2014年06月20日

“演出ノート”つきの舞台って・・ 「昔の日々」

olddays.jpg麻実れいさん、若村麻由美さんという二大女優のキャスティングに惹かれて観ることにしたのですが、デヴィッド・ルヴォーの演出作品は実は初めて。

「彼との出会いが、いわば、役者としての僕の始まり」(堤真一) 「ルヴォーは演劇で世界を変えられることを教えてくれました。 その思いを持って、僕は今も舞台に立っています 」(井上芳雄) 「デヴィッドとの演劇体験は今も僕の演技の土台になってます。デヴィッドvsピン ター。逃せば必ず後悔します。」(田中哲司)と推薦文を寄稿しているのが私の好きな役者さんばかりなのにも興味シンシン。

「昔の日々」作: ハロルド・ピンター  翻訳: 谷賢一
演出: デヴィッド・ルヴォー
出演: 堀部圭亮  若村麻由美  麻実れい

2014年6月19日(木) 7:00pm シアター・ドラマシティ 1列目上手


イギリスのノーベル賞作家 ハロルド・ピンターが1971年に発表した記憶をテーマにした不条理劇。ビンター自身がルヴォーによる演出を熱望していたのだとか。

客席に入ると、赤い絨毯の四角い部屋が舞台からせり出していて、4列目が最前列になっていました。ドラマシティでこれは珍しい。
舞台奥の方には暖炉があったり木がシルエットで見えていたりしますが、お芝居で使われるのはこの四角い部屋のみ。2つのソファを置いて前半はここが居間、後半は寝室になります。
オープニングで一旦暗転すると、眩い白さのいLEDライトがこの空間を縁取る線を描くように灯っていく、この装置と演出がとてもスタイリッシュでした(美術: 伊藤雅子)。

ロンドンから離れた海辺の町で静かに暮らす、ディーリー(堀部圭亮)・ケイト(若村麻由美)夫妻。そこにケイトの「ただ一人の友だち」でルームメイトだったらしいアンナ(麻実れい)が訪ねてきます。20年ぶりに再会したケイトとアンナ。それぞれが語る昔の記憶は微妙に食い違っていて、さらにディーリーもかつてアンナと接点があったことを思い出し・・・。

というストーリーは一応あるのですが、すべて3人の会話だけで進み、内容はその会話を聴く、観る側の判断、というか感じ方次第といったところでしょうか。最初はケイトを巡って夫のディーリーとアンナが取り合ってるような感じがして、ケイトとアンナはルームメイトというより恋愛関係のように見えたり、時に2人は共犯者のように思えたり、またある時はアナとディーリーがかつて通じ合っていたと思わせたり、会話によってくるくると変わるその官能的でスリリングな関係に翻弄される客席の私たち。

が、理解できたとは言い難かったかなぁ。

最後のケイトの発言で、「あ、ケイトが昔、アンナを殺したんだ」と思った私。
「ではあのアンナは・・・幽霊か、それともケイトの心が生み出したもの・・?」と頭の中で折り合いをつけながらの帰り道。
劇場でもらったフライヤーの束の中に「『昔の日々』をご観劇されたお客様へ」というフライヤーを発見して読んでみると演出家アシスタント・薛珠麗さんなる方の文で演出ノートの抜粋が記されていて、曰く

今回、デヴィッド・ルヴォーの「昔の日々」はケイトとアンナを一人の女性として設定しています。

アンナは世界に向けた、公の顔。
ケイトは内に秘めた、底知れぬ顔。


目 目 目
これ読んで地下鉄の座席からずり落ちそうになりました。
「え そうだったの!!?」と驚いて、私のイマジネーションや感性もまだまだ未熟だなぁと思ったものです。

が、よく考えれば、このフライヤーは座席に置かれていたので、(私は読まなかったけれど)観劇前に読む人もいた訳で、それってどーよ、という感じ(東京公演では終演後に配られたらしい)。
ひとつの解釈だけを押し付けられているというか、全く観客のイマジネーションを信用されていないですね。
いずれにしても、観客に演出意図を「紙に書いて」説明するという姿勢もいかがなものか。
舞台を「観て」、「感じる」意味ないじゃないか~、と自分の想像力の足りなさはこの際タナにあげて、ひとこと申しあげておきたいと思います。

とはいうものの、謎めいていて、エレガントでかつエロティックなアンナの麻実れいさん、支配する者とされる者、天使と悪魔の両方の顔を使い分けるケイトの若村麻由美さん、その2人に翻弄されるディーリーの堀部圭亮さん・・・3人が紡ぎだす緊張のトライアングルはとても濃密で時に官能的で見応えありました。 
若村麻由美さん、終盤は涙を浮かべた熱演で、カーテンコールでもまだケイトが抜けきっていないようでした。


「演劇は、全ての芸術がそうであるように、我々が既成の障壁を打ち破り、世界を新しいまなざしで見つめられるよう、手助けをしてくれます」とルヴォーさんはおっしゃっているけれど の地獄度 ふらふら ふらふら (total 1201 わーい(嬉しい顔) vs 1205 ふらふら)
posted by スキップ at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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