昨年、織田作之助生誕100年を記念して上演された音楽劇。
松竹座のチケットを取っていたのに仕事のため観に行けず、早々の再演を知って張り切ってリベンジしました。
ミュージカル「ザ・オダサク 愛と青春のデカダンス」
脚本: 金秀吉
脚色・演出: 錦織 一清
音楽: 岸田 敏志
出演: 内博貴 愛原実花 浜中文一 室龍太
松岡卓弥 榊原徹士 コング桑田 新納慎也
姿月あさと 髙汐巴 ほか
2014年5月3日(土) 4:00pm 南座 1階1列下手
昨年 森山未來くん主演でドラマ化された「夫婦善哉」の作家として有名な織田作之助。
このミュージカルでは、昭和初期、京都三高時代から始まり、戦後、流行作家として命を削るように作品を発表し、33歳で亡くなるまでを、献身的に支えた姉のタツ(姿月あさと)や妻・一枝(愛原実花)、三高の先輩で劇作家の森本薫(新納慎也)など取り巻く人々とともに描かれています。また、オダサクと「吉田山烈風隊」と名乗った三高時代の仲間たちとの青春物語にもなっていました。
ショーアップされたステージで、歌はもちろん、ダンスシーンもたっぷり。
内博貴くんを中心に若い出演者が歌い踊る舞台はエンタテインメント性豊か。
その分、“ドラマ”の部分・・オダサクや周りの人たちの生き方や人物の掘り下げは浅めで、戦争をはさんだ昭和という時代の香りはいささか希薄だったかなぁ。織田作之助が「可能性の文学」で当時の文壇の大御所 志賀直哉を痛烈批判して物議を醸すくだりで、コング桑田さん扮する志賀直哉が♪けしから~ん 実にけしから~ん と歌い上げるのがすごい迫力で、「オダサク、どうなっちゃうの?」と心配になったくらいですが、特にその後は描かれず。
森本薫とのライバル関係も、森本の方が一方的に敵対心を燃やしているような画一的な描き方に感じられました。
また、太宰治、坂口安吾とオダサクで「俺たち三人無頼派」みたいなシーンも取ってつけたようにチラリと出てくるだけで、このあたりは主題が置かれていないとはいえ、表層的な印象でした。
演出でもう一つ。
最初にMC入って役者さん紹介したり、大しておもしろくもないギャグが盛り込まれたりするのが、とても既視感(早乙女太一くんのいくつかの舞台や、最近では勘九郎くん主演の「真田十勇士」)。
で、ワタシはこういった演出が致命的に苦手(笑)。
若者グループの対立を表すダンスが「ウエストサイド物語」風でとてもカッコイイのですが、「あれはメリケンあたりで西の端の物語として流行りそう・・」とか説明されるの全く蛇足だと思います。
と、脚本や演出への不満はありますが、役者さんは皆さん熱演です。
主演の内博貴くんは文句なしにカッコいい
内くんありきの舞台といってもいいくらいです。
激しいダンスはもちろん魅せてくれますし、内くんの歌をソロでちゃんと聴くの初めてだったのですが、甘く優しく綺麗なお顔立ちから受けるイメージとは裏腹に、声も歌い方も骨太な印象。♪デ~カダンス と歌う主題歌「デカダンスの扉を開けて」はとても耳に残ります。
演技も台詞もしっかり。ネイティブなので大阪弁も全く違和感なくて、最初の登場の時、呼びかけられて「ああ、ええよ」と応えるイントネーションがとてもいいカンジで「男の人のやわらかな大阪弁、好きだなぁ」と改めて。
華も実もあるスターで、ジャニーズ色抜きの舞台でも観てみたいと思いました。
美少年好き(?)の蜷川さんが呼ばないのが不思議なくらい。
愛原実花さんは可愛いし相変わらずのびやかなダンスはステキでしたが、歌はもっとがんばろう。大阪弁もがんばって。
これに対して宝塚の先輩お二人・姿月あさとさんと高汐巴さんはさすがの存在感。
姿月さんのタツお姉さんの気風の良さとオダサクへの愛情と一枝への複雑な思い。
カフェ ハイデルベルヒのマダム 高汐巴さんの華やかな押し出しと戦後の哀しさの対比。
もう一人、おそらく杉村春子さんをモデルにしたのであろう女優さん役の方がとても綺麗なソプラノの歌声を聴かせてくれて印象に残ったのですが、調べてみたら華城季帆さん。この方も元ジェンヌさんだったのですね。
オダサクが愛した丸福珈琲店の苦いコーヒー。
オダサクが愛した自由軒のまぜカレー。
オダサクが愛した正弁丹吾亭のかんとだき。
「夫婦善哉」にも法善寺横丁にも、そしてもちろん織田作之助にも思い入れのあるワタシ的には、そのあたりの空気感はもう少し盛り込んでいただきたかったかなぁ。
この日は客席にヒガシがいたらしいと後で知りました の地獄度 (total 1182 vs 1186 )
2014年05月13日
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