先生。ベルばらコンビですね。

最初に宝塚歌劇100年の歴史を振り返る映像が舞台中央のスクリーンで上映されました。
ナレーターは黒木瞳さん。
4月の100周年記念式典の映像もあって、あれからほぼ1年の来年春には轟さん含め6人のトップスターで残るのは2人だけなんだなぁと寂しさがこみ上げてきました。

始まる前にご一緒した方たちと「レビューかな?日本ものかな?」と話していたのですが、私はなぜか黒燕尾だと思い込んでいて、緑の袴の正装で現れた生徒さんたちを見て「そういうことかぁ」と正直ちょっと拍子抜け。でもよく考えたら歌舞伎座だし式典だし、そうですよね。

司会の檀れいさんが来年5月に退団する柚希さんのことにふれ、「最後まで思い残すことなく充実した時間を過ごしてほしい」とおっしゃったのを聞いて泣きそうになりました。

正装のジェンヌさんは本当に凛として美しいです。
最後に正面奥から出てきた柚希さんは白地で左の胸元に大きな金の百合の花柄の華やかなお着物。髪はフワッとしたリーゼントでした。
万里柚美組長が司会進行で、まずは自己紹介をと最下級生の小桜ほのかちゃんから順に「◯◯でございます」と名乗って自己紹介していました。

吉田優子先生のピアノ演奏で歌披露。
万里組長、柚希さん、礼真琴くんの3人は椅子に座り、他の皆さんで「ドンブラコ」から始まるメドレー。
「モンパリ」は如月蓮さんから始まって、天寿光希さん、大輝真琴さんの男役3人で。
毬乃ゆいさんが「虞美人」から「赤いけしの花」をソロで。のびやかなソプラノが歌舞伎座に響き渡りました。

柚希さんはかつて越路吹雪さんが歌ったという「筏流し」をソロで。
初めて聴く曲でしたが、情景が目に浮かぶようで、何だか柚希さんが着流し姿に思えたり(笑)。
この時、柚希さんが花道七三まで行って立ち止まって歌っているのを見て、「柚希さんがついに歌舞伎座の舞台に立った」という思いを強くしました。

ベルばらからは礼真琴くんのソロ。
台詞を言い始めた時、「アンドレなの?」と少し驚きましたが、「心のひとオスカル」は数々あるベルばらの名曲中でmy best tuneなので、あの曲をことちゃんの声で聴くことができてよかったです。ご一緒した方が「礼真琴?歌うまいね~」と後でおっしゃってくださったのでうれしくなって、「歌もダンスもお芝居も上手いんです」とつい言ってしまったり(笑)。
ここは休演された紅ゆずるさんのポジションだったのかなぁ。それとも急遽曲目変えたのかしら。


そして何と言っても。

万里組長が「海外ミュージカルにもたくさん挑戦し・・」とおっしゃって、あのイントロが流れた時の客席の高揚感の圧の上がりよう。まさか柚希さんの「最後のダンス」が聴けるなんてexclamation
歌舞伎座に響き渡る迫力のヴォーカル。
曲の終盤で、後ろの組子たちも立ち上がってコーラスつけた時には、「大劇場で柚希さんのトート観たかった」と心から思いました。

昨年、StarSコンサートで井上芳雄くんが「最後のダンス」歌った時、「井上くん、次のトート決まってるんじゃないかな」と思いましたが、柚希さんにも同じことを感じました。
来年の東宝エリザでというウワサもありましたが、まぁそれは無理として(笑)、いつか「CHICAGO」のように宝塚OGだけのエリザができて、その時のトートが柚希さんだといいな。

柚希さんは相変わらず一階から三階まで、全ての客席に目線を送り、微笑みを絶やさず、初めて歌舞伎座の舞台に立って緊張もされていたでしょうに堂々とした佇まいでトップスターのオーラを放ち、宝塚のことを全くご存知ないであろう客席の方たちにも誇らしかったです、ワタシ(別に自分の手柄ではないが)。

最後は100周年の式典の画像が流れる中、「虹の橋 渡りつづけて」と「すみれの花咲く頃」。

全員でパレードみたいに舞台のを歩いて、花道まで行って、七三でターンして舞台に戻っていました。柚希さんは一人七三に残って歌いながら。
30分くらいだったけど夢のような時間でした。


休憩をはさんで舞踊二題。

舞踊 「花月」
出演: 梅若玄祥  藤間勘十郎
清元: 清元菊輔社中  箏曲: 川瀬露秋   囃子: 藤舎千穂社中


世阿弥作と言われる能「花月」より清元の舞踊。
実は宗家の踊りをちゃんと一曲観るのは初めてで、しかも梅若玄祥さんとの共演で観られるなんてめったにない機会ととても楽しみにしていました。

手と扇が一体化しているような滑らかかつ幽玄な勘十郎さんの踊りには見惚れました。
が、不遜にも全く予習をしていなかったので、内容を理解するまでには至らず。
後で、「生き別れになっていた父と子が再会する」ストーリーで、しかもこの子は「天狗にさらわれた」設定だったと後で知って・・・ほへぇ~となりました。
舞踊とお能の山、高く険しあせあせ(飛び散る汗)


tamasama.jpg地唄舞 「鉤簾の戸」  
出演: 坂東玉三郎
三絃・唄: 富山清琴   胡弓: 川瀬露秋


玉三郎さんは女方の拵えをして登場
龍を描いた白い着物に、金糸で菊と紅葉を刺繍した黒帯。
髪型はちょっと変わった感じでどこかで見た記憶が・・・と思ったのですが、多分このポスターの拵え。

動いていても静止していても、玉三郎さんを見ているだけで陶酔してしまうほどお美しい。そして漂う妖気。
玉三郎さんには性別も年齢も時間もないな、と改めて思った次第です。

舞踊には疎い不肖スキップではありますが、玉三郎さんの艶やかな目線ややわらかな手の動きの先に、愛しい人の姿が浮かび上がってくるようで、切なく恋しい女ごころが感じられてしばし幻想の世界に浸りました。


18:40終演予定が20分押して19:00頃終演。
盛りだくさんで充実の内容。大満足でした。
本当に行けてよかった。
チケットお世話してくださった方に心からお礼申しあげたいです。



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posted by スキップ at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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