2014年06月23日

四代目のお蔦 「松竹大歌舞伎 中央コース」

namikir2014.jpg四代目襲名以来、女方を封印されている(?)市川猿之助さん。
猿之助さんの女方大好きなスキップといたしましては、「『一本刀土俵入』のお蔦さんだって~ムード」と、とても楽しみにしていました。
浪切ホールも好きな劇場ですが、仁左衛門さんの「いがみの権太」観て以来3年ぶりで、あの日は台風直撃でとんでもない大雨だったなぁと思い出したり。

平成26年度全国公立文化施設協会主催 中央コース 
松竹大歌舞伎
市川亀治郎改め 四代目 市川猿之助襲名披露
九代目 市川中車襲名披露


2014年6月21日(土) 12:00pm 浪切ホール 1階13列センター



一、三代猿之助四十八撰の内 太閤三番叟
出演: 市川右近  市川笑三郎  市川笑也 ほか


大阪城築城祝いに太閤秀吉が三番叟、北政所が翁、淀君が千歳を舞うという趣向。
最初に黒装束の四人の侍が出てきて「大阪城築城の祝いに秀吉が三番叟を舞うが、我らが主君・柴田勝家公の敵を討つ好機・・」みたいなことを話します。「ここは岸和田」とご当地ネタも織り交ぜたりしつつ。

三番叟は、まず鈴を持った千歳が登場して舞いますがこちらが淀の方(笑三郎)のよう。後から北政所(笑也)の翁も出てきて、それぞれひと踊り。笑也さんより笑三郎さんの方が若い設定なのはこのところでは珍しいかなぁ、と思いながら観ていました。

やがて花道から太閤秀吉(右近)登場。
「浪切ホールの花道、こんなに低かったっけ?」と思うほど低くて、客席に傾斜がついていることもあって揚幕あたりはほとんど通路くらいの感覚で、右近さんがすぐそばに見えてちょっと驚きました。金の烏帽子、緋の狩衣、白の大口袴という、華やかで格調ある衣装に身を包んだ右近さん太閤、ステキでした。
太閤が三番叟を舞ううち、先ほどの忍びの侍たちが現れて、所作ダテ。
右近さん筆頭に、身体能力の高い澤瀉屋さんたちのキレのある、息が合った所作ダテは華やかでスピーディで見ていて楽しいです。
この忍びがまたイケメン揃いでね(笑)。
申し訳ないことながら猿琉さんしかわからなかったのですが、後で調べたら、他の3人は喜之助さん、喜猿さん、猿若さんのようでした。

・・・と書いている今日、市川右近さん体調不良のため休演という情報が。
代役も立てられるということは残り全休でしょうか。
大事ないことをお祈りしています。


IMG_9496.jpg二、四代目市川猿之助  九代目市川中車 襲名披露 口上

口上の直前、あの福山雅治さんの祝幕が登場すると拍手がおこっていました。猿之助さん、中車さんお二人だけの名前が入った巡業用のミニ祝幕かな。

口上は下手から、右近さん・笑三郎さん・弘太郎さん・月之助さん・笑也さん・中車さん・猿之助さん・秀太郎さん・竹三郎さん・猿弥さん・寿猿さん・門之助さん 12名の並び。
この口上だけにご出演の秀太郎さんの仕切りで、温かい雰囲気のよい口上でした。膝を悪くされていた月之助さんも列座されているのもうれしかったな。

「5/31に出発して東京から秋田、仙台、山形、越前まわって、竹三郎さんと一緒にようよう大阪に戻って参りました」と秀太郎さん。
竹三郎さんは、「浪切ホールには度々お伺いしていますがこんなにお客さんが入っているのは初めて」とおっしゃっていました。

今年84歳という寿猿さん。
「先代の團子から猿之助襲名、段四郎さんの亀治郎から團子襲名にも列座して、あれから早51年・・・」と語り始め、岸和田に来るのを楽しみにしていた話もしてるうちにしどろもどろになって何度も絶句。お隣の門之助さんはじめ皆さん肩プルプルさせていましたが、最後に「はっはっはっは」と高笑いでごまかす寿猿さんについに堪え切れず突っ伏して笑う秀太郎さん、カワイかったです。
猿之助さんは「さっき寿猿さんが話していたのは「カーネーション」のことです」と冷静にフォローしていらっしゃいましたが。

猿之助さんが「行く末長く お見捨てなきよう」とおっしゃったのと、中車さんの口上が、襲名披露の最初の頃に聴いたいっぱいいっぱい感ではなくて、ずい分歌舞伎役者さんらしくなっていらしたのが印象的で、口上の締めの「隅から隅まで・・・乞い願い上げたてまつります~」を猿之助さんと中車さんのお二人でおっしゃっていたのが珍しいなと思いました。


三、一本刀土俵入
作: 長谷川伸
出演: 市川猿之助  市川中車  市川猿弥  市川月之助  市川猿四郎  市川寿猿  
坂東竹三郎  市川門之助 ほか


水戸街道・取手にある安孫子屋の店先で、酌婦のお蔦が、一文なしでお腹を空かせた取的の駒形茂兵衛に立派な関取になるようにと有り金全部を恵んでやります。茂兵衛は心から感謝し、いつか必ず横綱になってお蔦さんに土俵入りを見せると約束して江戸へ戻って行きます。そして10年後、横綱の夢破れて博徒となった茂兵衛はお蔦と再会します・・・。

猿之助さんのお蔦に中車さんの茂兵衛という布陣。
何度か観たことのある演目ですが、猿之助さんのお蔦は初めてでした(もちろん中車さんの茂兵衛も)。
「お蔦は芝翫のおじさまに教えていただいた最後のお役」と口上でおっしゃっていました。

やっぱり猿之助さんの女方好き~と改めて。
特に前半の、気風がよくて色っぽくてちょっと退廃的なお蔦さん。こういう役をやらせたら右に出る者ナシという感じ。
飲んだくれで自暴自棄な感じなのだけど、心には孤独を抱えていていかにも寂しそうで、それを背中の表情だけで見せる猿之助さん、スゴイです。
自分は安孫子屋のあの二階から出て行くことはできず、そのもがれた羽根を茂兵衛に託すような切なさが感じられました。

後半の、妻となり母となったお蔦さん。
白塗りもやめて、紅もほとんとささず、表情がリアル猿之助さんに近くてちょっととまどいましたが(笑)、母としてわが子を思う演技はとても細やか。
この演目、取的→博徒となる茂兵衛のドラスティックな変化につい目が奪われがちですが、お蔦さんの変化もかなりのものだなと改めて思いました。
茂兵衛に何度も何度もお礼を言って、振り返り振り返り花道を去っていくお蔦さんの声がいつまでも心に残ります。
四代目・猿之助さんの女方、諸々の事情はおありかと思いますが、また時々見せていただきたいです。

中車さんの駒形茂兵衛はこれまで観たどの役者さんとも違ったアプローチで新鮮でした。
一文なしで腹ペコの茂兵衛→お蔦にお金をもらってお腹いっぱいになって元気出た茂兵衛→キリリとした博徒の茂兵衛の三段活用(笑)。
前半は、肉襦袢をつけていないことや、ピュアを強調するあまり(?)あえて弱々しくゆっくり話す台詞が些か違和感。
それに比べて博徒として登場する後半は立ち姿も口跡もよくてさすがでした。
最後のキメ台詞「これが十年前に櫛、かんざし、巾着ぐるみ意見をもらった姐さんにせめて見てもらう駒形の、しがねぇ姿の横綱の土俵入りでござんす」は結構あっさり目だった印象。
お蔦さん一家を見送る茂兵衛の表情が猿翁さんと重なって不思議な感覚でした。
猿翁さんと中車さんが似てると思ったの、初めてだったな。

そういえば、お蔦さんが茂兵衛を思い出すきっかけが「突っ張り」でしたが、あれはいつもは「頭突き」ですよね?前半で船戸の弥八(猿四郎)やっつける時も頭突きしてたし。

猿弥さんの波一里儀十親分は貫禄があって、残忍そうな怖さもあってよかったし(最後茂兵衛との相撲は勝ちそうに見えたけど)、月之助さんの堀下根吉がいかにも渡世人っぽくてまたカッコよくてね~。このあたりはもったいないような配役です。
門之助さんの辰三郎はイカサマなんかしちゃったけど男前で妻を思い子を思うよい夫っぷりでした。

そして特筆すべきは、竹三郎さん老船頭と寿猿さん清大工コンビ。
「お前は元気だ」「いや、お前はまだまだ元気だ」と言い合うのんびりした田舎の老人の会話が可愛らしすぎて和む。
老人とはいえ竹三郎さんの立役、オトコマエでもありました。


舞踊+口上+お芝居で約3時間。普段の歌舞伎公演もこれくらいのボリュームだと観やすいのになぁ のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1203 わーい(嬉しい顔) vs 1206 ふらふら)P
posted by スキップ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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