2014年05月07日

私はほんまにええ星の下に生まれましたわ 四月文楽「七世竹本住大夫引退公演」

bunraku201404.jpg最後の「桜丸切腹の段」を語った後、皆様に直接ご挨拶を、と舞台に立った住大夫さん。
「89歳になるこの年まで68年間、大夫を勤めさせていただきました。私はほんまにええ星の下に生まれましたわ。このようににぎやかに引退させていただき感謝しております。私が去りました後の文楽にも叱咤激励、お引き立てをお願いいたします」

長年ともに舞台を勤めてきた吉田簑助さんが桜丸の人形を伴って花束贈呈に登場すると、それまで淡々と話していた住大夫さんがくしゃっと表情崩して泣き顔見せたのを見てもらい泣きたらーっ(汗)

私の席からは袖で見守るお弟子さんの小住大夫さんが白いハンカチで何度も涙を拭っているのが見えて、またナミダ。
住大夫さんと握手したりハグしたり、袖に引っ込む間際には振り返って手を振る、茶目っ気たっぷりな桜丸にまたまた泣き笑いもうやだ〜(悲しい顔)わーい(嬉しい顔)

国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫引退公演
通し狂言 菅原伝授手習鑑 第ニ部
三段目  車曳の段/茶筅酒の段/ 喧嘩の段/ 訴訟の段
       引退狂言 桜丸切腹の段
四段目  天拝山の段/ 寺入りの段/ 寺子屋の段
出演: 太夫/竹本住大夫  豊竹英大夫  竹本津駒大夫  豊竹呂勢大夫  豊竹咲穂大夫  竹本文字久太夫  豊竹芳穂大夫  豊竹嶋大夫 ほか
三味線/竹澤團七  野澤喜一朗  鶴澤藤蔵  野澤錦糸  鶴澤清友  豊澤富助 ほか
人形/吉田簑助  吉田文雀  桐竹勘十郎  吉田玉女  吉田和生  吉田文司 ほか

2014年4月27日(日) 4:00pm 国立文楽劇場 1列下手


四月文楽公演は「菅原伝授手習鑑」の通し上演。
前週に四国こんぴら歌舞伎で半通しを観たばかりでしたので、よい補完になりました。
(本当は一部から通しで観たかったのですが、前日東京遠征でこの日の朝帰阪しましたのでさすがに自重いたしましたの。)住大夫さんの引退狂言は「桜丸切腹の段」。
文楽廻しが廻って住大夫さんと長年の相三味線・錦糸さんが登場すると万雷の拍手。
桜丸を吉田蓑助さん、妻 八重を吉田文雀さん、二人の人間国宝が人形を遣って華を添えます。
夫の切腹の覚悟を知って嘆く八重に白太夫が「泣くない」と言い、八重が「アイ」と応える。「泣くない」「アイ」「泣くない」「アイアイアイ」・・・このやり取りを聴いているだけで涙がじわっと溢れてきました。
住大夫さんはさすがにかつての豊かな声量や声の張りはないのかもしれませんが、何とも滋味あふれる語りで、白太夫が、八重が、桜丸がそこに生きて話しているよう。
桜丸が切腹した後、白太夫が鉦を打ち鳴らしながら「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏・・・」と念仏を唱える声は胸に迫り、息子を、夫を、目の前で死なせてしまわなければならなかった二人の切なさ、身を切られるような辛さに、住大夫さんの語りを聴けるのもこれが最後という万感の思いが重なって、文楽で自分史上最号泣たらーっ(汗)たらーっ(汗)

そんなふうに涙腺グズグズのところへ冒頭のご挨拶ですから、泣くなという方が無理というもの。この後の幕間にロビーでお目にかかったお知り合いは皆さん涙でぐちょぐちょのお顔でした。

bunrakku14042.jpg  bunraku14045.jpg


「車曳」や「寺子屋」など、文楽と歌舞伎の違いがわかったり、細部の復習になったりしてとてもおもしろかったのですが、特に強く印象に残ったのは「天拝山の段」。
ここは歌舞伎でも観たことがなくて全くの初見。
時平の謀反陰謀を知った菅丞相が怒り狂って火を噴くし、髪振り乱して連獅子のようにぐるんぐるん回すし、瓦まで落ちて小屋も崩れる大スペクタクル。知性派でもの静かなイメージを持っていた菅丞相のあまりの激しさに唖然。そうなのか、こうして菅丞相は畏怖されるようになるのですね。遣う玉女さん、カッコよかったです。


幸せな千穐楽。でも別れはいつもツライです のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1178 わーい(嬉しい顔) vs 1182 ふらふら)
posted by スキップ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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