2014年05月16日

「蒼の乱」 大阪初日


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4月26日の東京千秋楽から12日目の大阪初日にして3回目の観劇。
舞台は驚くべき進化を遂げていました。
以下は、幕間と終演直後のワタシのツイート。

・蒼の乱 すごくよくなっている。登場人物一人ひとりが物語の中でくっきり生きていて、初めてこの舞台好きだぁと思えました。ま、今日の座席が my best seat というのもありますが。
・すごくよかった蒼の乱。将門小次郎の最期 泣いちゃったよ。チケット追加したくなって困るじゃないか。

劇団☆新感線 2014年春興行 いのうえ歌舞伎 「蒼の乱」
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
美術: 堀尾幸男   照明: 原田保  衣裳: 小峰リリー 
音楽: 岡崎司   作詞: 森雪之丞、いのうえひでのり
出演: 天海祐希  松山ケンイチ  早乙女太一  梶原善  森奈みはる  橋本じゅん  
高田聖子  粟根まこと  平幹二朗 ほか

2014年5月8日(木) 6:30pm  梅田芸術劇場メインホール 1階6列センター



舞台の魅力は「一期一会」につきると思っている私は、基本的に「プロなら最初から完成されたものを見せるべき」派。誰もがリピート観劇できる訳ではないのですから。
同時に、「一度でちゃんと全部感じ取れよ、自分」という責任も自分自身に課したいと思っています。
だけどそうは言っても生身の人間がやることですから、その日によっても、回数を重ねることによってもいろんな変化が生じて来るのは無理からぬことで、そこにナマの舞台の醍醐味があるとも言えるでしょう。
いや~、しかし、この舞台の進化と深まりっぷりったら。


芝居そのものも役者さんの演技も進化していましたが、中でも著しいのは松山ケンイチくんではなかったでしょうか。
無垢で一本気で相変わらず軸の定まらないバカ者ではあるのですが、すごくスケール感が増していて、大らかで男気あふれる将門小次郎。
そんな将門だからこそ、愛する蒼真と坂東の地を守るために自らの運命を受け容れ、潔く命を投げ出す最期には思わず落涙。あの突き抜けるような笑顔。

早乙女太一くんの殺陣が際立ち過ぎていてどうしても比較されてしまいがちですが、将門の荒削りながら重量感のある殺陣はいかにも坂東武者らしくて好きです。大河ドラマで清盛やってた頃は「無頼の高平太」だったのですものね。
カーテンコールで天海さんや客席に向かって拍手する笑顔にご本人の満足感、達成感が表れていると感じました。


最初に観た時いろいろツッコミどころはあると思ったのですが、その最大のものは「常世王は巫女のみずち(山本カナコ)の妖術を使ってまでも蒼真を将門から遠ざけよう、何なら殺そうとしたよね?それが手のひら返したように同盟ってどういうこと?」というものでした。
これは、蒼真が危険を承知で常世王に会いに行き、兵を貸せといい、アラハバキの剣を手にする場面を観て今回ストンと肚に落ちました。
「出自など関係ない」「虐げられる蝦夷を救おうとするあなたが外つ国の女だからと私を差別するなんて・・」という蒼真の言葉に、公家の生まれながら蝦夷の窮状を見て立ち上がった自分を重ね合わせたのではないかと。


もう一人、印象が少し変わったのは高田聖子さん演じる桔梗。
桔梗はいつも蒼真とともにあって、特にドラマティックでも悪役でもなくて(前半はお笑い担当でもあるし)、これまで聖子さんが演じてきた役からするとちょっと物足りないかなというのが最初に観た時の印象でした。
でも、桔梗の目はいつも真実をまっすぐ見据えていて、多くを語らないけれども時に蒼真に語りかける一つひとつの言葉が観ている私たちの気持ちを代弁しているようで共感。
最後に蒼真が「ほんとにバカなんだから」と嘆くのを聞いて「でもあの男の目的はただ一つ。いつもあんたを守ることだけだよ」と桔梗の言葉にまたナミダたらーっ(汗)
それと同じ目を持っているのが黒馬鬼で、だから黒馬鬼は最初から桔梗に心を寄せたのかもしれないなと思いました。


3回観て今回が一番よかったし感動もした訳ですが、もちろん回数を重ねて自分の理解が深まっていることはあるとして、座席の要素も大きいと思いました。
実質5列目の本当にど真ん中の席で、梅芸は5列目から段差がついているので遮るものもなく視界良好。舞台から近い席でセンターだとまるで役者さんたちが自分に向って演技しているように見えますよね~。
「その愚かなことをする男がいた。私は、その男のそんなところがたまらなく好きだった」という蒼真の目に光る涙も直接ガン見。

音響もよいので台詞も歌詞もよく聞き取れます。
前回レポに書いた「ミルク→クルミ」なんて、♪クルミしか食べるものがない~ って歌ってるの、今回初めて気づいたもん(笑)。
登場人物の少ない台詞劇なら少しでも前列がいいけれど、新感線くらいスケールの大きな舞台では5列~10列がベストポジションだなぁと改めて思いました。“とちりセンター”とはよく言ったものです。


空の風に吹かれ草の海の中、坂東の大地に立って「ここで生きていく」と宣言する蒼真。
たくさんの人が血を流し、涙を流して守ってきた大地。坂東も、そして日本という国も、こうして人々によってつくられてきたのだと感じさせるスケールの物語。
カテコ最後、天海祐希さんはヒューヒューという歓声に応えて下手袖であの美しい一礼をして、左手拳突き上げてくるりと回って弾むようにはけて行かれました。


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危うくチケット買い足しそうになったけど思いとどまった自分をほめたい のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1083 わーい(嬉しい顔) vs 1088 ふらふら)
posted by スキップ at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップさん、こんばんは。
松山くんの将門、そんなに大きくなっているんですね。
彼の存在感がこの物語の軸ですから、それは素晴らしいv
もちろん桔梗の在り方も。
舞台の魅力は「一期一会」、というのは私も心から同意いたします!
でも、こういう風にいい方向に進化していく舞台は、
やっぱり観ていて嬉しくなりますよね。
私も今の時点でもう1回観てみたかったです。
Posted by 恭穂 at 2014年05月22日 20:47
♪恭穂さま

松山ケンイチくんの将門小次郎、最初から悪くなかったですが、
ワタシ的には「大化けした」というくらい印象アップしました。
余裕も出てきたのかな。
それとともに小次郎自身の魅力も増幅されていて物語にも
厚みが加わるという、まさに好循環ですね。

私は最後にあと1回、大楽を観る予定ですので、更なる進化を
楽しみたいと思います。
Posted by スキップ at 2014年05月22日 23:47
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