2014年05月28日

自分しか行けないところまで 星組 「太陽王」

lelois1.jpg


決められた道を歩く~  求められた期待を受け
できるなら期待を超え  自分しか行けないところまで辿りつく~ 

ルイ14世が歌うこの歌詞とメロディが頭から離れません。
これ、そのまんま柚希さんのことじゃない、と思ったら、聴いていて胸が苦しくなりました。
切なくて、愛おしい。

宝塚歌劇星組公演 ミュージカル 「太陽王 ~ル・ロワ・ソレイユ~」
Le Spectacle Musical ≪Le Roi Soleil≫
Produced by ACN, organized by Dove Attia, Albert Cohen and NRJ Entertainment
International Licensing & Booking of ≪Le Roi Soleil≫
G.L.O, Guillaume Lagorce, info@glorganisation.com
脚本・演出: 木村信司
出演: 柚希礼音  紅ゆずる  真風涼帆  万里柚美   十輝いりす   壱城あずさ   十碧 れいや   妃海風  綺咲愛里 ほか

2014年5月24日(土) 11:00am 東急シアターオーブ 1階6列センター/
5月25日(日) 11:00am 1階7列上手



2005年にパリで初演されて大ヒットしたミュージカルの日本初演。
「17世紀のフランス国王ルイ14世=太陽王の生涯を、彼の恋愛に焦点を当てながら、流麗なフレンチロックに乗せて描いたスペクタクル・ミュージカル」なのだとか。
フランスオリジナル版は歌とダンスのみで展開されるそうですが、宝塚版は台詞も入って・・・というか「ナポレオン」よりかなり台詞は多い印象でした。
ルイ14世(柚希礼音)と4人の女性・・初恋の人マリー・マンシーニ(綺咲愛里)、王妃マリー・テレーズ(優香りこ)、愛妾モンテスパン夫人(壱城あずさ)、そしてモンテスパン夫人とルイの子供の養育係フランソワーズ(妃海風)との愛の遍歴を周りの人々との関わりの中で描いています。ルイ14世といえば、ブルボン王朝絶頂期の「太陽王」で、「朕は国家なり」という有名な発言、そしてこの公演ポスターのビジュアルからも、ギラギラした、強気の絶対君主というイメージを持っていたのですが、この作品に出てくるルイは、とても繊細でもの静かで思慮深い人物で、王としてあるべき姿に葛藤し、孤独がつきまとう孤高の人でした(どこまで史実に忠実なのかわかりませんが)。
特に一幕の、まだ母のアンヌ皇太后(万里柚美)、枢機卿マザラン(十輝いりす)の摂政政治時代の心に孤独を抱えたルイはまるでガラス細工のよう。
この太陽王となる前の、物静かで穏やかに話す柚希さんルイがかなり好き。これまで観てきたどんな柚希さんとも違う新しい一面を見せていただきました。
マリーへ求愛も情熱を秘めながらも静かで、いつもの肉食系ではなく(笑)。
「誰からも何も与えられない私にあなたの手を」なんてあんな表情であんなに優しく穏やかに言われたらねー揺れるハート(陥落)。

ただ一人心を許せる人だったマリーとの恋を引き裂かれ、一幕終わりに歌う♪あなたを幸せにもできず 国を治めるなどと 私は王と名乗る道化なのだ このままでは・・・歌い上げてこぶしをギュッと握りしめて顔を上げ、前を見据えるルイ。多分あれが「太陽王」誕生の瞬間。

初々しくて可愛い綺咲さんを壊れもののように大切に扱い、情熱的で妖艶な壱城さんとは大人の男と女の雰囲気を醸し出し、歌うまの妃海さんとの美しいデュエット・・・今回の公演は相手役の夢咲さん不在ということで、いろんな女性と組む柚希さんも新鮮。

ルイ14世はバレエ・アカデミーを創った王ということで、冒頭とラスト、柚希さんの華麗なダンスも堪能できます。
まるでそこにあるのが当然のように軽々とまっすぐ天井に向かって脚が伸びるアラスゴンド、脚を前後に一直線に開脚して高くジャンプし足音ひとつたてずに着地するグランジュテ、軸のぶれない美しいターンを描くピルエット。
優雅でしなやか、ダイナミックで強靭。柚希さんの肉体そのものがひとつの芸術品のよう。
戦闘場面のダンスもすきだったな。右手で剣を構え、上に挙げる左手の指先の一本一本まで美しい。

衣装(有村淳)や髪型が凝っていてカラフルで独特。
柚希ルイ14世は踊る時とお芝居の時は違う髪の色だったり、戦闘場面でも少しアレンジした髪型ですがどれもよくお似合い。相変わらず髪型のセンスいいです。
ダンスの時の全身金色(笑)の衣装もステキでしたが、二幕冒頭の紺色の王の衣装、カッコよかったなぁ~。

紅ゆずるさんの弟君ムッシューは虹色の髪やグリーンでキラキラのアイシャドー、左右色の違う手袋など細かく見ていればキリがないくらい楽しい。
ムッシューはそのキャラクターで少しお笑い担当みたいになっていましたが、実は難しい役まわりをさらり品よく演じて好感。
ルイが危篤に陥った時、後継者に選ばれそうになった時、目だけで「ええっ目 僕?」という表情を見せてさすがでした。その後の「Non!Nooooon!!」もよかったな。
5/24は二幕、客席最前列の人たちに手をのばして握手する場面で、反応しないお客様に「あなたよ」と言ってもまだ手を出してもらえず?暗転直前ポーズ決めながら「なんで?!」って叫んでました。

楽曲は、「ロミジュリ」ほどキャッチーな曲でもなく、バラード調の曲が多いという印象ですが、フレンチ・ロックってこんな雰囲気なのかな。
アンヌ皇太后とマザラン枢機卿は全く歌のない役で、この二人の場面が多い一幕は1回目観た時何だか長く感じて「どうしようかしら」と思いましたが、二幕はドラマとしても内容濃く、ショーアップされた部分も多くて楽しい。

柚希さんが歌う曲以外では、マリー・テレーズにフランソワーズが歌う「私は私を」が印象に残りました。
♪愛せるものを愛することにしました 花を鳥を青空を街ゆく子どもの笑顔 私は私を許したのです って歌詞もいいし、妃海さんの美しい声にも合っていました。
妃海さんは今回メイクの雰囲気が変わって大人っぽくなっていてステキでした。最後にルイがひざまづいてプロポーズするところでは目には涙があふれていて。

真風涼帆さんは、ルイの従兄弟ながら民衆の側に立ちフロンドの乱にも加担するボーフォール。
長身が舞台に映え、衣装も雰囲気も宮廷の人たちとは一線を画した精悍で雄々しい男役っぷり。彼の最後の姿に「あ~、この人が『仮面の男』に結びつくのね~」と彼方の雪組公演を思い出したり。

同じく長身の十碧れいやさんは財務総監コルベール。
「コルベール」って世界史の授業で名前聞いたことあるよね~と思い出しました。
イケメンに似合わず(笑)いつも厳しいこと言っていましたが、マリー・テレーズ崩御の場面ですがりつくルイ14世を「王族は人の臨終に立ち会うことは許されておりませんっ!」と遠ざける毅然さがとりわけ印象的でした。

今回男役さんが女役を演じている方が2人。
ルイ14世の愛妾モンテスパン夫人の壱城あずささんと黒魔術を操る魔女 ラ・ヴォワザンの夏樹れいさん。
元々お美しい2人ですが、迫力があって力強くて強烈な個性を発揮。ここに男役起用はナルホドと思いました。歌もよかったです。

男役さんたちが一転して黒燕尾で踊るフィナーレはお得感満載ですが、一人残った柚希さんに綺咲さん、妃海さんがヒラヒラとからんで歌う ♪へ・い・か・だ・け に全部持ってかれちゃった感じ(笑)。


lelois.jpg王妃マリー・テレーズが亡くなり、 「王であることに疲れた」と失意の柚希ルイの目から涙がひとしずく。
冒頭に書いた「決められた道」の歌詞 
『決められた道を歩く 求められた期待を受け できるなら期待を超え 自分しか行けないところまで辿りつく』
が訳詞なのか宝塚オリジナル歌詞なのかわかりませんが、柚希さんにあまりにもハマり過ぎていて、この役は柚希礼音がやるべくしてやる役だったんだと痛感しました。



本編ラストのダン、ダン、ダンという柚希ルイのスリーポーズ、カッコよかったぁムード のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1189 わーい(嬉しい顔) vs 1195 ふらふら)S
posted by スキップ at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック