2014年05月20日

その人は紫の影  宙組「ベルサイユのばら」 朝夏まなとアンドレ編


palerose1.jpg1974年の初演以来繰り返し上演されてきた宝塚歌劇「ベルサイユのばら」。
99周年-100周年メモリアルイヤーで昨年1月から4作目の上演。さらにこの後、花組の中日劇場公演と宙組の全ツも・・とあって、いささか食傷気味ではありますが。


宝塚歌劇宙組公演 宝塚グランドロマン
「ベルサイユのばら ―オスカル編―」 Aパターン
原作: 池田理代子
脚本・演出: 植田紳爾  演出: 谷正純
出演: 凰稀かなめ  実咲凜音  朝夏まなと  
緒月遠麻  七海ひろき  蓮水ゆうや  澄輝さやと  
凛城きら  愛月ひかる  蒼羽りく  伶美うらら  
寿つかさ  汝鳥伶 ほか

2014年5月6日(火) 3:00pm 宝塚大劇場 1階24列上手



今回の「ベルサイユのばら」は2パターンの役替り。
まずはAパターンから拝見しました。

             A            B
アンドレ:     朝夏まなと       緒月遠麻
ジェローデル:  七海ひろき       朝夏まなと
アラン:       緒月遠麻        七海ひろき


宝塚の「ベルサイユのばら」は上演ごとに、また出演者ごとに脚本を変えていて同じものはないのだとか。
今回の「オスカル編」も新しい場面や、削られた場面などありましたが、私が最初に観た頃の「ベルサイユのばら ~アンドレとオスカル~」あたりが一番バランスよかったなぁと思っています。いくらオスカル編とはいえ、アントワネットもフェルゼンも出て来ないのは「ベルばら」といえるのかしら?
上演回数を重ねるほどに「観る人はベルばらを知っている」前提のもとに脚本が書かれているという印象が強くなります。

冒頭のオスカル誕生(文字通り、本当にお母さんが出産するところ)の場面、平民議員が三部会の会議場から締め出される場面、オスカル編初見なので、肖像画から抜け出てペガサスに乗って羽撃くオスカルも私は初めてでした。
三部会のシーンはオスカルとともにジェローデルの見せ場にもなっているのでまぁアリとして、あとの2つの場面、必要ですかね?(暴言)
そして、「オスカル」編を際立たせるためか、アンドレの場面とアンドレの口数がとても少ない。オスカルの最期にアンドレが迎えに来ないのも何だかな~。
「ベルばら」にはここは絶対削っちゃダメ、という場面、あると思うのです。
同時に、せっかく追加するならこんな場面を、というのもね(オスカル女装(笑)
して仮面舞踏会に行くシーンとかベルナールとの関わりとか・・)。


相変わらず平面的でカーテン前ばかりが目立つ演出や、説明台詞の多さにも辟易。
アンドレの目が見えないことが衛兵隊員たちに発覚する場面でも、「アランだって辛いのにお前のためを思って言ってるんだ」とか、台詞で言われなくてもわかりますから。
衛兵隊といえば、最初オスカルが赴任した時は軍服のボタンをとめてなかったり、腕まくりしていたりして隊士たちが、二幕最初の訓練の場面ではきっちり首までボタンとめて・・というのが荒くれの隊士たちがオスカルに心酔して統率が取れていったのがよくわかるところだったのに、最初からきっちり軍服を着ているのもどうでしょう(雪組版でもそうだったけれど)。
平面的といえば、小池修一郎先生が演出した「ナポレオン」では常にセリや盆が動いていてとても立体的だったので、このベルばらを観ると紙芝居と3Dくらい違うという印象を持ちました。

・・・と脚本や演出には不満タラタラ。


が、凰稀かなめさんのオスカルは超絶美しく、文句なくカッコよかったです。
あのブロンドも、色といい長さといいカール具合といい、とてもオスカル(笑)。
昨年の雪組特出の時、「『外見は氷のようなのに内面は火の玉のよう』というアンドレの言葉そのままのオスカルでした」と感想を書いたのですが、今回もまさにその通り。
凛としていて激しくて、クールだけど熱い。前回よりもさらに感情の起伏が激しいオスカルでした。
三部会会議場の前で銃を向けられて「私の屍を越えて行け!」と叫ぶ場面の激しさ、そしてアンドレを亡くした後の慟哭から「シトワイヤン!行こう~!!」への迫力はまるで鬼神の如くでした。

朝夏まなとさんのアンドレ。
今回の脚本のアンドレはいささか「影」にしすぎていて、見せ場や台詞が少ないためにちょっとワリを食った感じがします。もちろんこれは朝夏さんのせいではありません。
美しい男役さんで品もあるので、平民には見えないかな、といった面もあって、オスカルを黙ってじっと見守る「紫の影」といった印象。
個人的にはラインハルトに対するキルヒアイスのイメージがちょっと重なちゃったかなぁ。
歌もよかったですが、フィナーレの黒燕尾のカッコよさには度肝抜かれましたよ。

Bでそのアンドレを演じる緒月遠麻さんはAではアラン。
緒月さん好きなのでアンドレも楽しみにしているのですが、アランもとてもよかったです。
強そうで、元貴族の品も思慮深さも、そして屈折も感じられるアラン。
今回はアランもオスカルに思いを寄せていることが結構わかる脚本になっていて、その思いを込めてソロで歌うPale Rose/蒼きバラ(新曲かな?)もステキでした。

もう一人の役替り、七海ひろきさんはジェローデル。
端正で美しく品のよいジェローデルでした。
オスカルに求婚して身を引くいつもの場面に加えて、オスカルの「屍を・・」の場面で「どうしてあなたの前で武器を持たない民たちに銃を向けることができるでしょう」という見せ場もよかったな。

娘役にはあまり目立つ役がないのですが、中でも実咲凜音さんは綺麗で実力もあって、今のトップ娘役の中で一番歌うまさんなのに、巡り合せでこれ!といったヒロインが回ってこなくて何だかお気の毒です(某花組娘役さんと違い過ぎる)。
台詞も歌も、彼女のやわらかな声がとても好きです。ロザリーかわいいし、プロローグもフィナーレも美声を響かせてくれているけれど、トップ娘役が2作続けてエトワールというのもいかがなものか。
伶美うららさんもジャルジェ家の次女であまりしどころのない役ですが、薄紫のドレスがよくお似合いで美しさ際立っていました。

ロベスピエールきれい~、誰?(・・・何せ後方席だったから)と後でプログラム見たら澄輝さやとさんでした。
そのロベスピエールがトリコロールの旗を振ってベルナール中心にシトワイヤンたちが歌う♪愛する者のために~ は重層的で厚みのある宙組のコーラスを久しぶりに堪能。
ダンスではオスカルの天国の場面でトゥを履いて踊るバレエの美しさが印象的でした。


今回のフィナーレ、凰稀かなめさんはすべてオスカルとして登場という趣向のようですが、バラのタンゴはいいとして、黒燕尾はどうかな~。
特に髪を下ろす前、あのブロンドに白い薔薇をさしてアップにしているところは何だかマダムみたいに見えなくもなかったし。
フツーにボレロでよかったのでは・・(再び暴言)。


IMG_1308.jpgこの日は「母の日スペシャル&キューピー貸切」だったのでお土産つき。こちらキューピーマヨネーズ 宝塚バージョン。
いつものマヨネーズも何となく華やか。



結論: 小池先生か小柳先生演出でベルばらが観たい(三たび暴言) の地獄度 ふらふら (total 1183 わーい(嬉しい顔) vs 1191 ふらふら)


posted by スキップ at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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