2014年04月12日

恋の手本となりにけり 杉本文楽 「曾根崎心中」

sugimotob.jpg現代美術作家の杉本博司さんが構成・演出・美術・映像、人間国宝の鶴澤清治さんが作曲を手がけて2011年に神奈川芸術劇場で初演され大評判をとった杉本文楽。
昨年秋にはヨーロッパ公演を行い、マドリッド、ローマ、パリの各地で絶賛されたこの公演が大阪で観られるということで、とても楽しみにしていました。
このフライヤーがフェスティバルホールから送られて来た時にはあまりの美しさに息をのむ思い。
「フェスティバルホールで文楽ってどーなの?」と、一抹の不安を残しながら。

杉本文楽  曾根崎心中  付り観音廻
原作: 近松門左衛門 「曾根崎心中付り観音廻り」
構成・演出・美術・映像: 杉本博司
作曲・演出: 鶴澤清治
振付: 山村若
映像: 束芋  杉本博司
出演:  鶴澤清治  鶴澤清介  鶴澤藤蔵
豊竹嶋大夫  竹本津駒大夫  竹本文字久大夫  豊竹呂勢大夫
桐竹勘十郎  吉田一輔  桐竹紋秀  吉田幸助  ほか

2014年3月30日(日) 1:00pm  フェスティバルホール  1階12列(6列目)センター


フェスティバルホールのロビーはドレスアップした方も多く、いつもの文楽公演とは少し趣きが違って、華やいだ祝祭の雰囲気。
会場に入ると、横通路、つまりボックス席あたりに何やら人だかりが・・・橋下大阪市長でした。ふーん、文楽観るんだ、と思いながらお話なさっているお相手を見たら、住大夫さん目 や~ん、住大夫さんご覧になるんだグッド(上向き矢印)
住大夫さんにカメラがずっと密着しているようでした。何かのドキュメント番組かな?


醤油屋平野屋の手代徳兵衛と堂島新地の遊女お初が梅田・曾根崎天神の森で心中、とい元禄時代に実際に起こった事件をもとに近松門左衛門が人形浄瑠璃として大阪竹本座で初演して大評判となった「曾根崎心中」。世上の出来事を作品化した「世話物」と呼ばれるジャンルの第一作となった作品でもあります。黒一色の舞台。
上手の床も黒。

舞台の一番奥。まるで光の中から浮き上がってくるように登場するお初の人形。
まっすぐ舞台正面へ進み出てきます。

現在の文楽公演では上演されなくなった「観音廻り」。
お初が大阪の町中33か所をお参りしていく様子を描きます。
人形は桐竹勘十郎さんの一人遣い。

いつもの文楽公演のように足元を隠す手すりもありませんので、勘十郎さんの動きが全部見えて興味深かったです。
人形を美しく見せるために、前にまわってあんな海老ぞりみたいな姿勢になっているのか、とか。
お初の衣装はエルメスのスカーフでつくったもの、左右のスクリーンには様々な映像が映し出される・・・といった試みが続々。

全体としては、事前に綺麗な舞台写真を見てイメージしていたほど斬新でもなくて、特に生玉社の段以降はオーソドックスな文楽公演という印象。
もちろん、人形の衣装や天満屋の舞台装置など、杉本博司さんの美意識が至るところに発揮されていますが。
ただ、それが「文楽」の公演として成功しているかどうかは好みの分かれるところでしょうか。

フェスティバルホールはとても音響のよいホールですが、それでも、大夫さんの語りをマイクを通して聴く、というのはやはり些か抵抗があります。
三味線の演奏しかり。
ホールの大きさもなぁ~。
前から6列目だった私でさえ、最初にお初が登場した時、「遠っ」と思ったくらいですから、後方席やまして2階からはどんなふうに見えたのでしょう。

人形遣いさんは今回全員顔を隠した黒子装束でしたが、顔を出していてもそうでなくても、あまり関係ないなと感じたのは不思議な感覚でした。
いつも主遣いの人は顔を見せていても物語に集中してしまえばそんなこと目に入らなくて人形が動いているように見えるし、顔を隠した黒子でも気になる時は気になるものだと。
それから、これは個人的な問題ですが、やはり普段はいかに字幕に頼っているかよくわかりました。
自分ではそんなに字幕を見ているつもりはなかったのですが、台詞の部分はまだしも、近松門左衛門の原文に忠実に初演時の台本を使ったこともあってか、美しい(と思われる)詞章は、聴き取り難い、理解し難い部分があり、まだまだ修業が足らんなぁと実感した次第でございます。

お初と徳兵衛が曾根崎の森で心中して、「未来成仏疑ひなき 恋の 手本となりにけり」と結ばれる物語。
「杉本」という冠のあるなしい関係なく、やはり面白く、聴き応えも見応えもあって、近松作品の魅力、文楽のチカラの大きさも改めて感じました。
2012年に観た「三谷文楽」」もそうですが、こういった試みが私のような永遠の初心者を含め文楽ファンのすそ野を広げることにつながるのは喜ばしいことだと思います。


IMG_5136.jpgこの日は会場でちょっぴり久しぶりのお友だちに遭遇。
終演後、フェスティバルタワー地下のMano-e-Manoでお茶して、ドルチェ・ピッツァなるものを初めていただきました。
3種類の中からこれをチョイスしたのですが、アップルパイのピザ風で美味でした。


橋下さんも住大夫さんも会場を出るときには客席から拍手。でも住大夫さんへの拍手の方がずっと多かった・・・当たり前ですが の地獄度 ふらふら (total 1161 わーい(嬉しい顔) vs 1169 ふらふら)‟
posted by スキップ at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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