2014年06月10日

折れた翼 星組 「かもめ」

seagull.jpg現トップスターの柚希礼音さんの10期下。
星組の、タカラヅカの、次世代エースと目される一人 礼真琴さん。バウホール初主演で挑むのは、宝塚歌劇初上演となるロシア戯曲。

宝塚歌劇星組公演 バウ・ミュージカル 「かもめ」
作: アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
脚本・演出: 小柳奈穂子
作曲・編曲: 手島恭子
振付: AYAKO
衣装: 有村淳
出演: 礼真琴   城妃美伶  天寿光希   音花ゆり  
鶴美舞夕  音波みのり  美城れん  美稀千種 ほか

2014年6月1日(日) 11:00am 宝塚バウホール 6列センター


物語: 19世紀末、帝政崩壊直前のロシア。
湖のほとりの静かな村に暮らすトレープレフ(礼真琴)は、前衛劇を創作する作家志望の青年。地主の娘ニーナ(城妃美伶)に恋をし、彼女を主演にした自作の劇を上演しますが、失敗。
ニーナは女優になり有名になりたいという激しい上昇志向を持ち、トレープレフの母である大女優アルカージナ(音花ゆり)の恋人の流行作家トリゴーリン(天寿光希)にひかれ、やがて彼の後を追ってモスクワへ旅立ちます。そして2年後の嵐の夜・・・。

「かもめ」はこのブログを始めてからだけでも2回観ています(藤原竜也版生田斗真版・・・こうして見ると琴ちゃん含めてトレープレフは若いイケメン揃いだな)が、実はワタシ的にそれほど得意ではない戯曲。
小柳先生はなぜこの戯曲を選んだのだろうという思いと、どんなミュージカルに仕立ててくれるのだろうと興味シンシンでしたが、想像していたよりずっと正攻法・・というか原作にかなり忠実。ミュージカルというよりストレートプレイに少し歌入る、みたいな感じで、台詞はもちろん、人物や場面の切り取り方含めてこれまで観た「かもめ」とあまり印象は変わりませんでした。
逆に言えば、チェーホフの戯曲が鉄板すぎて手を加える余地がないのかとも思いました。

ただ一つ違っていたのは最後の場面。訪ねてきたニーナと再会したトレープレフ。
トリゴーリンに捨てられ子どもとは死に別れ、女優への道もままならずやつれ果てたニーナが、それでもなおトリゴーリンを思っていることを知って絶望するトレープレフ。
「私はかもめ」「私は女優よ」という言葉を残しニーナが去った後、静かに自分の原稿を破り捨てるトレープレフ。
その刹那、舞台に無数のかもめが羽ばたき、そのかもめたちの間で、精一杯手をのばして空を仰ぎ、でもそれはまるで傷つき折れた翼のように、翔ぶこともできず、激しく切なく、魂を絞り出すように踊るトレープレフ。
ダンサー・礼真琴 圧巻の踊りです。

礼真琴さんは定評ある歌、ダンスはもちろん、感情表現も細やかでした。
トレープレフはナイーブなマザコン(笑)で、大女優であるママに認められたいといつも思っていて、やっとママとみんなの前で自分の作品を観てもらう日が来たのにママは少しも真剣に観てくれず・・・「ママ、静かにして」「ママ、黙って」と何度も言うトレープレフが、幸せだったのはあの芝居を上演する前までだったなと思うと、トレープレフに引き金を弾かせたのはニーナですが、精神的に一番追い詰めたのは、実はママのアルカージナだったのではないかと感じました。

そのアルカージナは音花ゆりさん。
とてもよかったです。
兄のソーリン(美稀千種)に「若者の自尊心をあんな風に扱っちゃいけないよ」と注意されても、「自尊心? なんのこと?」と答える無神経さというか空気読めない感。
息子のことを思っていない訳ではないけれど、母である前に「女優」で、誰よりも自分を一番愛している女性の傲慢さが下品にならないバランスでよく出ていました。
定評ある歌唱もさすが聴かせてくれます。

ニーナの城妃美伶さんはかわいいし、歌も上手くて熱演でしたが、お嬢様然としたニーナの内に秘めた激しさとか強い上昇志向はちょっと出にくかったかなぁ。
昨年の「ロミオとジュリエット」新人公演に続いて礼真琴さんとのコンビでしたが、ビジュアルのバランスもあまりピッタリしていない印象。

天寿光希さんのトリゴーリンが、いかにも田舎の世間知らずの女の子が憧れそうな、都会的で知的でスマートで、ちょっと遊び人っぽい雰囲気持つイケメンでステキでした。スーツがピシリと決まり、ちょっとした仕草や手の動き、脚を組む動作などがとても洗練されていて綺麗。
鶴美舞夕さんのドールン医師の静かな佇まいも印象的でした。あんな鶴美さん、何だか新鮮。
音波みのりさんが相変わらずの芝居巧者ぶりで、瀬央ゆりあさんメドヴェジェンコがちょっと可哀そうになってしまうくらい頑ななマーシャ(・・にしては些か美人過ぎますが)の雰囲気がよく出ていました。


カーテンコールの礼真琴さんご挨拶。
「本日はバウミュージカル『かもめ』を最後までご覧頂きありがとうございました。あっという間に6月になって前楽もあっという間に終わってしまいました。まだまだ新たな発見を求めてやりたいと思います。千秋楽をご覧にならない方はどうぞスカイステージでご覧ください」(笑)


この公演と柚香光さん主演「ノクターン」のチケ難ときたら・・・95期おそるべし の地獄度 ふらふら (total 1197 わーい(嬉しい顔) vs 1200 ふらふら)
posted by スキップ at 23:16| Comment(2) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
Posted by 履歴書バイブル at 2014年07月04日 11:36
♪履歴書バイブルさま

どうもありがとうございます。
またぜひお立ち寄りっくださいませ。
Posted by スキップ at 2014年07月04日 23:51
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