2014年06月05日
原作というより戯曲 「あしながおじさん」
3月に「ダディ・ロング・レッグズ」を観た時、井上芳雄くんに「この舞台を翻訳した今井麻緒子さんの新訳です。売上の一部はあしなが育英会に寄付されます」と勧められたので買った原作本です。
訳者の今井麻緒子さんはその舞台を演出されたジョン・ケアードさんの奥様ということは知っていましたが、「レ・ミゼラブル」でファンテーヌ役を演じたこともある女優さんだとは存じ上げませんでした。
そもそも、ミュージカルにする題材を探していらしたケアードさんに今井さんが「Daddy-Long-Legs」を手渡されたのがあのステキな舞台が誕生したきっかけだったことも初めて知りました。
「あしながおじさん」
作: ジーン・ウエブスター
翻訳: 今井麻緒子
ピアソン・ジャパン株式会社
2014年3月1日初版発行
舞台の感想にも書いたのですが、ウエブスターの「あしながおじさん」は少女時代の私の愛読書で、「好きな本は?」と聞かれたらいつも「あしながおじさん」と答えていたくらいです。
でも細かい内容はほぼ忘れていて、舞台を観た時に「あ、こんなエピソード?」と思ったことも数知れず(笑)。
その舞台の脚本を翻訳された今井麻緒子さんが訳されたこの原作本は、舞台の香り色濃く、ジルーシャの手紙の文調が台詞そのままで、いろいろなシーンが脳裏に蘇ったり、坂本真綾さんの声に変換されたり。
原作というよりまるで戯曲を読んでいるような感覚でした。
原作と舞台の最大の違いは、ジルーシャから「あしながおじさん」への一方通行の手紙だけで構成されているところ。
そこにジャーヴィ坊っちゃんの反応や心情を乗せたあたり、あの「ダディ・ロング・レッグズ」は本当によく出来た舞台作品だったなぁと改めて感じました。
今井麻緒子さんはこの「あしながおじさん」をこれまでの児童文学というイメージを払拭したいという思いがあったそうです。
この作品が書かれた1912年はまだ女性に参政権を持っていない時代で、「ウェブスターはそういう男女間の不平等に対して声高に言い立てるのはなく、ジルーシャという女性を通して大いなるウイットを持って攻撃している」「あらゆる年代の人が、政治、宗教、哲学といったものをニヤリとしながら考えることのできる物語」だとおっしゃっています。
ナルホド。
「お金のない孤児がちゃんとした教育を受けられないことに心を痛めたため」この小説を書いたというウェブスター。
その世界観やユーモアのセンスは今もイキイキと躍動し、この物語を単にハッピーエンドのシンデレラ・ストーリーではない普遍的なものにしていると思います。
カワイイ挿絵(多分この表紙の絵も?)もウェブスター自身が描いたものなのですって。
「あなたを『お優しいおじさん』と呼ぶのは好きだわ。『お』と『お』、きっちり頭韻を踏んでいますもの」といったような翻訳にも個人的には興味ありました。
これ、原書だどどういう韻なのかなぁ。読んでみようかしら。
これは私が初めて書くラブレターよ。書き方を知っているなんて、おかしいわね? のごくらく度 (total 1195 vs 1197 )
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私も初演を観た後に、以前の訳の原作を読んだのですが、
ジュディの書く手紙が真綾さんの声に変換されたり、
それを読むジャーヴィスの姿が見える気がしたり、
とても楽しめました。
舞台と同じ訳だと、もっと鮮やかに蘇るのでしょうね。
うーん、こっちの本も買っちゃおうかなあ。
あ、原書の韻、私も気になりまして、
実は購入してるのですが、1章で挫折してます(^^;)
「私を離さないで」を読み終わったら、
1日1ページノルマ(弱気な/笑)でまたトライしてみようかな。
この原作を読んでいるとまたあの舞台が観たくなりました。
再演してくれないかなぁ(笑)。
井上芳雄くん、次々出演作が発表されていて忙しそうですけどね~。
お、原書にも挑戦ですか。
1日1ページでもよいので読み進んでいただいて、例の頭韻のところ、
どんな英語になっているのかぜひ教えていただきたいです。
(他力本願 (^^ゞ)