楽しかった
いかにもイタリア喜劇なのですが、ちゃんと三谷コメディで、シェイクスピアの喜劇風味もあって。
ずっと笑顔で観られて幸福感が漂う、まるで祝祭劇の趣き。
楽しくておかしくてほんとによく笑って、最後にはとてもハッピーな気分で劇場を後にしました。
シス・カンパニー 「抜目のない未亡人」
原作: カルロ・ゴルドーニ
上演台本・演出: 三谷幸喜
出演: 大竹しのぶ 岡本健一 木村佳乃 中川晃教 高橋克実 八嶋智人 峯村リエ 遠山俊也 春海四方 浅野和之 小野武彦 段田安則
楽士: 坂本弘道 園田容子 佐々木憲
2014年6月29日(日) 1:30pm 新国立劇場 中劇場 10列(最前列)上手
18世紀のヴェネツィアを舞台にした若く賢い未亡人が再婚相手を見つける物語を、人物名や人間関係はそのままに三谷幸喜さんが翻案した物語。
舞台は「ヴェネツィア国際映画祭」で賑わう現代のヴェネツィア。
高名な映画監督だった夫が遺産を遺して亡くなり未亡人となった大女優ロザーウラ(大竹しのぶ)は、10年ぶりに映画界へのカムバックを狙っていました。
そこへ、彼女を自分の作品に主演として迎えたいと考える4人の映画監督・・・真面目で堅物のイギリス人(中川晃教)・チャラ男で女好きのフランス人(岡本健一)・暑苦しいスペイン人(高橋克実)・そして、少し気弱だけど誠実なイタリア人(段田安則)・・・から熱烈なアプローチが。
まずはセットがステキ(美術: 松井るみ)。
ヴェネツィアのホテルの海に面した明るく開放的なテラス。
床にはやわらかな色合いの石畳が敷き詰められています。
客席と床続きでフラットになった舞台との仕切りはオープンな低い手すりだけ。
明るい陽射しの中、地中海の海風が吹き抜けてくるようで、まるでヴェネツィアの野外劇場にいるよう。
幸いなことに最前列で、目線と同じ高さの、手が届きそうなくらい間近な距離で役者さんたちを観られるばかりでなく、八嶋さんアルレッキーノに「ねぇ」と目線合わせて同意を求められたり、気がつくと浅野さんパンタローネが真横に立っていたり。幕もないオープンセットに開演すると客席から八嶋智人さん登場。
ここはヴェネツィアのホテルで、向こうに見えるエクセルシオールよりは少し劣るけどいいホテル、ヴェネツィアでは今映画祭が開催されていて・・といったことを話します。
八嶋さんはこのホテルの副支配人代理役で、このお芝居の狂言回しのような役回り。
まるで地なんじゃない?と思えるようなノリとフットワークのよさで活き活きと、この役にほんとによく合っていました。
その八嶋さんが「ここで皆さんにお話しなければならないことがあります」と切り出します。
何だろ?と少しざわめく客席。
「実は昨日の初日に事故があって、ある役者さんがたったこれだけの段差でつまづいて捻挫してしまいました。それが誰かもお楽しみに~」
で
次のシーンですぐに誰だかわかった。客席爆笑
ご本人は苦笑いで、「出にくいったらありゃしない」とおっしゃっていました。
でもすごいな、と思ったのは、多分初日のアクシデントで演出や演技プランの変更があったと思うのに、それを微塵も感じさせなかったこと。
途中、その人物を中心にしたちょっとしたダンスシーンもあったのですが、ちゃんと杖を使った振りになっていて笑っちゃいました。最初からそういうキャラクターだったかのよう。
ご本人含めて、さすがのカンパニーです。
お話としては他愛のないドタバタコメディなのですが、それを大竹しのぶさん筆頭に選りすぐりの実力派俳優さんたちが全力で真っ向勝負。
しかもご本人たちも丁々発止を楽しんでいる雰囲気。
息もぴったり、余裕綽々で、観ていて楽しいことこの上ありません。
少し前に、TVのネプリーグに、高橋克実・八嶋智人・浅野和之・段田安則の4名がチームで出ていて、「何この豪華メンバー!?」と思って、それがこの舞台のプロモーションと知って、「何これ、全員出てるの!?」となった訳ですが(笑)、ほんとに贅沢。
唯一、中川晃教さんだけがこのメンバーの中にいるのが珍しく感じたのですが(プログラムで段田安則さんも「中川くんとは初めてですが、他はお互いよく知ったメンバー」とおっしゃっていた)、礼儀正しく理屈っぽく、本心をあまり見せない少し硬めのキャラクターにアッキーの新鮮さがハマっていました。(もちろん監督4人ともそれぞれお国柄が出ていてとびきり楽しかったのですが。)
歌うのは岡本健一くんばかりでアッキー歌わないなぁと思っていたら、最後にのびやかな歌声も聴かせてくれたし。
いずれ劣らぬ名優、名演技揃いの中、やはり大竹しのぶさんはタダモノでない感満載です。
妹の役まで平気で取っちゃうくらい業が深くプライドも高い大女優ながら茶目っ気たっぷりでとてもチャーミング。
コメディエンヌとしてのセンスも抜群で、全体的にデフォルメ勝負の役作りの中、振り切れっぷりもお見事。
さすがの変幻自在ぶりも見せつけてくれて、監督たちの本心を知るために変装するシーンの四变化は圧巻でした。それを目いっぱい熱演という感じではなく軽~くやっちゃうあたりも。
「世界のニナガワ~!」と言われて、眉間にしわ寄せてスローモーションで走る姿とか、蜷川さんにぜひ観ていただきたい。
男優陣がこの共演よく観るよね、という既視感あるメンバーなのに対して、女優陣は結構新鮮。
“怪物”大竹さんを向こうにまわしてプレッシャーもあったと思いますが、峯村リエさん、木村佳乃さんのお二人、それぞれ違った個性でアプローチしていて見応えありました。
それに何と言っても「時速3メートルで歩く」(笑)浅野和之さんパンタローネ。
あのおとぼけっぷりは違反でしょ?(笑)
衣装(伊藤佐智子)もよかったな。
トリコロールがあんなに似合うのは岡本健一くん以外いないワと思っていたら、仮装パーティの時はナポレオンで、個人的にふわぁ~となりました(笑)。
三谷さんが「今年の演劇賞に何もひっかからない作品」とおっしゃっているそうですが、それに全員大真面目に取り組んで、そして「ヴェネチア映画祭」を舞台にするあたり、三谷流のアイロニーも効いています。
このところの演劇作品は国際情勢を反映していたり、暴力の連鎖を表していたり、と深刻に考えないといけない作品が多く(そしてもちろん、そういう作品も好きなのですが)、こんなふうにあははと笑って後には幸福感だけが残るって、とても大切で、幸せなことだと思いました。
フイナーレ。
役者さんたちが一列に並んで、アッキーが美声を響かせてしのぶさんが歌い上げて。
「カーテンコールはこの1回きり。皆さんもご一緒に」と八嶋さんが言って、役者さんたち皆で歌って、私もちょっと口ずさんで。
ほんっと、楽しかったな
プログラムの稽古場写真もほんとにみんな楽しそう のごくらく度 (total 1213 vs 1215 )
2014年07月08日
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