
イギリス演劇界で最も権威あるローレンス・オリヴィエ賞を受賞。2006年にはブロードウェイへ進出、その芸術性を高く評価され、トニー賞最優秀作品賞を含む最多6部門を獲得。同年映画化もされた作品だと知ったのは後のことです。
「HISTORY BOYS/ヒストリーボーイズ」
作: アラン・ベネット
翻訳: 常田景子
演出: 小川絵梨子
出演: 中村倫也 松坂桃李 太賀 橋本淳 小柳心 渋谷謙人 Spi 大野瑞生 林田航平 鷲尾真知子 安原義人 浅野和之
2014年9月20日(土) 6:00pm 森ノ宮ピロティホール O列センター
1980年代のイギリス(劇中、具体的な都市名は出てこなかったように思いますが、イングランドの工業都市 シェフィールドということらしい)。
オックスフォードやケンブリッジ大学を目指す8人の男子高校生が通うグラマースクールが舞台。
一風変わった教師ヘクター(浅野和之)は、詩や絵画、寸劇などを採り入れた自由で個性的な授業を行っていました。
一方、校長(安原義人)が合格率を上げるために採用したオックスフォード大学出身の若い臨時教師アーウィン(中村倫也)は徹底した受験テクニックを指導します。
教室という空間で、歴史の捉え方や「学ぶ」ということ、人種や宗教の問題、さらには若者たちの屈折した恋など、たくさんのピースが散りばめられた物語。
ヘクター先生の遊び心に満ちた授業がとても魅力的。
奔放でありながらハイレベルの授業を楽しそうに受け容れる、これまた知的レベルの高い才気煥発な生徒たち。
映画のシーンを演じて作品名を当てたり、フランス語の授業で娼館の寸劇になる場面なんて、ほんと楽しかったな。
ただ、サルトルやヴィトゲンシュタインといった哲学者の難解な言葉や、私の知らないイギリスの詩人(ワーズワースとか知っている人も出てきたけれど)が引用されたり、多分当時のサッチャー政権への風刺とも取れるような台詞もあって、全部拾い切れたとは言い難く、あの高校生たちの知的レベルにとても追いついていない自分に残念な思いも・・。
それでも。
「学ぶこと」「生きていくこと」というテーマは普遍だし、迷ったり悩んだり、危うさも抱えてなお輝く青春時代にいる彼らは眩しくて、少しうらやましくて、共感もし、二度と戻ることのない時を思いやって遠い気持ちにもなったりもしたのでした。
「詩って全然、わかりません。まだ僕たちには起きてないことばかりで」と言ったのはティムズ(Spi)だったかな。
「これから起こるかもしれないだろ?」というヘクターの答えがとても印象的でした。
そうよね。あなたたちはまだ18歳で、これから起こることの方がずっと多いのだから。
これに対して、情緒的な部分はすべて削ぎ落して、試験官受けする、新しい切り口の小論文の書き方を指導するアーウィン。
二人で1つの授業を担当するようになった時、ホロコーストを題材にしようとしたアーウィンに対して、「新しい切り口なんてこの題材にはない」と怒るヘクター。
ヘクターとアーウィンの授業は、相反するように見えますが、どちらが正しいとか正解というものでもなくて、どちらも必要なものだし、教育とは何か、歴史を学ぶ目的は、いい大学に入るということは・・と人生の最後にわかることなのかもしれません。
その意味で、ヘクターに心酔してアーウィンに反発していたポズナーが、「(ケンブリッジに)入学したら僕はもう空っぽだった。どこかに行き着いたと思ったのに、進み続けなきゃいけないことに気がついたんです」と言って大学にも社会にも適合できなくなったその後は切なかったです。
一筋縄ではいかない曲者感たっぷりで、飄々としながら少し困った性癖も持つヘクター・浅野和之さんを向こうに回して、エリートに見えて実は屈折を抱えた怜悧なアーウィン・中村倫也くんもお見事。相変わらずいい声でした。
容姿端麗、頭脳明晰で自他ともに認めるモテ男・デイキンの松坂桃李くん、そんなデイキンに思いを寄せる、ユダヤ人でゲイのポズナー太賀くん、大人っぽく冷静なスクリップス・橋本淳くん、体育会系でバンカラなイメージのラッジ・小柳心くんなど、生徒たちも個性豊か。
デイキンが「眼鏡、外せよ」とアーウィンに迫る場面はドキドキ

自分の魅力を知りつくていて、若さゆえの傲慢さも持ち合わせる松坂桃李、魔性!と思いました(笑)。
いつも冷静で感情を表に現さないアーウィンがこの時に見せる揺れというか弱さのような素の部分もよかったな。
これまで望むものは何でも手に入れてきたデイキンもまた、アーウィンが初めて出会う“思い通りにならないもの”で、だから突っかかって行くという行動で、素顔を晒していたのではないかしら。
プロローグに登場するアーウィンは車椅子に乗って、まっすぐ前を見て自分の考えを述べていて、二幕始めでそれがTV番組の撮影で、彼はTVで発言するような人気(?)政治家になっているらしいことがわかり、ラストで車椅子生活を送るようになったいきさつが明らかになる構成も効果的でした。
舞台装置はシンプルで、8脚の椅子と1台のピアノ。(そのピアノを弾くのはスクリップスの橋本淳くん。この役のために初めてピアノを習ったのだとか)
その椅子を生徒たちが動かし、ホリゾントの白い壁には窓を映し出したり、フランス語の台詞の日本語字幕を流したり。
そして床一面に敷かれた紙。
これを生徒たちがビリッと破ってはメモにしたり、論文用紙にしたり。
終盤、その紙を丸めて手向ける花束になり、少年たちが担ぐヘクター先生の棺になる葬送の場面は際立って印象的でした。
美術は堀尾幸男さん。
"HISTORY" BOYSなので「歴史」にまつわる台詞がたくさん出てきますが、
「本を読むということは過去の人から手がさしのべられること」という言葉が特に心に響いて、
もっともっと本を読まないと、と触発されました。
そんな中、「歴史なんて何百年と男の無能を羅列したものに過ぎないのよ」となかなかストレートで辛辣な発言をする女性教師ドロシー(鷲尾真知子)が、
「自分が高校時代に感動した本を生徒に押し付ける。教師は、生徒たちがどうして感動しないんだろうって不思議がる。なぜならその本は、彼らが自分で見つけたものではないから。『ライ麦畑でつかまえて』なんていい例よ」
と言い、それを聞いたヘクターが「The Catcher in the Rye」の一節を引用して、さらにドロシーが続けて、という場面に感激して「ひょ~

若い役者さんたちの男子校制服姿に萌えつつ、哲学的な台詞と格闘した2時間50分。
先に原作を読んだり予習したりして舞台を観るのはあまり好みではないのですが、この作品は戯曲を読んで、映画も観て、その後でもう一度観てみたいと思いました。
「諸君、人生を学ぶゲームを始めよう。誰か、どこか、いつかのために 」のごくらく地獄度




面白かったです!!
・・・がっ、どこがどうと言えない私の脳みその
悲しさよ・・・
BUT!!(・・・と書いてしかし・・)スキップ様の
UP読ませいただき
感動再び・・・(・・といつも書いてる気がする)
・・でございます!!
一度見ただけでは拾いきれない素敵なセリフが
多い舞台でしたよ・・・ほんと・・
書いてくださってありがとうございます・・。
よく覚えてらっしゃる・・・
スキップさんと知り合いでよかった・・・
甘えんなよっ!!・・・って言わないでね!(笑)
私はちょっと意識が遠のいた時間があったかも(笑)。
でも、とても観応え・・というより聴き応えのある舞台でした。
本当に印象的で示唆に富んだ台詞がたくさん出てきましたね。
いつもメモを取ったりしない私ですが、頭のメモも年とって
かなり古ぼけてきたので、覚えておこうと思っても忘れて
しまうことも多く、悲しい(涙)。
今回はまだ記憶の新しいうちにと比較的早く書きましたので。
でも脳は甘やかすとどんどん退化するんですって。
甘えんなよっ(爆)。
こんにちは。
「ヒストリーボーイズ」、東京で観劇しました。
素晴らしい芝居でしたね。
そして中村倫也くんの、ストイックな色気にやられました(苦笑)
自分は大してイギリス文化の知識は無いのですが、
それでもヘクター先生の授業は、興味深く面白かったです。
> 先に原作を読んだり予習したりして舞台を観るのはあまり好みではないのですが、この作品は戯曲を読んで、映画も観て、その後でもう一度観てみたいと思いました。
全く同意です。
残念ながら一度しか見られなかったのですが、予習して再観劇に挑みたかったです。
リピートしなかった事を後悔…。
とてもおもしろい舞台でしたね。
中村倫也くん、ますます目が離せなくなってきました。
私もイギリスの文化をはじめ文学や哲学にももっと詳しければ
ヘクター先生の授業も、この作品そのものもさらに楽しめるのになぁ
と思いました。
全部同じキャストでは難しいでしょうが、倫也くん、桃李くん、浅野さん
はマストとして、ぜひ再演していただきたいです。
遠征の余韻でホワホワしつつ、今日やらなきゃを思い出し、
蒼くなりつつ通勤電車移動ナウです。
(^^;
「自分の魅力を知りつくていて、若さゆえの傲慢さも持ち合わせる松坂桃李、魔性!と思いました(笑)。」
激しく同感ですっ!
(*><*)
更に揺れや戸惑いの表情も見せられて、“私、落ちたかも”と
思いました。(汗)
でもそれも、中村@アーウィンの繊細で的を得た反応があって
こそ!
つくづく芝居って、キャッチボールだなぁと噛み締めました。
(*������*)
桃李くん。
今の大河ドラマやこれまで観た舞台ではもっとできるはず、と
思っていたのですが、このデイキンは本領発揮という感じで
とても魅力的でしたね。
midoriさんが堕ちるのも納得です(笑)。
倫也くんもほんとによかったし、もし再演されたらまたぜひ
観たいと思います。