2014年06月02日

空と草と風がひとつになって  「蒼の乱」 大阪千秋楽


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もうずい分前のような気がしますが、劇団☆新感線「蒼の乱」 大楽から明日でちょうど1周間。
全部で4回観たのですが、東京初日・千秋楽・大阪初日・千秋楽と綺麗に揃いました(笑)。
新感線の千秋楽フェチなので、ここ数年、毎公演千秋楽は必ず観ていますが、こんなふうに初日千秋楽全て揃ったのは初めてでした。

劇団☆新感線 2014年春興行 いのうえ歌舞伎 「蒼の乱」
作: 中島かずき/演出: いのうえひでのり
出演: 天海祐希  松山ケンイチ  早乙女太一  梶原善  
森奈みはる  橋本じゅん  高田聖子  粟根まこと  平幹二朗 ほか

2014年5月27日(火)  1:00pm 梅田芸術劇場メインホール 2階6列下手



これまでのレポ:
3/27 東京初日
4/26 東京千秋楽
4/26 東京千秋楽カーテンコール
5/8  大阪初日
5/27 大阪千秋楽カーテンコール


4回観た中でmy bestは5月8日の大阪初日でしたが、東京初日から2ヶ月間で加速度的に熱度が増した舞台。
決してハッピーエンドではないけれど、将門小次郎の言葉のとおり、空と草と風がひとつになったラストは心に爽やかな蒼い風を遺してくれました。

物語全体を振り返ると、やはり「出自なんて関係ない」という言葉が強く印象に残ります。
この作品のテーマは観る人によって、感じ方によって様々だと思いますが、私は「信念に殉じて生きること」と受け取りました。
登場人物一人ひとりが、男も女も、坂東に生まれた者も都にある者も外つ国から渡来した者も、蝦夷であろうとなかろうと、ひとりの「人間」として信念を持って、それに殉じて生きる矜持を私たちに見せてくれたのだと思います。
そして、その姿を見せることで、私たちにも「その覚悟があるか」と問うていたのではないかと。


東京の初日を観た時、役者さん個人への拍手は、天海さん蒼真の登場、じゅんさん黒馬鬼の登場、太一くん夜叉丸の「たとえ一人になろうとも」の退場の3回のみでしたが、さすがに千秋楽は松山ケンイチくん小次郎の登場はじめ各所で拍手が起こっていました。

蒼真の天海祐希さんは、回を追うごとに感情の乗せ方や緩急がより明確になった印象。
小次郎のまっすぐな思いに共感するものの、自分が引き起こした祖国の過ちを繰り返したくないという苦悩を感じさせる一幕。
「坂東を守る」という将門の意志を継ぎ、将門御前として立つ、毅然とした二幕。
そして、将門の思いと自分の運命を受け容れ、ここで生きていくと決意するラスト。

対する将門小次郎・松山ケンイチくんは、大阪初日の感想にも書きましたが、回を重ねてとても存在感が増した一人。
最初から悪い訳ではもちろんありませんでしたが、台詞にも動きにも余裕が出て重厚感が加わり、フラフラして見えた小次郎の未熟さも、共感はできないまでも納得性を持たせるようになっていました。
あの最後の刀を投げる時、そして身体中を槍で突き抜かれながらも見せる澄んだ笑顔は何度観ても涙。

公演期間中ですごく成長が感じられたという点では太刀影の早乙女友貴くん。
東京初日を観た時は、殺陣はもちろんすばらしかったのですが、台詞をしゃべると「あちゃ~あせあせ(飛び散る汗)」という感じ。ハコの大きさに負けていて「友貴くん、死ぬ気でがんばれ!」と思ったものですが、大楽の声の出っぷりと迫力はどうでしょう。
大阪公演中にお誕生日を迎えた18歳。ほんとに若者の吸収と成長の速さには目を見張る思い。おばちゃん、眩しいよ。

その友貴くんのお兄さん・早乙女太一くんは、私の贔屓目を差し引いても、今回またひと回り大きくなった姿を見せてくれたと思います。
東京千秋楽のはじけっぷりにちょっと「・・・」となったのですが、その後読んだインビューに「今回は笑いの部分も任されて・・・」というのがあって、それがいのうえさんの意図でもあったと知り「そうだったのかぁ~」と納得した次第。
いつもスカしてる(笑)太一くんには冒険だったのかもしれませんが、大阪ではそのあたりもずい分ナチュラルになって(・・というか、観る私の方が免疫できた?)、殻を破った観ありました。
研ぎ澄まされたような殺陣は言わずもがな。
夜叉丸のあの最後の叫び「たとえ一人になろうとも蝦夷の意地は貫いてみせるっ!」・・・「たとえ」で一度切って苦しそうに刀をついて、「たとえ一人になろうとも・・」と繋げたところ、まさに鬼神の如くで背中がゾクゾクしました。
大阪初日がmy bestと冒頭に書きましたが、ことこの台詞に関しては、大楽のこの日がイチバンぴかぴか(新しい)でした。


ここで突然ですが、新感線で「蝦夷」「アラハバキ」とくれば思い起こすのは「アテルイ」。
「アテルイ」再演してほしいな、という希望を込めて、妄想配役を。

堤真一さんがやった坂上田村麻呂を中村勘九郎くん。
市川染五郎さんが演じたアテルイを早乙女太一くん。
烏帽子を小池栄子さん。
鈴鹿はそうだなぁ、満島ひかりちゃんか多部未華子ちゃんあたりで。
いのうえさん、いかがでしょうか?(絶対読んでないけど)


・何気に劇団員活躍
と東京初日のリストアップに書いたのに、じゅんさんと聖子さん以外についてあまり書いてこなかったので少し補足。
今回の公演は、客演はちょっぴり少なめ、古田御大が出演していない、ことから、劇団員さん活躍。
このあたりも初日に書いた「昔の新感線を思わせる」につながるところ。
じゅんさん、聖子さんは別格にしても伊予純友の粟根まことさんを筆頭に、山本カナコさん、村木よし子さん、保坂エマさん、右近健一さん、逆木圭一郎さん、河野まさとさん、吉田メタルさん、インディ高橋さん・・。
個人的には、いつ裏切るか、正体を現すかと思っていた粟根さん純友が最後まで気骨のある人物で、殺陣もかなり見せてくれたのが何だか久しぶりで新鮮だったことと、お笑い担当的な村木よし子さん栗毛野が、すべてが終わって坂東に平穏が戻った田植えの場面で、安堵したような笑顔の中、遠くを見つめた寂しげな表情が印象的でした。子を失って悲しまない母はいないけれど、坂東を守ってくれた小次郎を誇りにも思っていたのかな。

エマさんといえば、このツイートが千秋楽終演後かなりRTされていました。
それから高田聖子さんのこのブログ
「大きな怪我も病気も声枯れも、誰ひとりすることなく、笑顔で迎えた千秋楽。ありそうでなかなかありませんのよ。本当に良かった。」

やはりこの公演が天海さんにとって、共演者にとって、新感線にとって、覚悟を持って臨んだ公演で、危機感もあったのだろうと改めて思いました。


・・・と同じことを書き続けてしまいそうなのでこのあたりで幕を引きたいと思います。
「これ、ゲキ☓シネになったら絶対観に行く!」と思ってる時点で私の中の新感線勝ち組作品です。(前々作はゲキ☓シネ スルーして前作は無料の試写会当たったから観たという・・)


ほんとに「アテルイ」再演お願いしますよ のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1193 わーい(嬉しい顔) vs 1197 ふらふら)


posted by スキップ at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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