2014年05月10日
豪華贅沢コラボレーション 「伝統芸能の今 2014」
2009年に猿之助さんと三響會(亀井広忠・田中傳左衛門・田中傳次郎の三兄弟)が「がんの子どもを守る会のゴールドリボン基金」のチャリティのために始めた公演。
昨年からは「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」にも寄付を行っていて、観客である私たちも、チケットを買って座席に座ることで、ワクチンを1本寄付したことになるそうです。
ゴールドリボン+世界の子どもにワクチンを
チャリティー企画 「伝統芸能の今 2014」
一、上妻宏光 演奏 「津軽じょんがら節」「紙の舞」
二、創作 「三番三」
茂山逸平 上妻宏光 亀井広忠
田中傳次郎 田中傳十郎
三、創作 「空破」
市川猿之助 上妻宏光 田中傳次郎
四、創作舞踊 「風林火山」
市川猿之助 上妻宏光
五、トーク
市川猿之助 上妻宏光 茂山逸平 亀井広忠 田中傳次郎
六、歌舞伎と狂言による「石橋」
市川猿之助 茂山逸平 亀井広忠 田中傳次郎 ほか
2014年5月10日(土) 3:30pm 京都芸術劇場 春秋座 1階2列下手
劇場に入ると、ロビーでは出演者の皆さんが募金と物販をしていらっしゃいました。
私はこの公演初めてだったのですが、目的がチャリティなのでいつもそうなのかな。
キリッと浴衣をお召しの猿之助さんと上妻宏光さんが募金コーナー、その向かいではプログラム販売 亀井広忠さんがお金を受け取り、田中傳次郎さんが品物を渡し、茂山逸平くんが「ありがとうございました」と言う、みたいな流れ(笑)。三人とも黒紋付に袴姿。
端正なお顔の広忠さんがとびきりの笑顔で迎えてくださるのでちょっと照れてしまいました。「パンフレットだけじゃありませんよ。何と手ぬぐいもついてます!」という逸平くんの声がロビーに響き渡っていました。相変わらずよく通るいい声です。
幕が開くと舞台中央に上妻宏光さん。
「津軽じょんがら節」とご自身が作曲されたという「紙の舞」を演奏。
上妻さんは2009年のレチタ・カルダ「義経」に出演されていて演奏はお聴きしたことありましたが、津軽じょんがら節は初めてで、とても小気味よい演奏はいつまでも聴いていたいくらいでした。
上妻さんは「和楽器なので歌舞伎や能・狂言と共演することも多いと思われがちですが津軽三味線はほとんどそんな機会はないので今日は楽しみにしてきました」とおっしゃっていました。
続いて「三番三」
この演目が個人的には今日のベスト。すごくよかったです。
歌舞伎でも文楽でも、そして狂言でも何度も観たことがある「三番三」ですが、茂山逸平くんが舞う三番三に、上妻宏光さんの津軽三味線、亀井広忠さんの大鼓、田中傳次郎さんの小鼓、田中傳十郎さんの笛という迫力の演奏のコラボレーション。
お能をあまり拝見する機会がありませんので、今日は特に能楽囃子方 亀井広忠さんの大鼓のカッコよさにヤラレました。
ちょうど私の席の目の前が広忠さんで、その演奏に釘づけ。あの突き抜けるような音色は何なんでしょう。澄み切っていて、それでいて空間を支配するような響き。
演奏中の「ぃよーおっ」「ハッ!」というかけ声がまたカッコよくてね。とてもあの端正な(大切なことだから二度言いました)お顔からは想像つかないくらいの気合と迫力。
逸平くんの三番三もすばらしかったです。
衣装や小道具はなくてほぼ素踊りなのですが、声がいいのはもちろん、ダンダンッと床を踏み鳴らす力強い音、かと思えばまるで水鳥が湖を行くように音もなくスーッと前へ進む緩急。こめかみから汗を滴らせての熱演でした。
上妻宏光さんの三味線と田中傳次郎さんの太鼓に猿之助さんが素踊りで加わる「空破」と創作舞踊「風林火山」
「風林火山」の方はあの聞き覚えのあるテーマ曲をテープで流しながら上妻さんの三味線を重ねる、という趣向でしたが、聴いていて「そうだ、あれって演奏 上妻さんだったな」と思い出したのでした。
ここでは猿之助さんのとても繊細でしなやかで、やわらかいのに鋼の強靭さを持つような美しい手、特に指の表情にホレボレ。
休憩をはさんでトークコーナー
猿之助さんの襲名披露公演の時のあの福山雅治さんが描いた緞帳の前で、下手から田中傳次郎さん、亀井広忠さん、市川猿之助さん、上妻宏光さん、茂山逸平さんという並び。
今年は今日の公演が最初ということで「トークは何も考えていない」そうです(笑)。
このチャリティ公演を始めた意図や募金の呼びかけ、グッズや信玄弁当の宣伝などが多かった中、印象に残ったのは・・・
上妻さんが初参加ということで、感想を聞かれた茂山逸平くん。
「能、狂言には三味線はないんです。これがまたすごい音量で・・・」
「邪魔だってこと?」とすかさずツッコむ上妻さん。
「三味線の音色が耳に慣れなくて、向こう(下手)に行くと今度は二人(広忠さんと傳次郎さん)のイヨッとか掛け声と鼓で笛が聞えなくて、早くあっち(上手)帰りた~いと思って・・」と。
あの三番三にそんな苦労があったとは(笑)。
お能の場合、誰が調子取るの?という猿之助さんの質問に、「大鼓、つまり私の楽器と地謡いのリーダーの二人で。でも歌舞伎に行くと立鼓が一番で、ほんとはこの間(広忠さんと傳次郎さんの間)にいるちょっと丸い・・のが一番で太鼓が二番で私は三番目」と広忠さん。傳左衛門さん、くしゃみしていらしたのでは?
津軽三味線は元々目の不自由な方のものだったので楽譜はないという話題から、「林英哲さんが以前ベルリンフィルと共演した時に即興で太鼓を演奏して好評だったのだけど、それを全部楽譜に起こした人がいて、再演の時、これと同じにやってくれと言われてすごく困った、仕方がないから一から覚えた」なんていうお話もとても興味深かったです。
「では、私はこれから早づくりをして・・」と猿之助さん。
昨日舞台稽古をしたんですが、『石橋』ほんとに豪華なんです」と。
「石橋」は歌舞伎と狂言のコラボレーション。
上手に黒紋付の囃子方さんたちが二段にズラリと並び、中央には大輪の牡丹の花々に彩られた石橋。
逸平くんが白いお髭の仙人で登場して名調子の中に少しほっこり笑わせてくれた後、猿之助さん獅子の精が中央からセリ上がってきました。
キリリと綺麗な隈取した猿之助さんも、美しい軌跡を描く毛振りも何だか久しぶりに観ました。白い毛先の一本一本にまで神経が張り巡らされているようなキレのある獅子の動き。猿之助さんの真骨頂です。
広忠さん中心の演奏も迫力で、猿之助さんがおっしゃっていた通り、とても豪華で夢のような一幕でした。
限定1個で販売された広忠さんご使用済の大鼓の革(?)
これは消耗品なのだそうです。広忠さんが購入された日付入りで裏には出演者全員のサインが。
購入された方に写真を撮らせていただきました。
こんな贅沢なコラボレーション 他では観られませんね
のごくらく度 (total 1181 vs 1183 )}≥
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昨日は思いがけずお会いできて嬉しかったです。終演後には、素敵なカフェでお茶までご一緒でき、楽しい午後でした。
早速の素晴らしいレポに感嘆しています。短時間でしたが、インパクトのある公演でした。
猿之助さんが募金コーナーにいらしたのですね。私がさせていただいた折りはスタッフさんだけでした。残念というか、おられたら、逆に募金できなかったかも(^^;;
こちらの方こそ、思いがけずお目にかかることができて
とても楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。
レポはねぇ~^^;
取りあえず忘れないうちに書いてしまえと思ってざくっとした
ものになってしまったのですが、ほんとに短い時間で
内容の濃い見応えのある公演でした。
猿之助さん、募金は開演前結構ぎりぎりの時間まで
いらっしゃいました。
いつになく(笑)ニコニコ笑顔をふりまき、「ありがとう
ございました!」とおっしゃってくださったいましたよ。